【トレンドラインは直線だから効果がある】

トレンドラインとは?

トレンドラインは、過去の相場の値動きにおける高値や安値を結んで、将来に引き伸ばされた直線です。


株式市場や為替市場の値動きは決して直線的ではなく、上げたり下げたりとジグザグに動きます。こうした動きの中でトレンドを知る最もかんたんな方法は、トレンドラインを引くことです。


価格が上昇しているときに引く右肩上がりの直線を「上昇トレンドライン」、価格が下落しているときに引く右肩下がりの直線を「下降トレンドライン」といいます。


両者ともに考え方は同じであるため、今回は「上昇トレンドライン」を解説します。


上昇トレンドラインは安値同士を結ぶ

上昇トレンドラインは、過去の値動きにおける安値同士を結んで描かれます。価格が上昇トレンドラインを上回っている場合、相場は上昇トレンドにあるといえます。


日本では「下値支持線」と呼ばれることもありますが、海外と同様に上昇トレンドラインと呼ぶほうが望ましいでしょう。


反転頻度が多く、長い方が信頼できる

上昇トレンドラインは1本だけではなく、複数存在することがあります。価格が上昇トレンドライン近辺で反騰に転じる回数が多いほど、有効に機能する上昇トレンドラインと考えられます。


ただ、回数が多いかどうかは長い期間が経ってからでないとわからないため、直近で反転頻度の多い上昇トレンドラインに注目するとよいでしょう。図表1のNTT(日本電信電話)のように、長く続く上昇トレンドライン上で反転頻度が多いのは、息の長い相場を意味するので重要視されます。




相場の騰勢が判断できる

傾斜角度が急な上昇トレンドラインが引けるときは騰勢が強く、緩やかな上昇トレンドラインが引けるときは騰勢が弱いことがわかります。


直近で引かれた上昇トレンドラインが、それ以前の上昇トレンドラインと比較して急になったのか、緩やかになったのかに注目することで、勢いの変化を推測できます。


例えば、図表2は、半導体検査装置で世界大手のアドバンテストの週足チャートです。大きな上昇相場でも、ところどころで角度が急になっているのが確認できます。



価格とトレンドラインの交差

上昇トレンドライン上で価格が推移している時は、トレンドラインに沿って価格が推移することを想定した買いポジションをとることが考えられます。


価格が落ちてきたあとに上昇トレンドライン近辺で反騰に転じると、これまで抱えていた買いポジションは継続、新規に買いポジションを構築するなどの手法が考えられます。


一方、上昇トレンドライン上で価格が反騰に転じることなく、上昇トレンドラインを下回ることがあります。その場合は騰勢の鈍化を示唆しています。下落相場(大幅調整)入りの可能性が高まるため、買いポジションを手仕舞うといった判断も必要になるでしょう。


トレンドラインは心理的な節目でもある

トレンドラインは心理的な節目ともいえます。「価格は上昇トレンドライン上で反騰に転じる傾向がある」ということが数多くの投資家に知られている場合、上昇トレンドライン上では新規買いや売り方の買い戻しなどの買い注文が多くなることで、より反騰しやすくなるからです。


一方、「価格が上昇トレンドラインを下回った場合は下降相場入りの可能性が高まる」ということが数多くの投資家に知られている場合、利益のあるうちに売りを急ぐ投資家が多くなることで、下落相場に陥っていくというメカニズムがあるからです。


ダマシがある

しかし、価格が上昇トレンドラインを下回ったからといって、必ず下落相場入りにつながるわけではありません。価格が早々に上昇トレンドライン上に回帰する、いわゆる「ダマシ」もあります。


「ダマシ」は特に値動きの荒い相場の中ではよくあることです。高値圏で値動きが荒くなるだけでも、ポジションを維持すべきか、それとも手仕舞うべきか迷うでしょう。


ただ、そういった心理的状況にあるのは自分だけではなく、他の投資家も同じ。大切なのは、価格とトレンドラインの交差が貴重な警告を発するシグナルの1つであることを知り、冷静かつ適切に判断し、行動することです。


「ダマシ」に会うことは完全に防ぐことができないため、ある意味では仕方がないという割り切りが必要です。


日本株情報部 チーフストラテジスト

東野 幸利

証券会社情報部、大手信託銀行トレーダー、大手銀行などの勤務を経て2006年に入社。 マーケット分析やデリバティブ市場のコンテンツを担当。世界主要指数や個別株を対象にテクニカル・ストラテジーの提案。 日経CNBC「夜エクスプレス」、日経チャンネル「マーケッツのツボ」、テレビ東京「モーニングサテライト」、ラジオ日経(金曜後場マーケットプレス)など 会社四季報プロ500、ダイヤモンド・ザイ、日経マネー、株主手帳など 金融機関向けコラム「相場一点喜怒哀楽」 IFTA国際検定テクニカルアナリスト(MFTA) 日本テクニカルアナリスト協会理事 CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務) DCアドバイザー(確定拠出型年金教育・普及協会)

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