最近は消費減税に関するニュースを見かけることが増えました。その時に必ずと言っていいほどセットで議論されているのが「財源はどうするのか」という問題です。
ほかで税金を取って、消費減税の原資にするのであればそれは減税ではなく単なる付け替えでしかないわけで、減税とは政府の歳入減少とセットであると個人的には考えているのですが、それでも国を運営したり年金や医療などさまざまなことで必要になるお金は減りません。
その費用を賄うために国がする借金が「国債」の発行になります。将来利子をつけて返すので、いまこの額面でお金を出してという債券のことですが、日本の国債発行額は2025年末時点で累計1300兆円を超える規模となっており、大きな大きな借金を背負っていることになります。
たくさん借金をしている人が、さらにお金を貸してくれといっても通常であればお金はなかなか貸してもらえないでしょう。
日本の場合、これまでは政府が発行する国債の多くを日本銀行(日銀)が買い取ってくれていました。しかし、日銀が金融政策を方向転換したことで、以前のように買わなくなっています。
そのため、利率を上げなくては買い手が集まらなくなったり、さらには「円」という通貨そのもの価値が信頼されなくなるといったことにもなりかねません。
高市早苗首相は積極財政を政策に掲げていますが、そのなかで国債発行額が増加し、円の価値が下がってしまうのではとの懸念があるからこそ、為替市場では前述したように円安が問題になっている面もあるでしょう。
そこで、政府は国債を安定して購入してくれる相手を増やそうと、個人向け国債の強化を進めています。そのための案の一つが「国債購入による相続税の減税」です。
「国債を買ってくれたら、NISAの対象にするし、利子も非課税にします。さらに相続税も安くしてあげるから、預金じゃなく国債を買ってね」というかたちです。
この案が実現したら、国債を買う側には次のようなメリットが生まれます。
1.元本保証で「手軽な節税対策」ができる
不動産購入やアパート経営などの面倒な手間をかけず、「国債を買って持っておくだけ」で相続税を減らせるようになります。
2.リスクが怖い人でもNISAを始めやすくなる
株や投資信託のような「値下がりリスク(元本割れ)」がないため、今までリスクを恐れてNISAを避けていたシニア層なども安心して参入できます。
3.上がってきた利息をまるまるゲット
金利上昇により、国債の利回りも魅力が増しています。NISA口座で買えれば、通常取られる金融所得課税分もゼロで利息を受け取れます。
一見すると投資家や相続のタイミングが近づく人にとってメリットのある嬉しい話に思えますが、実は金融業界や財務省からは批判する声もあります。
その理由として挙げられるのが、富裕層優遇で中間層のメリットが薄いこと、企業の成長のための資金を供給するというNISAの目的からズレてしまうこと、そして国の税金(相続税・所得税)が減ってしまうことです。特に3つ目は財務省が困ってしまうので、特に反対の声が大きいようです。
相続税には、法定相続人の数に応じて基礎控除(3000万円から)がありますから、相続税がかかるのはそれ以上の資産を持つお金持ちの人たちということでもあります。同制度が現実になった時にもっとも恩恵を受けるのはお金持ちということになれば、反対する人は一定数いるでしょう。
同案が実際に採用されるかどうかについては、年末に与党がまとめる「税制改正大綱(ぜいせいかいせいたいこう)」の内容次第になると言われています。現時点では、財務省をはじめ、金融業界も難色を示しているため、提案された内容が実現する可能性は低いとみられます。
仮に導入されるとしても、「購入金額に上限を設ける」「一定期間以上保有すること」といったなんらかの条件がついた妥協案になる可能性が高いでしょう。
今年の年末には、ぜひ税制改正がどうなるか注目してみてください。



