ビットコイン、1月末以来の高値圏まで上昇
代表的な暗号資産のビットコイン(BTC)は2026年9月30日15時頃、対円では前週(7日前)比3.9%安の1310万円前後で取引されています。BTCドルが8万3300ドル台と、史上最高値からは約34%下落した水準ですが、年初以来の下落率は5%弱まで狭めてきました。
前回の第213回「ビットコイン、ファンダメンタルな売り?!~」の配信後、この2週間でビットコイン相場は大きく動いています。
BTC円は9月18日に再び1200万円台に乗せると、1280万円近辺まで上げ幅を一気に広げました。週末のもみ合いから、21日の東京夕方から買いが再び強まり、22日早朝には1月末以来の高値圏となる1370万円超えを記録しました。
BTCドルも18日7万6000ドル台から8万1000ドル台まで急騰。21日にも上昇力を強めると、こちらも1月末以来の高値8万7300ドル台まで上げ幅を大きく広げました。先週半ばから売り戻し圧力を高めましたが、8万2000ドル台では下げ止まっています。

※Trading Viewより
2度の急騰、ETFが示した買い手の変化
9月18日、BTCが8万ドルを回復しました。直前まで続いていたETFからの資金流出が一転、この日だけで4.33億ドルの純流入を記録。特にFidelityのFBTCが3.1億ドル、BlackRockのIBITが1.1億ドルを吸収しました。第213回でお伝えした「3つの逆風」のうち、FOMCは利上げを実施したものの、BTCが崩れなかったことで「悪材料を消化した」との見方が広がり、買い戻しが加速しました。
その後も流入は続き、9月21日には約10億ドルという2025年10月以来最大の1日流入を記録。週間では小幅な純流入に転じています。9月前半に大規模な流出が起きたのは、金利上昇や規制の不透明感から機関投資家が一時的に距離を置いたためです。それが「FOMCを通過しても下値が限定的だった」という事実を確認してから、資金が一気に戻ってきた格好です。
「Bitcoin weathers September storm as rate hikes and Clarity act setback test bulls」
※暗号資産分析サイトCoinMarketCapより
今回の上昇、ショートカバーだけではない
9月21日は24時間で約10.6億ドルのポジションが清算され、そのうち約8.44億ドルがショートポジションでした。BTCが8万ドル、さらに8万2000ドルを突破するたびに売り持ちの強制買い戻しが増え、上昇に拍車をかけました。一時は1月以来となる8万5000ドル台を付けています。
ただし今回の上昇は、ショートカバーだけで作られたものではありません。ETFへの大規模な資金流入と現物の買い需要が先にあり、それをショートカバーが増幅したという順番です。第209回でお伝えした「ETFと実需の両輪」に近い構図が再び現れています。上昇の起点に実需があるかどうかは、その後の相場の持続性を見るうえで重要な点です。

※暗号資産分析サイトcoinglassより
BTCを売らずにドルを借りる時代へ
9月21日、米サークル(Circle)が機関投資家向けに「Digital Asset-Backed Borrowing(DABB)」を開始しました。BTCを担保に預けてサークルが発行するラップドBTC(cirBTC)を受け取り、それを使ってステーブルコインUSDCを借りるという仕組みです。BTCを売却せずにドル建ての流動性を得られる点が特徴で、BTC価格の上昇益を手放さずに手元の資金を確保できます。
これまでBTCは「持つだけ」の資産という性格が強いものでした。それが担保として使い、資金を生み出す「金融資産」として機能し始めています。株式や不動産を担保に融資を受けるのと同じ感覚です。暗号資産大手取引所コインベース(Coinbase)も同時期に固定金利のBTC担保USDCローンを開始しており、「売らずに借りる」という選択肢が機関投資家に広がりつつあります。
第213回でお伝えした「伝統金融のインフラ参入」の一歩先で、今度はBTC自体が金融インフラの一部として組み込まれ始めています。
「Circle Launches Bitcoin-Backed USDC Borrowing for Institutions」
※Trading Viewより
法案は止まったのに、規制は進んでいる?
米国のクラリティ(CLARITY)法案とは、ビットコインをはじめとする暗号資産を法律上どう分類するかを明確にし、銀行や機関投資家が参入しやすくするための包括的な規制法案です。9月15日に米上院で討論終結動議が賛成49・反対50で否決され、当面の成立は遠のきました。
しかしその翌々日の9月17日、米証券取引委員会(SEC)は「イノベーション免除(Innovation Exemption)」を発表しました。米国株をブロックチェーン上でデジタル化した「トークン化株式」を、一定の条件のもとで取引できるようにする5年間の暫定措置です。これまで証券取引所に義務付けられていた登録要件を一時的に免除することで、24時間取引や少額からの分散投資といった新しい取引形態への道が開かれます。
同日、米商品先物取引委員会(CFTC)も暗号資産関連の取引ソフトウェア提供者に対する規制緩和を発表しており、SEC・CFTCが協調して動いた形です。CNBCは「議会で包括的な法案が止まったまま、行政当局が既存の権限を使って規制整備を進めている」と報じています。法案の成立を待たずとも、市場のルール整備は別の経路で着実に進んでいます。こうした動きが積み重なることで、機関投資家が参入しやすい環境は法律の成否に関係なく整っていきます。



