毎年夏の終わりごろになると、「NISAが拡充される」「税制が変わる」といったニュースが増えてきます。これは、来年度の税制改正に向けて、各省庁から要望が公表されるためです。しかし、この時期に示される内容は、まだ決定事項ではありません。
本コラムでは、2026年8月に金融庁が公表した「令和9(2027)年度税制改正要望」に盛り込まれたNISAの要望を見ながら、昨年の要望がその後どうなったかも振り返ってみましょう。
令和9(2027)年度税制改正要望が公表された
税制改正要望は、各省庁が「制度をこのように変えたい」と示す段階です。秋以降、政府や与党で検討され、例年12月には与党が「税制改正大綱」をまとめます。その後、政府が「税制改正の大綱」を閣議決定し、それに基づく法案が国会で可決・成立して、初めて制度改正が正式に決まります。
金融庁による2027年度の要望項目は、大きく分けて次の3つです。
1.「資産運用立国」の推進
2.子育て世帯への支援
3.金融イノベーションの推進
このうち、「資産運用立国」の推進では、「NISAの利便性向上等」や「金融所得課税の一体化」などが掲げられています。ここでは、個人投資家に身近な「NISAの利便性向上等」について詳しく見ていきましょう。
令和8(2026)年度の要望と実現したこと
それでは、昨年公表された2026年度税制改正要望のうち、NISAに関する要望はどうなったのでしょうか。
2026年度税制改正に向けた「NISA対象商品の拡充を含む制度の充実」に関する要望は、大きく次の3点でした。
1.つみたて投資枠の対象年齢等の見直し
2.対象商品の拡充等
3.非課税保有限度額の当年中の復活
このうち、2026年度税制改正では、1.と2.の一部が実現しました。
1.は「未成年者のつみたて投資枠」で、一般に「こどもNISA」とも呼ばれています。2027年1月から、0-17歳を対象とした非課税投資制度が開始されます。こどもNISAは年間投資枠が最大60万円で、非課税保有限度額が最大600万円、投資対象はつみたて投資枠と同じです。
旧制度の「ジュニアNISA」と異なる点は、12歳以上で、本人の同意を得て資金を本人のために使うなどの条件を満たせば、引き出しが可能になることです。また、18歳になると、成人向けNISAのつみたて投資枠へ自動的に移行します。
2.については、つみたて投資枠で購入できる商品の範囲が広がりました。
従来、一部の投資信託には、運用する資産の半分超を株式に投資するという条件がありました。改正後は、株式だけでなく、国債や社債なども合わせて半分超であれば、対象になり得るようになりました。また、対象商品の基準となる株価指数に、新たに2つの指数が追加されました。
このほか、NISA口座開設後10年経過時などに行う所在地確認の簡素化も要望され、2026年度税制改正で確認方法が柔軟化されました。
NISAに関する令和9(2027)年度の要望
2026年度税制改正に向けて金融庁が要望した「非課税保有限度額の当年中の復活」は、実現しませんでした。そこで金融庁は、2027年度税制改正でも改めて要望しています。
「NISAの利便性向上等」に関する要望事項としては、次のように述べられています。
■あらゆる世代が自身のライフプランに沿った形で資産形成を行えるよう、非課税保有限度額の当年中の復活や、つみたて投資枠における要件の整備等、NISAの利便性向上等にかかる所要の措置を講ずること。
これを踏まえ、具体的には次の2点が挙げられています。
(1) 非課税保有限度額(1,800万円)の当年中の復活
(2) つみたて投資枠における要件の整備
(1)について、現在のNISAでは、口座内の商品を売却すると、その商品の取得額(簿価)分の非課税保有限度額が翌年以降に復活します。しかし、売却した年には、その分を再利用することができません。
これに対し、売却した商品の取得額分について、年間投資枠の範囲内で、その年のうちに再び投資できるようにすることが要望されています。
(2)については、金融庁が指定する指数に連動するもの以外のETF(上場投資信託)に関して、つみたて投資枠の対象とするための要件が整っていません。ETFとは、証券取引所に上場し、株式のように売買できる投資信託です。そこで、ETF市場の環境整備が進んだことを踏まえ、新たに要件を設けることが要望されています。
実現すれば、一定の基準を満たすETFがつみたて投資枠の対象に加わり、投資家の選択の幅が広がる可能性があります。
ここまで述べてきた、2026年度税制改正の要望や結果と、2027年度税制改正の要望について、【表】にまとめました。

昨年の要望を見ると、実現した項目がある一方、今年に持ち越されたものもあります。今回の要望も、まだ制度改正に向けた出発点です。「要望」「税制改正大綱」「法改正」のどの段階にあるのかを確かめながら、今後の議論を見ていきましょう。
【参考】
●金融庁「令和9(2027)年度税制改正要望について」
●金融庁「令和8(2026)年度税制改正要望について」
●財務省「令和8年度税制改正」
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