コロナ禍でコンテナ運賃が急騰
国内海運最大手の日本郵船は、コロナ禍となったこの3年ほどの間、常に株式市場で話題となっている銘柄です。同社は海運業で国内首位。日本という島国にいて、世界中のあらゆるものが手に入るのは、同社のような企業がものを運んでくれるからと言えるでしょう。
そんな日本郵船ですが、どうして株式市場で話題になったかというと、新型コロナの感染拡大によって、海上物流、特にコンテナ船の需要が高まり、運賃が急騰したことで業績が急拡大したためです。
なぜ、コロナでコンテナ船運賃が上昇したかというと、サプライチェーンの混乱が要因と言われています。コロナ禍では人々が外出を控えたり、企業が業績悪化で社員の人員整理を行ったりしました。コンテナについても、港湾労働者の減少により、港に運ばれたコンテナが滞留してしまう自体が発生。
通常ならコンテナから中身を取り出し輸送先に運ぶことでコンテナは返却され、また次の荷物を運ぶために使用されるといったように循環しているのですが、返却されずその場に留まったままのコンテナがどんどん増えていくことで輸送に使用するコンテナが不足する事態に陥ってしまいました。
こうした要因からコンテナ運賃はどんどんと上昇。コンテナ運賃指数(CCFI)はコロナ前に900台で推移していたところから3000以上にまで急騰しました。
過去最高益を更新した22.3期の給与は
コンテナ運賃の上昇により、大きな恩恵を受けた企業が同社のような海運業を営む企業です。実はコンテナ事業というのは、ほんの数年前まで大幅な赤字が常態化していた部門でした。2010年代に入り、世界中で超大型のコンテナ船が次々と就役し、競争が激化。コンテナ運賃が低下し、日本郵船を含む国内の海運会社の業績は大幅な赤字となることも珍しくありませんでした。
生き残りをかけ、合併など業界の再編が活発化するなかで、同社も同業の商船三井、川崎汽船とともに、コンテナ船事業を切り離し、新たにコンテナ海上輸送サービスを提供する会社としてオーシャンネットワークエクスプレス(ONE)を設立したのが2017年のことになります。
それから約5年。2022年3月期の日本郵船の最終損益は1兆円超となり、過去最高を更新しました。それには3社で設立した持分法会社のONEの寄与があったことは言うまでもありません。
それでは、史上最高益を更新した同社の22.3期の平均給与がどの程度だったのでしょうか。同社の有価証券報告書によると、22.3期の平均給与は1082万円と大台の1000万円超水準となりました。
新型コロナの影響で業績が伸びたというイメージのある同社ですが、直後の20.3期は決して好調とは言えず、むしろ平均給与はここ数年で一番低い水準となる934万円にとどまっていました。21.3期もかなり好調ではあったものの、給料は955万円でコロナ前の水準をやや下回る程度。そこから一気に1000万円の大台に乗せたわけで、やはり最高益更新の影響は大きかったようです。
日本郵船の日足チャート
役員報酬については1億円以上が3名。長澤仁志社長が1億9100万円。内藤忠顕会長が1億8000万円。原田浩起専務が1億1600万円。そのうちの半分以上は株式報酬となっています。そのほかの取締役を含む、対象役員9人の報酬総額は7億2800万円。1人当たりざっと8000万円ちょっとということになりますね。ちなみに、日本郵船の株価はコロナショック時の363円(株式分割考慮後)からコロナ後のピーク4163円まで急騰。いわゆるテンバガー銘柄ということになります。
株価上昇前の20.3期の役員報酬だと前述した長澤氏、内藤氏ともに1億円は超えていたものの、ギリギリといったところで株式報酬は4000万円台となっていますので、好業績で株価上昇は上昇。役員、社員ともに報酬アップとなりました。足もとではコンテア運賃の下落などを受け、株価はやや軟調に推移していますが、そちらの行方とともに23.3期の平均給与もどうなるか気になるところです。