日本のガソリンは安い?
欧米に住んでいる親族や友人、特に欧州から帰国した人から、よく耳にするのが「日本のガソリン価格は安い」という言葉です。
実際、日本では政府の補助金政策がガソリン価格の上昇を抑えるキャップとして機能しています。
現在の制度では、石油元売り各社に対する補助金を活用し、全国平均のレギュラーガソリン価格が1リットル170円程度を超えないよう価格抑制策が講じられています。
ただ、補助金制度が長期化すれば、国の財政負担も膨らみます。
今後は、いつまで、どのような形で補助を続けるのか、あるいは恒久的な税制の見直しに切り替えるのかという「出口戦略」が重要な議論になります。
一方、米国では9月末時点のレギュラーガソリンの全国平均が1ガロン4.48ドル前後となっています。
1ドル=157円で換算すると、1リットル当たり約186円となり、日本の170円程度を上回ります。
さらに欧州では、環境関連税や燃料税などの負担が大きく、9月21日時点ではドイツが約2.89ドル、フランスが約2.52ドル、英国が約2.44ドル、ノルウェーが約3.14ドルと、日本や米国を大きく上回っています。
1ドル=157円で換算すれば、1リットル当たり約380~490円となります。
原油価格が上昇した場合でも、こうしたガソリン価格の違いによって、国民が感じるインフレの痛みには大きな差が生じます。
米国民はなぜガソリン価格の上昇を強く意識するのか?
米国のガソリン価格は日本より高い一方、欧州ほど高額ではありません。
それでも、米国ではガソリン価格の上昇が日本以上に大きな問題として意識されやすいのはなぜでしょうか。
大きな理由の一つが、自動車への依存度と走行距離の違いです。
米連邦道路庁によると、2024年の米国では、免許保有者1人当たりの年間走行距離は13,735マイル、約2万2,100kmに達しています。
ニューヨークのマンハッタンなど一部の大都市中心部を除けば、米国では通勤や買い物、子どもの送迎などで自動車を利用するケースが多く、自動車への依存度が高い地域が少なくありません。
そのため、ガソリン価格が上昇しても、単純に自動車の利用を減らすことが難しいという特徴があります。
「ガソリンが高いから車に乗らない」という選択が、通勤や買い物など日常生活そのものに影響するケースもあります。

一方、日本の免許保有者は1人当たりの 年間走行距離は約6,000-7,000 kmと言われています。
米国の三分の一程度です。
また、日本では都市部を中心に鉄道やバスなどの公共交通機関が発達しているため、ガソリン価格が上昇した際に、公共交通機関への切り替えや自転車の利用、近場での買い物などによって、ある程度消費を抑えることができます。
もちろん地方では事情が異なり、自動車への依存度が高い地域もあります。
さらに、自動車そのものの違いもあります。
日本では軽自動車やハイブリッド車の普及率が高く、比較的燃費の良い車が多く利用されています。
一方、米国では大型SUVやピックアップトラックも広く普及しており、車種によっては燃料消費量が大きくなります。
そのため、ガソリン価格が1リットル当たり数十円上昇した場合でも、年間の走行距離が長く、燃費の悪い車を利用している家庭ほど、年間の燃料費への影響は大きくなります。
加えて米国では、ガソリンスタンドの価格表示が非常に目立つことも重要です。
ガソリン価格は日常生活の中で目に入りやすく、原油価格の上昇が実際の支払額に反映されるまでの距離も短いため、消費者にとってインフレを実感しやすい価格の一つといえます。
つまり、ガソリン価格を単純に「1リットルいくら」という数字だけで比較しても、各国の国民が感じる負担の大きさまでは分かりません。
日本はガソリン価格そのものが米国や欧州と比べて抑えられているうえ、都市部では公共交通機関への切り替えという選択肢もあります。
一方、米国ではガソリン価格が日本より高く、走行距離も長く、自動車への依存度も高いです。
この違いが、同じ原油価格の上昇でも、国によって「インフレの痛み」が異なる大きな理由の一つになっています。



