ファイザー、パンデミックで一時的に主役交代
ファイザー(PFE)は太平洋戦争中の1942年に設立され、80年を超える歴史を持ちます。医薬品の製造と販売で売上高の大半を稼ぎ出しており、特定のバイオ医薬品会社に向けて研究開発サービスも提供しています。
新型コロナウイルスが世界的に流行するまでは、乳がん治療薬の「イブランス」や関節リウマチ治療薬の「エンブレル」、静脈血栓塞栓症治療薬の「エリキュース」、関節リウマチや潰瘍性大腸炎の治療薬「ゼルヤンツ」などが主力製品で、年間の売上高がそれぞれ10億ドルを超えていました。
こうした製品はいまでも主力ですが、世界的なパンデミックを受け、一時的に主役が交代しました。ファイザーがいち早く新型コロナウイルスのワクチンの開発に乗り出し、世界中から注目を集めたのは記憶に新しいところです。
ファイザーはドイツのビオンテックと共同でmRNA技術を利用したワクチン「コミナティ」を開発しました。米国や英国では2020年12月に接種が始まっており、流行から1年足らずというスピード開発でした。
業績への好影響は2021年12月期に明確に表れ、売上高が前年比95.2%増の812億8800万ドルとほぼ倍増し、純利益は2.4倍の219億8000万ドルに急増しました。「コミナティ」の売上高が367億8100万ドルに達し、収益を押し上げています。2022年12月期は売上高が前年比23.4%増の1003億3000万ドル、純利益が42.7%増の313億7200万ドルです。「コミナティ」の売上高が378億600万ドル、新型コロナ治療薬の「パキロビッドパック」が189億3300万ドルとなり、全体の売上高が1000億ドルの大台に乗っています。
ただ、新型コロナの流行が下火になり、警戒感が薄れたあおりで、2023年12月期は売上高が前年比41.7%減の584億9600万ドル、純利益が93.2%減の21億1900万ドルに落ち込みました。「コミナティ」の売上高が70.3%減、「パキロビッドパック」が93.2%減と急減しています。
パンデミックを受けたアップダウンは一巡し、2024年12月期決算では売上高が前年同期比6.8%増の636億2700万ドル、純利益が3.8倍の80億3100万ドルに急増しました。「コミナティ」と「パキロビッドパック」の販売も安定しています。
ファイザーはコロナ感染の収束後を見据え、がん治療薬の開発を手掛ける米シージェンを2023年12月に買収しました。総額で434億ドルと決して安い買い物ではありませんが、「抗体薬物複合体(ADC)」と呼ばれる医薬品の開発で知られるシージェンの買収を通じ、次世代のがん治療薬として期待される分野を強化する方針です。
ブリストル・マイヤーズ・スクイブ、小野薬品工業と提携
ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(BMY)は、1887年にニューヨークで創業した企業を源流とする医薬品メーカーです。がんや血液疾患、免疫疾患、心血管疾患、精神・神経疾患などの治療薬を開発し、販売しています。
ブリストル・マイヤーズ・スクイブは、同業他社との提携に積極的です。2024年12月期の製品別売上高で年間の売上高が10億ドルを超える製品は8種類に上りますが、上位では共同開発の医薬品が目立ちます。
静脈血栓塞栓症治療薬「エリキュース」(年間売上高が133億3300万ドルで最大)はファイザーと共同開発した製品です。もちろんファイザーにとっても主力製品の一角に位置づけられています。
がん治療薬「オプジーボ」(93億400万ドルで2位)と関節リウマチ治療薬「オレンシア」(36億8200万ドルで4位)、がん治療薬「ヤーボイ」(25億3000万ドルで6位)は小野薬品工業と共同で開発した製品です。一方、ブリストル・マイヤーズはエーザイとも抗がん剤の共同開発を進めていましたが、2024年6月に共同開発を終了しています。
一方、M&Aにも力を入れており、2024年1月にはがん標的治療薬を開発するミラティ・セラピューティクスの全株式を48億ドルで買収しました。また、2024年3月には精神・神経疾患の治療薬を開発するカルナ・セラピューティクスの全株式を140億ドルで買収しています。ミラティとカルナはともにナスダックへの上場を廃止しています。
ゾエティス、家畜やペットの治療薬に強み
ゾエティス(ZTS)は家畜やペットの治療薬、ワクチン、試薬などの開発や製造を手掛けています。もともとはファイザーの一部門でしたが、2012年に分離しました。ファイザー時代を含めると、アニマルヘルスの分野で70年を超える実績があり、特に動物の病気の予測、予防、検出、治療に重点を置いています。
治療薬やワクチンの主要対象となる動物は、犬、猫、馬のペットに牛、鶏、豚、魚、羊などの家畜を加えた8種類です。2024年12月期決算の売上高は犬・猫部門が前年比13.3%増の59億9300万ドルで、売上高全体に占める割合は64.7%に達しています。
この割合は2019年12月期に47.1%にすぎませんでしたが、2020年に51.5%、2021年に56.9%、2022年に61.1%、2023年に61.9%と年を追うごとに上昇しています。世界的にペットの家族化が進み、飼い主による手厚いケアがペット部門の増収に結びついているようです。
製品の分野別では寄生虫の駆除剤、ワクチン、皮膚薬、抗感染症薬、その他医薬品(鎮痛剤、鎮静剤、制吐薬、繁殖用薬、腫瘍治療薬)が主力で、年間売上高が10億ドルを超えています。このほか動物用の健康診断薬や薬剤添加飼料も販売しています。