今更聞けない「ガソリン減税とトリガー条項」、凍結? 解除? 補助金は? 私たちの暮らしへの影響

2024年に実施された総選挙(衆議院議員選挙)後から、国民民主党の躍進とともに注目されたものにガソリン減税があります。複雑な税負担の構造と、「トリガー条項」という仕組みによって、何が変わるのか理解しきれない部分もある時事問題です。


また日常生活において、ガソリン価格が高止まりしていることを実感する場面も多いです。本記事では、今更聞けないガソリン減税を解説するとともに、2025年の政治情勢によって何が変わりそうなのかを紐解きます。


ガソリン減税とトリガー条項とは

本来、ガソリンにかかるガソリン税は1リットルあたり28.7円です。ガソリン製造および移設時(外国からの輸入含む)時にかかる揮発油税と、地方揮発油税を総称してガソリン税と呼ばれます。ここに石油石炭税、消費税が加わり、我々がガソリンスタンドで利用する際の「小売価格」が設定されます。


この28.7円が「本則税率」であり、1952年制定の道路法以後徐々に整備されました。その過程で、ガソリン税は道路整備を目的とした「特別財源(使用用途の決められている税金)」として徴収され始めました。


ただ、同法以後、道路財源の不足を理由に「上乗せされた臨時の税金」が生じます。これが1リットルあたり25.1円の「ガソリン税の暫定税率」です。つまりガソリン税は、本来の2倍の税率を徴収する事態が長年続きます。2010年に暫定税率を廃止で合意したものの、特別財源が一般財源に代わり、「1リットルあたり53.8円」が維持されることになりました。



トリガー条項について

2009年にガソリン税の暫定税率廃止をマニフェストに掲げて圧勝した民主党(当時)は、政権を獲得した後、暫定税率の廃止が財源面から不可能であることに気づきます。その中で代替案として示したのがトリガー条項です。


トリガー条項の発動は、「レギュラーガソリンの全国平均価格が3カ月連続で1リットル160円を超えた場合、暫定税率分を減税する」と示したものです。一方で同様に3カ月連続で130円を下回った場合、暫定税率を復活する、と設定しました。


トリガー条項はいったん法改正により実現、導入されたものの、2011年の東日本大震災による復興財源が必要になり、凍結することとなります。つまり現状、ガソリン税は1リットル53.8円の税率が維持されつつ、いわゆる「ガス抜き」とされたトリガー条項が、無期限で凍結されている状態です。


2022年開始の補助制度

ガソリン減税の議論とは別に、2022年から国は累計8兆円規模でガソリン価格を下げる補助制度を適用してきました。これを当面継続する一方で、補助金を2024年12月から「段階的に廃止する」ことにしました。よって2025年年明けより、減税議論に関係なく、ガソリン価格が高騰し、我々の生活に負担をかけている、という構図になります。ここには円安と原油高の影響も重なります。



選挙の結果によってガソリン減税の行き先は変わるか

2024年10月の衆議院選挙にて、トリガー減税の凍結解除を掲げた国民民主党が躍進しました。ただ、その後の政治的な駆け引きによって、少数与党となった自民党が掲げた2025年の予算案は同党を除き(日本維新の会の賛成によって)合意、可決する見通しとなっています(2025年2月現在)。


ガソリン減税とトリガー条項の解除は、いったん棚上げとなり、次の選挙にて再度、その「優先具合」が有権者に問われる状況となります。日本維新の会は高校無償化を優先課題として掲げており、与党案に合意しました。無償化に限らず、ガソリン減税がほかの施策よりも優先されるとなれば議論は進むと考えられています。


2025年は6月に(国選選挙並みの影響力を持つ)東京都議選、そして7月に参議院選挙が控えています。特に参議院選挙では、買い物や通院で車が欠かせない地方において、生活と直結するガソリン減税をめぐる声は一段と強まることでしょう。ただその後、国民民主党が現在よりもイニシアティブを取れたとして、政府との協議を再び机上に乗せていくには一定の時間がかかると考えられます。


当面は、現状レートのガソリン価格を踏まえ、国民は今の生活を確保する必要があります(高校無償化の議論とは関連付けず、当記事はガソリン減税の今後に特化した分析記事です)。そもそもガソリンに限らず物価も上昇していることが手伝い、日常生活の負担感に繋がっています。


なお現在、ガソリンを使用する自動車がすべてではなく、電気自動車(EV)のシェアも拡大しています。ガソリン減税が進まない背景のひとつとして、EV波及を一端とした、世界的な脱炭素への取組みもあります。一方で雪国とされる地域では、EVの燃費効率性が失われるという報告もある一方、トラックやバスなどの事業面ではまだガソリン車が主流です。この背景もまた、何を優先すべきかを更に複雑にしている背景もある、といえるでしょう。

独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

株式会社FP-MYS 代表取締役 1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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