FXの歴史を振り返ると、各国政府や中央銀行が協力して為替相場を動かそうとした時代があります。その代表例が、1987年2月に結ばれた「ルーブル合意」です。
1985年のプラザ合意では、上昇しすぎたドルを引き下げることが目標でした。しかし、その後ドル安と円高が急速に進んだため、今度は「ドルの下落を止める必要がある」と主要国の考え方が変わりました。ルーブル合意は、為替政策が一方向だけでは済まないことを示した重要な出来事です。
プラザ合意でドルは大きく下落
1985年9月、米国、日本、英国、フランス、西ドイツの5カ国は、ニューヨークのプラザホテルで合意しました。当時は米国の貿易赤字が拡大する一方、ドルが非常に高い水準にありました。そこで各国が協調してドル安を促すことになったのです。実際、プラザ合意後はドル安が進み、円やドイツ・マルクが大きく上昇しました。
ところが、ドル安があまりにも急速に進んだため、今度は別の問題が生まれます。
「ドルを下げる」から「ドル安定」へ
ドルが下落し続ければ、米国の輸入物価が上昇するほか、為替市場そのものが不安定になる可能性があります。そこで1987年2月、主要6カ国の財務相・中央銀行総裁がパリのルーブル宮殿に集まり、為替相場を現在の水準付近で安定させることを目指す「ルーブル合意」をまとめました。
つまり、プラザ合意=ドル安を促すから、ルーブル合意=ドル安に歯止めをかけるへと、わずか1年半ほどで政策の方向が変わったのです。
為替は「政策だけ」では動かせない
ルーブル合意から学べる重要なポイントは、政府が為替相場の方向を決めても、市場がその通りに動くとは限らないことです。
各国は為替介入や金融・財政政策を組み合わせて相場を安定させようとしました。しかし、金利差や景気、貿易収支などの経済環境によって市場の力が変化するため、政策だけで為替を完全にコントロールすることは困難でした。
実際、ルーブル合意後もドルの動きは安定せず、同年10月には世界的な株価急落、いわゆる「ブラックマンデー」が発生しました。為替政策だけで国際金融市場全体を安定させることの難しさが浮き彫りになったのです。
FX初心者が覚えておきたいこと
ルーブル合意から学べるのは、「政府がドル高を望んでいる」「中央銀行が円安を警戒している」といった政策姿勢だけで相場を判断しないことです。
為替市場では、政府や中央銀行の意向に加えて、金利、景気、貿易、インフレ、投資家心理などが複雑に絡み合っています。
また、政策の方向が変わるときには、相場が大きく動く可能性があります。「前はドル安を望んでいた国が、今度はドル安を止めようとしている」といった政策転換は、FXにおいて重要な材料になります。
おわりに
ルーブル合意は、プラザ合意の「その後」を知ることで、為替市場をより深く理解できる出来事です。ドルが高すぎればドル安を促し、今度はドルが下がりすぎれば安定を目指します。この歴史を見ると、為替政策には「ちょうどよい水準」を見つける難しさがあることが分かります。
現在でも、各国政府や中央銀行は急激な通貨高・通貨安を警戒し、必要に応じて為替介入や政策変更を行います。
FXではニュースを見たとき、「その国は何を望んでいるのか」「その政策を市場は信じているのか」を考えることが大切です。ルーブル合意は、こうした視点を身につけるための格好の教材といえるでしょう。



