セントラル短資_トップ_6月
PR
株式初心者のためのPER入門

AI主導のモメンタム相場で考える「低PER」の真実

連載の第1回「PERの2つの意味」では、「PERが低いということは、割安ではあるものの、裏を返せば不人気、あるいは将来への成長期待が低いことを意味する」という表裏一体の話をしました。この視点は、今の相場環境を読み解く上で、かつてないほど重要な意味を持っています。


2026年の日経平均株価は、3月には急落したものの、4月には切り返して6月に史上最高値を更新しています。しかし、その中身を見ると、資金が向かう先は生成AIや半導体関連といった、ごく一部の「モメンタム(勢い)の強い銘柄」に集中しています。


その一方で、PERでは極端な低水準に沈んだまま、サッパリ動きが良くならない銘柄が数多く放置されています。なぜこれほど格差が広がってしまうのでしょうか。


「割高な人気者」に資金が群がる理由


現在のモメンタム相場では、投資家の関心は「割安か割高か」ではなく、「今、人気があるかないか」に完全にシフトしています。そして、AI需要の恩恵を受ける銘柄は、業績期待が高い分、今は多少割高に見えてもそれがある程度許容されやすい環境にあります。


しかも、今やAI関連の大本命となっているメモリ大手のキオクシアホールディングス(285A)は、利益が急拡大してPERで見ても割高感がありません。だからこそキオクシアは大人気になるのですが、株式市場では「第二、第三のキオクシアを探せ!」とばかりに、ポテンシャルがありそうな銘柄が物色されています。


それらの中にはPERでは説明しづらい銘柄も存在します。ただ、投資家心理として「さらに上があるかもしれない」という欲求が勝っている間は、PERが何倍であろうと資金が流入し続け、買いが買いを呼ぶ株高の連鎖が起こりやすくなります。


一方、この熱狂の裏側で、AI関連以外の低PER銘柄は「悪いわけではないけれど、今わざわざ買う理由がない」という「究極の不人気」に陥っているのです。


2つの側面に潜む、それぞれの「罠」


ここで、第1回で提示した「良く言えば・悪く言えば」の両面評価のモノサシを、今の相場に当てはめてみましょう。


高PERのモメンタム株と、低PERの放置株には、それぞれ異なる罠が潜んでいます。


AI・半導体などで高PERとなっている銘柄は、市場の期待もかなり高くなっています。それだけに、期待に届かない決算などが出てくれば、失望の反応が大きくなることもあります。直近では電線大手のフジクラ(5803)が決算や中期経営計画を受けて大きく売られました。フジクラを含めて電線株は、AI需要の恩恵が大きいとの見方から長期にわたって大きく水準を切り上げていましたが、その中でPERも高水準となっていました。フジクラに関しては、同業との比較でもPERは高めでした。


低PERで放置されている銘柄は、指標面での割安感はあります。ただ、今の株式市場はAI人気がかなり高く、そのAIの中でも物色の裾野が広がっています。どれだけ割安でも市場の関心がAI以外に向かなければ、「株価が上がらないリスク」に長期間縛られることになります。


今取るべき2つの投資戦略


この二極化相場において、私たちはどのようなスタンスで臨めば良いのでしょうか。


モメンタム(高PER)株に乗る場合、日々の振れ幅が大きくなることを許容する必要があります。


お祭りに参加して短期的なリターンを狙うのは、決して悪いことではありません。ただし、入れ込みすぎには要注意です。時価総額トップクラスの銘柄でも1日の振れ幅が10%を超えることは珍しくありません。買って早々に10%上がればホクホクですが、10%下がってしまうと冷静な判断もできなくなります。初心者の方であれば「運用資産の1~2割程度にとどめる」といった金額面でのバランスを意識することも重要です。


バリュー(低PER)株を仕込む場合、長期戦で臨むスタンスが求められます。


低PER銘柄に投資するのであれば、「来月には上がるだろう」「AI関連が失速すれば流れが来るだろう」といった短期的な期待は一度捨ててください。市場の物色サイクルが循環してくるのを「じっくり年単位で待つ」ことができないと、もどかしい思いをすることが多い相場環境となっています。単純に低PERというだけでなく、「高配当」「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ」など、理屈で買える要素が多いの銘柄の方が、より安心感があります。


数字の裏にある「投資家心理」を見つめよう


今の相場で気をつけたいのは、割安なはずの低PER銘柄を持っている投資家が、連日のように最高値を更新していくAI関連株を横目で見るうちに焦りが生じ、「一番やってはいけないタイミングで低PER株を投げ売りし、天井圏のモメンタム株に飛び乗ってしまう」という悪循環を誘発させてしまうことです。


株式投資の格言に「強気相場は悲観のなかで生まれ、懐疑のなかで育ち、楽観のなかで成熟し、幸福感のなかで消えていく」という相場のサイクルを示す言葉があります。今のAIモメンタム相場がどのステージにあるのか、そして見向きもされていない低PER銘柄が本当に永遠に不人気なのか、一度冷静に考えてみる価値はあります。


PERは単なる割安・割高を測る機械的な数字ではありません。そこに映し出されているのは、「今、この瞬間の投資家たちのリアルな欲望と恐怖」です。画面に表示される倍率の裏側にある「投資家の目線」を意識できるようになれば、周囲の熱狂に翻弄されることなく、自分のペースで着実に資産を増やしていけるようになるはずです。

日本株情報部 アナリスト

小松 弘和

証券会社、外資系生命保険会社、大手出版社マネーサイトの株式分析アナリスト、FX会社勤務を経て2014年に入社。金融全般に精通。2級FP技能士。 「トレーダーズ・プレミアム」では、「個別株戦略」「Market Flash」などのコンテンツやニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 日経CNBC「朝エクスプレス『証券中継』」(隔週金曜)、株主手帳「街の専門家『今月の相場見通し』」、週刊現代、日経マネー、ダイヤモンド・ザイ、ビジネスマンの人生逆転マガジン「Ambitious」、完全ガイドシリーズ「株 完全ガイド」

小松 弘和の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

セントラル短資_右カラム1
PR

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております