旅行業界の象徴的存在であるエイチ・アイ・エス(9603 以下、HIS)は、パンデミックの荒波を越え、いま新たな成長のステージに立っています。2026年10月期第1四半期(以下、26.10期1Q)の決算短信や最新の株価動向、そして投資家にとって魅力的な株主優待制度について、多角的な視点から考察します。
堅調な足取りを見せる直近の業績
HISが発表した26.10期1Q(2025年11月1日~2026年1月31日)の連結業績は、売上高が1012億3900万円(前年同期比8.5%増)、営業利益が53億2400万円(同2.2%増)と、増収増益を確保しました。
主力である旅行事業では、年末年始に欧州・中近東方面の添乗員付きツアーなどの高付加価値商材が好調に推移しました。また、国内旅行でも大型セール「初夢フェア 2026」が需要を喚起し、ハウステンボスが盛況な九州や沖縄方面が実績を伸ばしています。
さらに、ホテル事業も訪日外国人旅行者の増加と底堅い国内需要を背景に、売上高が前年同期比14.4%増、営業利益が42.3%増と大幅な成長を遂げています。2025年12月には「変なホテルエクスプレス大阪 なんば日本橋」を新規開業するなど、機動的な拠点展開が功を奏しています。
株価動向:足元の調整と今後の期待
一方、株価は業績の堅調さとは対照的に、足元では調整局面が続いています。2026年3月16日の終値は1097円となっており、3月初旬の1200円台から一段落した水準にあります。
しかし、2026年10月期の通期業績予想では親会社株主に帰属する当期純利益が前期比90.7%増の90億円を見込んでおり、1株当たり当期純利益も120.42円と高い水準が予想されています。この業績回復が市場に再評価されれば、足もとの10倍を下回るPERが見直される可能性は十分にあります。
【参考:HISの週足チャート】

投資家を惹きつける株主優待と配当
HISの大きな魅力の一つは、個人投資家への還元姿勢です。株主優待制度では、毎年4月末および10月末現在の株主に対し、保有株数に応じて自社グループで利用可能な株主優待券(1000円分)が贈呈されます。
具体的には100株以上で2枚、500株以上で4枚、1000株以上で6枚となっており、12000円以上の旅行商品購入時に利用可能です。また、2026年1月からは「海鮮バイキングいろは」での利用も可能になり、活用の幅が広がっています。これに加え、ラグーナテンボスの入園割引券(500円分)も1枚提供されます。
配当についても、2025年10月期の年間20円から、2026年10月期は年間25円への増配が予想されており、株主還元への意欲が鮮明になっています。
中東情勢への対応
最後に、中東情勢への対応については、HISは顧客の安全を最優先し、グローバルネットワークを駆使した迅速な対応を行っています。
具体的な措置として、外務省の「危険レベル2」以上が発出されている地域(カタール、アラブ首長国連邦、バーレーン、オマーン、ヨルダン)や、ドバイなどの主要空港を乗り継ぎ利用するツアーを2026年3月31日出発分まで中止し、代替案を提示しています。一方、トルコやエジプトを含む近隣諸国などは、現地法人を通じて安全を確認したうえで、通常通り催行を継続しています。
業績への影響については、中東系航空会社を利用する欧州ツアーなどで一部キャンセルがあるものの、全体に占める割合は僅少とのことです。他方面への代替提案を積極的に行うことで機会損失の最小化を図るなど、機動的なリスク管理を徹底しているとしています。
原油高や円安という旅行事業へのマイナス影響が考慮され株価は低迷しています。ただ、PERは10倍を下回っており、割安といえる水準です。長期的な視点で同社に注目してみるのも面白いと考えます。



