【米国株インサイト】圧巻の格闘技コンテンツ保有のTKO、S&P500に新規採用

S&P500は米国の主要産業を代表する500社で構成される株価指数です。構成銘柄に採用されるには米国企業であることが前提で、それは米国内での売上高や固定資産、本社所在地などで判断されます。


このほかの要件には◇過去4四半期の純損益の合計が黒字で、直近の四半期の純損益が黒字◇グローバル産業分類標準(GICS)の分類に基づく産業バランスが適切――などがあります。また、時価総額の基準は2025年1月に「205億ドル以上」となり、それまでの「180億ドル以上」から一段とハードルが上がっています。


今回は2025年3月下旬から晴れてS&P500に加わったTKO・グループ・ホールディングス(TKO)とウィリアムズソノマ(WSM)をご紹介します。


TKO・グループ・ホールディングス、格闘技団体の合併で誕生

TKO・グループ・ホールディングスは、スポーツ・エンターテインメント事業を手掛ける企業です。総合格闘技団体のUFC(アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ)と世界最大のプロレス団体のWWE(ワールド・レスリング・エンターテインメント)の運営母体が2023年に合併して誕生しました。格闘系では圧倒的なコンテンツを持ちます。


UFCは世界最高峰の総合格闘技イベントを開催する団体として知られています。UFCに参加する格闘家はオクタゴンと呼ばれる八角形のケージの中で打撃技や関節技で相手と対戦し、階級別の王者を目指します。試合は170を超える国・地域の約9億5000万世帯向けに放送されており、ファンの数は7億人超、SNSのフォロワーは約3億人です。


WWEもファンの数が7億人以上で、SNSのフォロワーは約3億8000万人に上ります。ユーチューブの登録者数は1億人を超えており、再生回数で世界有数のユーチューブ・チャンネルと言われています。



UFCとWWEは年間に約300回に上るライブイベントを開催し、200万人以上を集客しています。こうしたライブイベントがコンテンツの基盤であり、収益を生み出す知的財産権となります。


収益の柱はテレビ局や動画配信会社などのメディアへのコンテンツ提供です。ウォルト・ディズニー(DIS)の傘下で、米3大ネットワークテレビ局の一角を占めるABCをはじめ、ウォルト・ディズニー傘下のスポーツ専門チャンネルのESPN、動画配信最大手のネットフリックス(NFLX)、コムキャスト(CMCSA)傘下で3大ネットワークのNBCなどに提供し、収益を上げています。


このほかライブイベントではチケット料金や観戦ツアー料金などを得ています。スポンサー収入も重要な収益源で、スポーツ賭博運営会社のドラフトキングス(DKNG)、エナジードリンクのモンスター・ビバレッジ(MNST)、ビールのアンハイザー・ブッシュ、ITのアイビーエム(IBM)、日用品のプロクター・アンド・ギャンブル(PG)、トーヨータイヤ、コカ・コーラ(KO)などがスポンサーに名を連ねています。


さらに消費者向け製品のライセンス供与でも収入を得ています。ゲーム会社やスポーツ用品メーカーにライセンスを付与しています。


2024年12月期のセグメント別業績はUFCの売上高が前年比8.8%増の14億600万ドル、調整後EBITDA(利払い・税引き・減価償却前利益)が6.0%増の8億100万ドルです。売上高に占める割合はメディアへのコンテンツ提供が62.5%と最大で、ライブイベントが15.7%、スポンサー収入が17.9%、消費者向け製品のライセンス供与が3.9%です。


WWEは売上高が前年の3.7倍に当たる13億9800万ドル、調整後EBITDAが4.2倍の6億8100万ドルに急増しました。売上比率はメディアへのコンテンツ提供が61.9%、ライブイベントが24.2%、スポンサー収入が5.9%、消費者向け製品のライセンス供与が7.9%となっています。



ウィリアムズソノマ、高級家庭用品の専門店を展開

ウィリアムズソノマは、高級家庭用品の小売りチェーンを運営しています。1956年にカリフォルニア州ソノマにフランスの調理器具を販売する店舗を開設したのが始まりです。


高品質でデザイン性に優れたインテリアやキッチン用品の取り扱いに定評があります。実店舗に加え、ネット通販やカタログ通販でも製品を販売しています。


2025年2月初め時点の直営店は512店です。店舗数の内訳はインテリアショップの「ポッタリーバーン」が181店、「ウィリアムズソノマ」が154店、「ウエストエルム」が121店、「ポッタリーバーン・キッズ」が45店、「リジュビネーション」が11店で続いています。


「ポッタリーバーン」は1949年に創業した家具の販売店で、1986年にウィリアムズソノマが買収し、傘下に加えました。主要製品はベッドや照明、ラグ、装飾品などです。デザインが秀逸でファンも多いようです。


「ウィリアムズソノマ」は社名にもなっているブランドで、調理器具や食器、家具、調理本などを扱います。一方、「ウエストエルム」は2002年にニューヨークのブルックリン地区で生まれた店舗で、ユニークな装飾品などで人気があります。



直営店の内訳は米国とプエルトリコで計477店に上り、カナダやオーストラリア、英国にも出店しています。フランチャイズ店は計126店舗で、メキシコや中東、インド、フィリピン、韓国などに店舗があります。


製品はアジアや欧州で買い付けるほか、ノースカロライナ州やオレゴン州、ミシシッピ州などにある自社の工場でも製造しています。主要生産品目は布張りのソファーや照明器具などです。


中国株情報部

島野 敬之

出版社を経て、アジアの経済・政治情報の配信会社に勤務。約10年にわたりアジア各国に駐在。 中国株二季報の編集のほか、個別銘柄のレポート執筆を担当する

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