東京商工リサーチは1月20日、2025年上場企業「TOB・MBO」動向調査について発表しました。
それによると2025年に上場廃止を前提にした株式公開買い付け(TOB)を実施したのは80社、経営陣らによる買収(MBO)は32社となり、合計で112社だったということです。
TOBの買い手となったのはアクティビスト(物言う株主)などを含む「ファンド」が最多で22社。全体の約3割を占めており、ファンドによる提案が活発なことが伺えます。
また、親子上場解消などのために親会社(親会社が株式取得のために設立した会社を含む)などが買い手となったケースが18社。同業他社が15社。大株主(ファンドを除く)が14社と続いています。
上場企業が3300社あるなかでTOB銘柄が112社というのは、全体のおよそ3%ということになります。これは非常に高い割合だったと言えるでしょう。
背景には、近年で東京証券取引所が推し進めている市場改革があると思われます。東証は、上場企業に対し、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請。PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回る企業に対して、資本収益性や中長期的な企業価値向上に向けた具体的な計画を策定することを求めています。
東証による要請があることを後ろ盾に、アクティビストトが企業に対し、一定割合の株式を保有し、企業価値向上に向けて影響力を発揮するケースも目立っています。
MBOの増加などはこうしたアクティビストなどの標的になる前に自ら上場廃止を選択する企業が増えているという見方もできるかもしれません。
一方、TOBを実施した112社のうち、5社は不成立となりました。発表後、既存株主やアクティビスト投資家からTOB価格の引き上げを求められたものの会社側が引き上げを行わず、買付予定数の下限に応募株数が届かなかったケースなどが該当します。
そのなかで、TOBが不成立となった東京コスモス電機は2025年12月4日、TOBを巡る特別調査委員会の調査報告書を公表しています。同社を巡っては2025年6月10日、米国企業のBourns Japan HoldingsがTOBの開始を発表。6月24日開催の株主総会では、会社側提案の取締役候補5名が全員否決され、アクティビスト株主が提案した取締役候補8名が全員選任される異例の事態で注目されました。
その後、新経営陣は旧経営陣がBournsによるTOBを決定するに至った経緯の適切性に疑義が生じたとし、経緯を解明するための特別調査委員会を設置。調査報告書では、米国企業によるTOB実現に向け、価格設定などを助言するFA(フィナンシャル・アドバイザー)に企業価値を低く算出するよう強く要請していたことが明らかになるなど、本来、株主の利益を追求すべき上場企業の経営陣が特定企業への買収成立を優先するため企業価値の低い算出を要求するといった異例の展開が明らかになりました。
東証では、MBOや支配株主などによる買収で市場を退出する企業に対し、手続きや価格の公正性などの説明を義務付けるなどの取り組みも行っていますが、実効性のあるものにするにはまだ道半ばといったように個人的には感じます。
東証の改革そのものもまだ進めている途中の段階ですので、今後さらに改善されていくことを願います。それと同時に、2026年もまだまだTOBを実施する企業は増えていくのではないかと思います。



