「NTTの株、もう何年も同じような値段で動いてないけど大丈夫?」
「PERも配当利回りも悪くないのに、なんでこんなに安いの?」
NTT(証券コード:9432)は日本を代表する通信インフラの会社で、100株買っても2万円ほどで持てる手軽さと配当の安定感から、個人投資家にとても人気があります。
ところが株価は、ここ数年140円台から160円台のあいだを行ったり来たりするだけで、上値を抜けられていません。
なぜ安いままなのか、そして今から買うべき銘柄なのか。2026年8月6日に発表された第1四半期決算をもとに、株価が伸び悩む理由と今後の見通しをわかりやすく解説します。
NTTってどんな会社?
NTTは、もともと日本電信電話公社という国の組織だった通信の最大手で、1985年に民営化されました。いまは4つの事業を柱にしています。
・総合ICT事業:NTTドコモを中心とした携帯電話の事業
・地域通信事業:NTT東日本・西日本が担う光回線などの固定通信にあたる
・グローバル・ソリューション事業:NTTデータが入る
・不動産やエネルギーなどのその他事業
2026年度第1四半期の営業収益は3兆6,177億円で過去最高を更新しており、国内でも屈指の規模を持つ会社ですが、それだけの規模がありながら株価は長いあいだ足踏みが続いています。
NTTの株価の動きを振り返る

参照:Trading View
直近1年の動きを見ると、2025年8月に166円台の高値をつけたあとはじりじりと上値を切り下げ、5月から6月にかけて下落が加速して6月末には144円前後まで沈みました。
そこからは切り返して7月末には一時161円台まで戻しましたが、8月に入ると再び売られ150円前後まで押し戻されています。
流れが変わったのは8月6日の第1四半期決算で、翌7日の株価は2.59%上昇して158.5円で引け、ふたたび160円の壁の手前まで戻ってきました。
ではなぜ上値を抜けられないのか、決算資料から3つの理由が見えてきます。
NTTの株価が安いと言われる3つの理由
【理由①】通期では最終利益が1兆円を割る見通しのまま
1つ目は、今期の業績予想です。
2025年度の実績は営業収益14兆4,091億円、営業利益1兆7,062億円、当期利益1兆370億円で、いずれも前年から増えています。
ところが2026年度の会社予想は、当期利益が9,800億円と前の年から570億円の減益で、1兆円を割り込む見通しになっています。
営業収益は15兆600億円へ4.5%増え、営業利益も1兆7,100億円とわずかに増える計画ですから、売上も本業の利益も伸びるのに最終的な利益だけが減る形は変わっていません。
投資家は将来の利益で株価を判断しますから、会社自身が「今年は最終利益が減ります」という見通しを維持している以上、買いにくさが残るのは自然な反応でした。
【理由②】EBITDA4兆円の目標が3年後ろ倒しになった
2つ目は、中期の目標が下方修正されたことです。
NTTはEBITDAという指標を経営目標に置いています。EBITDAとは本業でどれだけ現金を稼いだかを示す数字のことで、設備をたくさん持つ通信会社では利益よりも実態をつかみやすい指標として重視されます。
2025年度のEBITDAは3兆4,233億円でした。会社は4兆円まで伸ばす目標を掲げていたのですが、その達成時期が2027年度から2030年度へ3年も後ろ倒しになりました。

画像引用元:NTT株式会社 2025年度決算、2026年度業績予想等について・14P
成長分野は順調に伸びているものの、既存分野の事業環境の変化によってEBITDAが想定を下回っており、2027年度の目標達成は難しい状況だと説明されています。
NTTが2027年度の目標未達を認めたわけですから、市場が慎重になるのも無理はありません。この3年のずれが、株価の上値を抑えている大きな要因になっています。
【理由③】利息負担が膨らみ続けている
3つ目は、金融費用の増加です。
金融費用とは、簡単に言えば借入金などにかかる利息の負担のことです。2024年度は1,695億円でしたが2025年度は2,401億円まで増え、1年で705億円も膨らみました。
この流れは今期も続いており、2026年度第1四半期の金融費用は711億円と前年同期の493億円から218億円増えました。
NTTは光回線やデータセンターに巨額の設備投資を続けているぶん借入も大きく、日銀が利上げを進める局面ではこの負担が重くのしかかります。
ただし今期の第1四半期については、金融収益が236億円から438億円へ持分法による投資損益も122億円から235億円へと伸びたため、利息の負担増を吸収しました。その結果、営業利益が4.9%増だったのに対し、税引前利益は7.6%増と伸びが上回っています。
利息の負担そのものは重くなり続けているものの、それを補う収益も出てきている。この綱引きがどちらに傾くかが、今後の利益を左右します。
NTT株が期待できる点:16期連続増配と2,000億円の自社株買い
ここまで慎重な材料が続きましたが、株主への還元という点では話が変わります。
2026年度の年間配当は1株あたり5.4円の予想で前の年から0.1円の増配となり、16期連続の増配予定となります。8月6日の決算で配当予想は据え置かれました。
さらに自己株式の取得も決めています。取得総額は2,000億円を上限とし、期間は2026年5月11日から2027年3月31日まで。市場で株を買い戻すぶん、株価を下支えする効果が期待できます。
そして、2026年7月にNTTドコモ・フィナンシャルグループが事業を開始し、銀行サービスの「ドコモの銀行」も公表されました。
計画では、金融事業のEBITDAを2025年度の700億円から2030年度に2,300億円へ、3倍以上に伸ばす想定です。

画像引用元:NTT株式会社 2025年度決算、2026年度業績予想等について・19P
携帯の契約者という国内最大級の顧客基盤を金融という別の収益に結びつけられれば、通信会社という枠を超えた成長の柱になり得ます。
NTT株は買うべきか?:第1四半期は増益スタート
8月6日に発表された第1四半期の中身を確認しておきましょう。

画像引用元:NTT株式会社 2026年度第1四半期決算について・7P
営業収益は3兆6,177億円で10.9%増、営業利益は4,251億円で4.9%増、当期利益は2,748億円で5.8%増といずれも増収増益でした。
前年同期は当期利益が5.3%の減益でしたから、流れが変わったことになります。
ここで押さえておきたいのが進捗率です。第1四半期の当期利益2,748億円は、通期予想9,800億円に対して28.0%にあたります。
単純に4分の1なら25.0%ですから、計画をやや上回るペースで進んでいる計算です。
株価158.5円をもとに指標を確認すると、会社予想の1株当たり当期利益は12.10円なのでPER(株価収益率=株価が1株あたり利益の何倍かを示す指標)は約13.1倍、配当利回りは約3.41%、PBR(株価純資産倍率=会社の解散価値に対して株価が割安かどうかを示す指標)は約1.31倍になります。
投資判断は、何を目的に持つかが重要です。
配当を受け取りながら長く持ちたい人には16期連続増配と自社株買いという還元姿勢が心強い材料になりますが、EBITDA4兆円の達成時期が2030年度に延びた以上、業績が一気に伸びる展開は難しくなったとも取れます。
まとめ
NTTの株価が安いと言われる背景には、通期予想が最終利益1兆円割れの減益のまま据え置かれていること、EBITDA4兆円という中期目標が3年後ろ倒しになったこと、そして利息の負担が膨らみ続けていることの3つがありました。
いずれも会社の決算資料に書かれている内容で、市場が慎重になるだけの根拠はそろっています。
一方で、8月6日に発表された第1四半期は増収増益で、通期計画に対する進捗率も28.0%と4分の1を上回りました。減益を見込む年でも16期連続の増配を続け、2,000億円を上限とする自社株買いにも踏み込んでいます。
株価は決算翌日に2.59%上昇し、何度も跳ね返されてきた160円の壁の手前まで戻ってきました。第1四半期が好調だったにもかかわらず通期予想が据え置かれた以上、次の第2四半期決算で上方修正があるかどうかが、この壁を抜けられるかどうかの分かれ目になりそうです。



