FRBは利下げを再開
米連邦準備制度理事会(FRB)は9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で9カ月ぶりに利下げを再開し、政策金利を4.00-4.25%にしました。また、先行きの利下げペースが注目される中、雇用環境の悪化リスクに対する管理という意味合いで今年は9月の利下げ分も含め合計0.75%の利下げが見込まれています。また、2026年に関しては景気回復が進む中でインフレ圧力が長引き、FOMC参加者は0.25%の利下げを予想しています。
市場参加者は今のところ、2026年も2025年同様に0.75%の利下げを織り込み、FOMC参加者の見通しと乖離しています。
利下げの背景
トランプ米大統領の利下げを求める圧力が続く中でも、パウエルFRB議長はインフレ高への懸念で利下げに慎重姿勢を示してきたが、9月5日に公表された8月の雇用統計が7月に続き軟調な結果となったこともあり、景気の下振れリスクからFRBは利下げに踏み切りました。
雇用環境の悪化が続けば家計の所得を下押しし、個人消費を下振れさせる可能性が高まります。米国経済の屋台骨である個人消費を見ると、2025 年以降緩やかに減速しています。8月の失業率は4.3%と2カ月連続で上昇し、特に景気に敏感な若年層の失業率の上昇が目立ちました。
足もとの米経済
足元の米家計は、雇用環境悪化のあおりを受けている低中所得層と、賃金の伸びが底堅く、資産所得増も追い風となっている高所得層で、個人消費が二分化しています。高所得層の消費によって、個人消費全体は減速にとどまっているが、雇用環境の悪化によって低中所得層という家計の広範囲で地盤沈下が進んでいます。高所得層頼みの個人消費は、雇用環境の悪化が高賃金層へと及んだり、資産価格の調整によって資産所得が抑制されたりすれば、大幅に下振れする恐れがあります。
雇用関連のほかの指標で、8月米小売売上高は前月比で予想を上回る+0.6%となったが、実質小売売上高は同+0.2%と2カ月連続で減速しました。消費者マインドについて確認すると、9月米ミシガン大学消費者態度指数・確報値は55.1と2カ月連続で悪化しています。ミシガン大はトランプ政権の関税政策が消費者にとって大きな問題であると指摘しています。
また、中古住宅販売の先行指標である中古住宅仮契約指数は前月比-0.4%と2カ月連続でマイナスとなり、7月新築住宅販売は同-0.6%とマイナスに転じました。8月住宅着工件数は同-8.5%と3カ月ぶりにマイナスとなり、住宅需要・住宅供給ともに軟調となっています。FRB の利下げに伴う金利低下は住宅需要のポジティブ要素であるものの、住宅需要の本格回復には時間を要すると考えられます。
米経済見通し
4-6月期GDP確定値は前期比+3.8%に上方修正されたが、7-9月期は+1.5%と前期から減速が見込まれます。年内は雇用環境の悪化に見られるように景気減速が続くことが想定され、2025 年通年の実質 GDP 成長率は前年比+1.8%程度になると予想されます。
利下げ再開が景気の下支えとなり、2026年以降の景気は緩やかな回復が想定されるが、インフレが再加速すればFRBも利下げを続けることが困難になります。これまでは企業によって関税コストの多くが吸収されてきたが、先行きは価格転嫁が徐々に進んでいくことが見込まれます。