ハイテク・セクターが相場下落を主導


先週は主要3指数がそろって大幅に2週続落 S&P500はコロナパンデミック以来の急落


先週の米国株式市場ではダウ平均が3269.04ドル安(-7.86%)となったほか、S&P500が9.08%安とコロナパンデミックの2020年以来の急落となりました。ナスダック総合も10.02%安と2桁の急落となり、主要3指数がそろって大幅に2週続落となりました。


先週水曜日引け後にトランプ米大統領が広範な国に対して一律10%の関税を課すとし、中国、日本、韓国、EUなどにより高率の「相互関税」を課すと表明したことに加え、金曜日に中国が米国からの輸入品に同率の34%の報復関税を課すとしたことで週後半にショック安となりました。


S&P500は木曜日に4.84%安、金曜日に5.97%安となり、2日連続での4%超の下落は2020年3月のコロナパンデミック時と2008年11月の金融危機以来となりました。ナスダック総合は昨年12月の最高値から22.73%安となり、「弱気相場」入りしました。S&P500も2月の史上最高値から17.42%安となり、「弱気相場」入りが目前に迫りました。


年初来ではダウ平均が9.94%安、S&P500が13.73%安、ナスダック総合が19.28%安となり、ダウ平均とS&P500が昨年5月30日以来の安値、ナスダック総合は昨年4月以来の安値水準まで下落しました。


センチメントは大きく悪化しました。投資家の不安心理を示すVIX指数は前週末の21.65ポイントから45.31ポイントへ大きく上昇し、終値ベースではコロナパンデミック時の2020年4月以来の高水準となりました。

 


S&P500の11セクターは生活必需品を除く10セクターが年初来で下落


トランプ関税による物価上昇と景気後退が同時に起こるスタグフレーション懸念の高まりや、中国など相手国から報復関税による貿易戦争激化懸念が重しとなり、主要3指数がそろって年初来で大幅なマイナスとなりましたが、セクター別ではS&P500の10セクターが年初来で下落し、生活必需品の1セクターが唯一プラス圏を維持しました。


年初来で唯一上昇した生活必需品では、タバコのフィリップモリス・インターナショナルが25.15%高、1ドルショップのダラー・ゼネラルが22.16%高、飲料のコカ・コーラが12.32%高、包装食品・肉のモンデリーズ・インターナショナルが11.02%高と、景気後退局面でも安定した業績が期待できるディフェンシブ銘柄が大きく上昇しました。


一方、年初来下落率の上位をみると、2024年に112.21%高となったITが22.76%安、同82.12%高となった一般消費財が20.69%安、同114.38%高となったコミュニケーションが14.49%安となり、昨年の相場をけん引したセクターが大幅安となりました。


下落率トップのITではオン・セミコンダクター、テラダイン、ゼブラ・テクノロジーズ、アリスタ・ネットワークス、スカイワークス・ソリューションズなどの半導体や通信機器関連株が軒並み40%超下落したほか、メガキャップではエヌビディアが29.00%安、アップルが24.77%安、マイクロソフトが14.63%安となりました。


下落率2位の一般消費財では時価総額上位のテスラが40.71%安、アマゾン・ドット・コムが22.06%安となったほか、ルルレモン・アスレティカ、ベストバイ、ナイキなどの消費。小売り株も軒並み20-30%安となりました。


下落率3位のコミュニケーションではウォルト・ディズニーが24.98%安、アルファベットが23.09%安、メタ・プラットフォームズが13.80%安となり、業種指数を押し下げました。

 


週明け7日はナスダック総合が3日ぶりに反発


週明け7日の取引ではダウ平均が349.26ドル安(-0.91%)、S&P500も0.23%安と、ともに3営業日続落となりましたが、ハイテク株主体のナスダック総合は0.10%高と3営業日ぶりの小幅反発となりました。

セクター別でも不動産、素材、公益、生活必需品など9セクターが下落しましたが、コミュニケーションとITの2セクターが上昇しました。


ハイテク株を中心に足もとで下げが加速しましたが、関税問題への過度な警戒感が和らげば、年初から大きく下落したハイテク・セクターの反発も期待できそうです。




国際金融情報部 アナリスト

羽土 美幸

富山県出身。国内証券で株式等の営業、仏系証券でポートフォリオ分析、転換社債、エクイティ・デリバティブの分析・開発・営業などを担当。 2014年からDZHフィナンシャルリサーチにおいて米国株式、金融市場レポート編集、海外ETF業務を担当。

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