仕事にしても日常生活にしても、「過半数の同意」を得られなければ物事は進みません。日本社会にて個人投資家としてさまざまな領域に注目していたものの、「そういえばあの話どうなったんだっけ」という状況は多いのではないでしょうか。それを解決する「日本の政治の再構築」の機会がやってきます。2025年7月の参議院選挙と、その前段階である6月の東京都議会選挙です。
「少数与党」が我々の生活に影響すること
2024年10月の衆議院選挙の開票結果により、自民党・公明党からなる政権与党は過半数である233を大きく割り込み、215の獲得議席となりました。対する両党以外の野党は250となり、野党としての意思決定によっては内閣不信任案が可決する状況となっています。いわゆる「少数与党」の状況です。
政党により、掲げる政策の優先度合いは異なります。筆者はファイナンシャルプランナーとして日々社会の解説していますが、本選挙においては「教育無償化」「社会保険制度の改革」が注目されていました。
与党の215に対し、当初は社会保険制度を掲げた「年収〇〇の壁」の解決を掲げた政党が年度予算の賛成にまわり、可決する見込みとなりました。ところが調整の末、賛成多数の獲得は破談します。その代わりに「教育無償化」を掲げる別の政党が賛成に回り、今年度の予算は成立しています。現在は食の中心である米の確保が注目されていますが、選挙が近くなると幅広い分野にて、政党の違いが報じられていくことでしょう。
「給付型奨学金」はどこへ行ったのか
与党の基盤が脆くなる前に、我々専門家のあいだで注目されていた取り組みがありました。「給付型奨学金制度」の導入です。
2024年の総選挙の前、「奨学金を借入して大学に行ったが、社会人になり返済負担に悩んでいる」という声がSNSを中心にあがりました。ともすれば結婚・出産にも弊害が生まれることもあり、日本としても大きな問題です。奨学金制度のなかで大きな問題となったのが貸与制であることでした。そこで給付金型奨学金の議論が深まり、専門家のあいだでも「これで荷物(返済債務)を背負って次のステージに出る学生が減る」と期待したものです。
2025年5月現在、機会があって給付型奨学金の政策状況を調べましたが、運営母体としていくつか給付型が設けられているものの、国としての議論が進んではいない状況です。総選挙のポイントとなった、教育無償化の議論に押し出されている印象でした。
大学の負担を解決する奨学金制度の議論と、小学校から高校の負担軽減を目的とする教育無償化は政策として明らかに異なります。ただ印象として、教育改革であることは同じです。難しいのはここ数年で子どもたちが大学受験を迎え、給付型奨学金に期待した「リアルタイム」の世代にとっては、議論が進まないので子どもたちの進学を控えようとはできない点です。何を優先させるのか。我々の期待を受け止める大きな政治イベントが、今夏の大きな二つの選挙ということになります。
2025夏の選挙の主なポイント
前提のうえで考えたい2025年夏の選挙のポイントです。
少数与党のもとでの7月参議院選挙は、事実上の「政権選択選挙」となる可能性があります。今回の選挙で野党側が勝利となれば、早期の解散や総選挙が実施されるでしょう。我々は改めて、「どちらの政策を支持するのか」を投票権にて表明します。また与党にも、野党にもなる政党が複数考えられるなかで、与党+αとして考えられるのはどこなのかを示す機会にもなるでしょう。なかには現在は野党党首のポジションながらも、政界再編によって一躍首班指名の可能性が出てくる方も考えられます。
一方で1カ月前の東京都議会選挙は、東京という国の首都において何ができるかの先行マーケティングの場です。財政に余裕がある東京ではさまざまな施策が行われます。当然「効果観測」も可能であるため、東京で取り組む施策は今後全国に展開できるか否かを議論する機会になるでしょう。現職が勝利した昨年の東京都知事選で無党派層の支持を得た複数名が政党(政治団体)をつくり、議論を戦わせる初の場にもなります。
選挙の結果は世代間や属性間の対立を生むものではありませんが、最近の年金制度の議論を見ていると、日本はアメリカのような立場の違いによる対立が少しずつ増しているような印象を受けます。そのなかで「全員でフラット」が理想論であることも現実です。ならば何を優先すべきか。2つの選挙を通じて、議論を戦わせていきましょう。
最後に付記したいのは、選挙におけるSNSの解禁でアメリカ流にいうところの「フェイクニュース」が広がってきているのがとても気になります。我々は判断と同時に、情報が正しいものか否かの検証力を試されているともいえます。