株価指数と業種や個別株の関係
日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)などの株価指数は市場全体の動きを示しています。株価指数が上昇基調にあるときは、大半の業種や個別株が上昇しています。逆に、株価指数が下落基調にある場合は、大半の業種や個別株の株価は下落しています。
しかし、株価指数と業種や個別株の推移は完全に一致しているわけではありません。ある業種や個別株は株価指数よりも早く、ある業種や個別株は遅れて動くことがあります。株価指数に逆行する業種や個別株もあるでしょう。
業種や個別株によっては、業績の好調や悪化、割高・割安、金利動向、世界的な市況の要因などで、市場全体の趨勢とは関係なく変動することがあります。一方、このような業種や個別株の強弱があるからこそ、その時々の市場がどのようなテーマに注目しているか、あるいは物色傾向がわかるのです。
相対株価の活用
市場がどのようなテーマに注目しているか、どのような物色傾向にあるかは、相対株価をみると便利です。相対株価には、業種別株価指数を市場全体の株価指数で割ったものや、個別銘柄の株価を市場全体の株価指数で割ったもの、個別銘柄の株価を業種別株価指数や規模別株価指数などで割ったものがあります。
業種別株価指数の相対株価
今回は業種別株価指数の相対株価について解説します。業種別株価指数には、東証業種別株価指数(33業種)と 日本経済新聞社が算出・公表している業種別日経平均(36業種)の2つがあります。東証業種別株価指数は、TOPIXと同様に時価総額に基づいた株価指数です。
業種別株価指数(33業種)の相対株価の騰落率をみると、どの業種が人気化しているか、あるいはどの業種が敬遠されているかが明確になります。図表1に示したように、1990年代は電気機器の相対株価が大幅に上昇していました。しかし、2000年代は不動産セクターの相対株価が大幅に上昇しています。2013年以降では両者は逆行しています。経済環境の変化に伴い、業種別株価指数の相対株価の動きも大きく変化していることがわかります。
業種別株価を指数化してみる
業種別株価指数をTOPIXで割った相対株価で判断する方法以外にも、ある特定期間の業種別株価指数を比べるだけでも、直近の市場がどのようなテーマに注目しているか、どのような物色傾向にあるかを判断することができます。
例えば、図表2はTOPIXの6月20日の年初来安値から8月17日高値までの間の業種別の推移です。6月20日を100とした指数化グラフでみると、33業種の株価指数のうち、最も上がった騰落率上位3業種が「サービス」「精密機器」「海運」でした。一方、最もさえなかった騰落率下位3業種が「保険」「鉱業」「パルプ・紙」でした。TOPIXが上昇する中でも、業種によって強弱がはっきり区分けできます。
結果的にTOPIXは8月17日高値から9月7日まで下落しましたが、その下落期間の中で騰落率上位5位の中に「保険」「鉱業」が入った一方、騰落率下位5位の中に「サービス」「海運」が入っていたことは興味深い点です。
このように、業種別株価を比較することで、「出遅れ物色」の観点から今後の物色動向を予測することができます。
ある年の半年が経過した時点で、年初からの業種別株価の推移はどうなっているのか。また、前年1年間の業種別株価の推移や傾向から、今後の物色を予想することもできそうです。