経済産業省と東京証券取引所は、女性活躍推進に優れた企業を選定する令和7年度の「なでしこ銘柄」を発表しました。本連載でもこれまで取り上げてきたテーマですが、今回のレポートからは、その評価の考え方が一段と進化していることが読み取れます。
投資初心者にとっても、この変化は「これから伸びる企業」を見極めるヒントになるのではないでしょうか。
より進化した令和7年度の「なでしこ銘柄」
なでしこ銘柄は、女性活躍を軸に企業価値向上を実現している企業を選定する制度です。過去の本コラムでも取り上げてきたなでしこ銘柄ですが、令和7年度は特に、「質」への評価がより深まった点が特徴です。単なる制度の有無や女性比率の数値といった形式的なものから、企業価値への貢献という実質的なものへと評価軸が進化しています【表1】。

特に重要なのは、「女性活躍=人材戦略の中核」として位置付けられている点です。これは、従来のCSR的な取り組みから、企業競争力の源泉への転換といえるでしょう。
従来は、「女性管理職比率が何%か」「育休制度があるか」といった、「実施の有無」が中心でした。現在は、「その施策で業績や組織がどう変わったか」「女性人材がどのように価値創出に関与しているか」という、「アウトカム(成果)」を重視するように変わっています。
女性活躍は、単なる社会課題ではなくなっている
ではなぜ、今この変化が起きているのでしょうか。
今回の変化は、明確に政策の流れと連動しています。経済産業省や東京証券取引所が企業に求めているのは、短期的な利益ではなく、中長期の企業価値向上です。また、財務だけを基盤にするのではなく、“人材”を含めた経営です。
キーワードは「企業価値の向上」と「人的資本経営」です。人的資本経営とは、社員を「コスト」ではなく「会社の成長を生み出す資産」と考える経営のことです。人材に投資し、その力を引き出すことで企業の価値を高めていくという考え方に基づきます。
この流れの中で、なでしこ銘柄の役割も変わってきました。女性活躍は、単なる社会課題ではなく、「人材をどう活かすか」という経営そのもののテーマになっています。そのような中で、なでしこ銘柄は「多様な人材を活かせているか」「組織としてパフォーマンスを引き出せているか」を測る評価指標としての役割を担いつつあります。
投資家との対話を意識した評価へ
また、最近は人的資本経営が投資判断の重要な材料にもなっています。
東証が上場企業に対してPBRの改善やROEの向上などを要請して以降、企業は「なぜ成長できるのか」「どこに競争優位があるのか」を説明する必要が高まっています。
その中で、人材戦略が機能しているかという点は、重要な説明材料です。なでしこ銘柄は、この点を外部から可視化する指標として、分かりやすい指標の一つとなっています。
もはや「ESGの一部」ではない
以前は、女性活躍を含むESGの取り組みは「企業の姿勢」や「配慮」の一つとして評価される側面が強く、いわば本業とはやや切り離された位置づけと見られていました。
しかし現在は、その見方が大きく変わりつつあります。企業を判断する一つの軸として、「その取り組みが企業の稼ぐ力にどう結びついているか」という点に注目するようになっているのです。
単に「ESGに配慮している企業かどうか」という観点が中心だった以前とは異なり、女性を含む多様な人材が活躍できる企業は、「意思決定の質が高まる」「イノベーションが生まれやすくなる」「優秀な人材を確保しやすくなる」といった効果が期待されます。
これらはすべて、中長期的な企業価値の向上に直結する要素です。そのため、投資家も単に「取り組んでいるか」ではなく、それがどのように成果につながっているのか、企業の競争優位にどう寄与しているか、までを見るようになっています。
こうした変化を背景に、なでしこ銘柄の評価も「制度の有無」から「成果の有無」へ、また、「取り組み」から「価値創出」へと変化してきました。
もはや、なでしこ銘柄はESGに積極的な企業のリストではなく、人的資本を通じて持続的に成長できる企業を見極めるための評価指標へと進化しているといえるでしょう。
東証が求める「企業価値の向上」と「人的資本経営」の優等生といえるなでしこ銘柄は、個人投資家のみなさんにとって参考になるのではないでしょうか。

【出所】
経済産業省ホーム>女性活躍に優れた上場企業を選定「なでしこ銘柄」
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