投資家のすそ野が広がり、「インデックスファンドの積立投資をしてきたけれど、そろそろ個別株も買ってみたいな」と思う方もいらっしゃることでしょう。ですが、決算書を読み解いたり、株価チャートを見て投資判断をしたりというのはちょっとハードルが高い。だからといって、誰かの推奨銘柄を鵜呑みにして買うのもいかがなものか……。と、思う方はどうぞご一読ください。
経済産業省と東京証券取引所が選定した「テーマ銘柄」
経済産業省と東京証券取引所は、共同で、特定のテーマや指標を基準にした「テーマ銘柄」を選定し、公表しています。テーマ銘柄を魅力的な企業として紹介し、中長期的な企業価値の向上やESG(環境・社会・ガバナンス)経営の推進を促す狙いがあります。
現在、経産省と東証が共同で選定するテーマは、以下の通りです。
●なでしこ銘柄
●健康経営銘柄
●デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)
(※以前の「攻めのIT経営銘柄」から名称変更)
●サステナビリティ・トランスフォーメーション銘柄(SX銘柄)
では、これらのテーマ銘柄について解説していきましょう。
女性活躍に優れた上場企業「なでしこ銘柄」
「なでしこ銘柄」の選定は平成24年度からと歴史は古く、令和6年度で13年目です。全上場企業が応募できる経済産業省の「女性活躍度調査」に回答した企業の中から、審査によって業種ごとの枠で「なでしこ銘柄」が選定されます。
直近の令和6年度は、23社が「採用から登用までの一貫したキャリア形成支援」と「共働き・共育てを可能にする性別を問わない両立支援」を両輪で進める企業が、「なでしこ銘柄」に選ばれました。また、「共働き・共育て支援企業」のみに応募した企業からは、16社が「Nextなでしこ 共働き・共育て支援企業」として選定されました【表1】【表2】。
従業員の活力や生産性が向上「健康経営銘柄」
企業等による健康への投資は、従業員の活力が向上したり生産性が向上したりして、組織が活性化します。その結果として、業績アップや株価上昇が期待されます。優良な健康経営に取り組む企業等を「健康経営銘柄」として「見える化」し、社会的に評価するのです。
「健康経営銘柄」には、経営的な視点で従業員等の健康管理について考え、戦略的に取り組む上場企業が選ばれます。選定にあたっては、経済産業省が企業等の健康経営についての取組状況を調べ、回答結果をもとに、健康経営優良法人(大規模法人部門)申請法人の上位500位以内の上場企業の中から選ばれます。
第11回となる「健康経営銘柄2025」は、29業種から53社が選定されました。全てを紹介したいところですが、これまでの11年間で選ばれた回数の多い順から抜粋して【表3】にまとめました。
DXで企業価値向上に取り組む目標企業「DX銘柄」
次は、こちらも第11回目を迎えた「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」です。経済産業省、東証、独立行政法人情報処理推進機構が、共同で選定しています。
「DX銘柄」は、東証上場企業の中から選ばれた、企業価値向上のためのDX推進の仕組みを構築し、優れたデジタル活用の実績がある企業です。これらを選定し公表することによって、目標となる企業モデルが広く波及して経営者の意識改革が促される効果や、幅広いステークホルダーからの評価で、更なるDXの促進を図る目的です。
「DX銘柄」は、2015年から第5回目の2019年までは「攻めのIT経営銘柄」という名称でした。2020年、DXのグローバルな潮流を背景に、「DX銘柄」に改称。2025年は、「DX銘柄2025」に31社(うち、DXグランプリ企業2社【表4】)が選定されました【表5】。
「DX銘柄」に選ばれた企業は、単に優れた情報システムの導入やデータの利活用をしているだけではないとのことです。デジタル技術が前提のビジネスモデルや経営の変革に、果敢にチャレンジし続けている企業が選ばれます。
また、「DX銘柄」に選ばれていない企業の中で、特に注目される企業価値貢献に取り組んでいる企業を、「DX注目企業」として19社を選定。さらに、特に傑出した取組みを続けている株式会社LIXIL(5938)が、「DXプラチナ企業2025-2027」に選ばれました。
持続可能な社会に向けて取り組む企業「SX銘柄」
SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)とは、持続可能な社会を実現するために、今、解決すべき社会的課題と企業の課題を一致させて経営や事業の変革を行い、長期的に持続する企業価値向上を図る取り組みのことです。
経済産業省と東証は、SXを進めている先進的企業を「サステナビリティ・トランスフォーメーション銘柄(SX銘柄)」として、初回の「SX銘柄2024」で15社を選定しました。「SX銘柄2025」は、2025年4月~5月頃に公表予定です。
主なサステナビリティ課題としては、気候変動とそれに伴う温暖化、資源の枯渇と環境破壊、人権や福祉などの社会的課題、貧困や格差などが挙げられます。企業にとって持続可能な社会の実現への行動は、社会的な責任にとどまらず、リスク管理やビジネスチャンス、企業価値向上にもなることでしょう。
最後に、これらのテーマには、いずれも中長期的な視点が伴います。すぐに株価に反映しないかもしれません。しかし短期のトレードに一喜一憂するのではなく、自分の投じた資金が、よりよい社会のために、納得できる形で使われることを望み、託したいものです。ぜひ参考にしてください。
【参照サイト】『テーマ銘柄の選定』(日本取引所グループ)