帝国データバンクは11月29日、主要食品メーカー195社の価格改定動向調査を発表しました。同調査によると、2024年12月は109品目が値上げされることとなり、2024年累計で1万2520品目となる見込みです。
値上げが1万品目を超えるのは3年連続。2023年は値上げ品目が3万2396品目となったため、数自体は落ち着いてはいますが、それでも高水準の値上げが続いています。
加えて、2025年も値上げの勢いは衰えそうにありません。現時点での家庭用を中心とした2025年の飲食料品値上げ予定品目数は3933品目となりました。これは前年同時期に公表した2024年の値上げ品目見通し(1596品目)を大幅に上回っています。
2025年1月には1年半ぶりとなるパン製品の一斉値上げに伴い、単月として3カ月ぶりに1000品目超の値上げが見込まれ、1月以降も来春にかけて断続的な値上げラッシュが再燃する見通しとなっています。
値上げの品目数についての推移(帝国データバンク公表データをもとにDZHFR作成)
2025年の値上げ要因では、2024年に続き「原材料高」(94.6%)などモノ由来の要因が多数を占める一方で、サービス面のコスト上昇を要因とした値上げ傾向が顕著となっています。なかでも、トラックドライバーの時間外労働規制などが要因となった輸送コストの上昇分を価格へ転嫁する「物流費」由来の値上げは89.9%を占め、「原材料高」との差は4.7ポイントに縮小。「人件費」は47.9%と2024年(26.5%)から大幅に上昇し、最低賃金引き上げなどの影響を受けているものと思われます。
食品分野別に2025年4月までの値上げの傾向を見てみると、「パン」(1227品目)が品目としては最多となっています。こちらは2022年(1494品目)、2023年(1663品目)に次いで高い水準となることが想定されます。
「酒類・飲料」(1251品目)は、特に4月に缶ビールやチューハイなどアルコール飲料の一斉値上げが見込まれています。2024年10月にアサヒビールが値上げを発表。業界シェアトップと言われるアサヒが口火を切ったことで、キリンやサントリー、サッポロが続くかたちとなり、一気に4月から値上げラッシュとなりました。
「加工食品」(1040品目)は冷凍食品や餅製品などで値上げ予定となり、2024年に急騰したコメ価格の上昇を価格に反映する製品も目立っています。なお、2024年12月では、パックごはんを中心に「加工食品」(91品目)が最多となっていました。
今後の見通しについてですが、2025年の値上げについては、2024年のトレンドを引き継ぎ原材料高の影響による値上げが多数を占めています。その一方で、物流費、人件費由来の値上げ割合がわかっている1-4月分だけで2024年通年を大幅に上回っており値上げの主因はモノからサービスへと広がりつつあると帝国データバンクでは指摘しています。
冒頭でも述べたように2024年の値上げ品目数はおよそ1万2000品目と前年の3万2000品目から大幅に減少しました。それでも高水準ではあるのですが、PBなど安価な代替製品への需要シフトや、値上げ後に購入点数が減少するといった動きが定着。値上げ疲れなども指摘され、販売価格の積極的な引き上げが手控えられてきた面があります。しかし、サービス価格の上昇が企業努力で対処可能な範囲を超えつつあることで、2025年に再び値上げラッシュが発生する兆候がみられると現状を分析しています。
2024年は実質賃金が6月分と7月分がようやくプラスとなりました。ボーナスの影響も大きく8月分は再びマイナスに転じ、9月分もマイナスとなっています。10月分は12月6日に発表される予定ですが、なかなかプラス圏で定着するのは難しい状況が続いています。
そうしたなかでも値上げせざるを得ないほど、足元のコストプッシュ圧力は継続する可能性が高く、家計にとっては厳しい1年となるかもしれません。