日々是売買~トレードへの道

第143回 円キャリートレードの終焉?円高トレンドへの転換か!?

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ドル円、2日で5円超下げる(為替介入なし)

 

今週のドル円は大幅に下落しました。2日午前には米長期金利の上昇などを手掛かりに円売り・ドル買いが優勢となり一時160.39円まで値を上げる場面もありましたが、高田日銀審議委員が「従来の半年に一度という状況ではなく、機動的な対応が必要」「連続利上げになることもあり得る」などと発言すると、日銀の利上げペースが速まるとの思惑が高まり、海外勢が円買いを進める格好に。テクニカル的にも一目均衡表転換線159.30円付近や8月26日の安値158.88円を下抜けたことで目先のストップロスを誘発し、下げ幅を拡大しました。この日発表の8月ADP全米雇用報告が予想を下回ったほか、ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁が「インフレは緩やかな低下傾向にあると認識」「金利は適切な水準にある」と発言したこともドル売りを誘ったようです。

 

*Trading Viewより

 

3日にはウォラー米連邦準備理事会(FRB)理事が「インフレ圧力の鈍化が確認されれば、政策金利の据え置きを支持する」などと発言。米早期利上げ観測が後退し、全般ドル売りが優勢となりました。また、ベッセント米財務長官の発言をきっかけに円安是正への思惑も広がり、円買いにつながった面がありました。さらには、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が資産構成を見直すとの観測も円買いを後押ししています。市場では「GPIFが8月21日に運用委員会を開催した。夏季休暇シーズンの8月に会合を開くのは極めて異例で、基本ポートフォリオ見直し観測が高まっている」との声が聞かれました。3日のNY時間には155.30円まで値を下げており、2日で5円超の下落となりました。翌4日の東京市場でも155.30円を付ける場面がありました。

 

ただ、8月3日の安値155.23円や5月6日の155.04円(どちらも政府・日銀による為替介入後に付けた安値)がサポートとして意識されると下げ渋る展開となり、156.26円で週末の取引を終えています。節目の155.00円に観測されているオプション絡みの買いなども相場を下支えしたようです。なお、155円割れにはストップロスが観測されています。

 

 

 

米雇用統計で米利上げ観測が再び高まる

 

米労働省が4日に発表した8月米雇用統計では非農業部門雇用者数が前月比16.2万人増と予想の5.6万人増を大幅に上回りました。また、過去2カ月分の数値が上方修正されました。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」によると、9月15-16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%の利上げを予想する確率は前日の49.4%から58.4%に上昇した一方、据え置きを予想する確率は50.6%から41.6%に低下しました。

 

*CME FedWatch Toolより

 

もっとも、米雇用統計発表後にトランプ米大統領が自身のSNSに「FRBはその素晴らしい新指導者の下、賢明な対応とる必要がある」「利下げしなければ対米黒字国との貿易を停止する」「米国の金利は世界のどの国よりも低くあるべき」などと投稿し、FRBに利下げを要求。ドル円の戻りはやや鈍いものとなっています。

 

 

 

投機筋の円売りポジション、再び拡大傾向

 

米商品先物取引委員会(CFTC)が4日(日本時間5日早朝)に発表した9月1日時点の建玉報告によると、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の通貨先物市場で非商業部門(投機筋)の円の対ドル持ち高は9万2227枚の円売り越し(ドル円のロング)となり、前週から2万8929枚増加しています。

 

*CFTCのデータを基にDZHフィナンシャルリサーチ作成

 

ただ、これは「ウォラーFRB理事発言」「ベッセント米財務長官発言」「日銀利上げ加速観測」「GPIF資産構成見直し観測」で急落する前のデータです。5円の急落がそもそも投機筋の「円キャリートレード」の巻き戻しと言われていますので、ここからかなり減少した可能性があります。

 

 

 

自身のドル円ショートは再び「含み益」に

 

伝統的な投資格言「FRBに逆らうな(Don't fight the Fed)」になぞらえて「財務省に逆らうな(Don't fight the Treasury)」という言葉が市場で注目を集めていましたが、我が家の格言「長い物には巻かれろ」精神で引き続き「円高・ドル安」方向にベット。8月10日に「158.414円」、11日に「159.070円」、18日に「159.692円」でショートしていましたが、再び含み益になったことで、今週9月4日に「156.202円」で追撃売り(平均コストは「158.344円」)。

 

市場では「インフレが何より重要だ。焦点は来週発表される8月米消費者物価指数(CPI)と同月卸売物価指数(PPI)に移った」との声が聞かれていますが、結果次第ではサポートとして意識されている8月3日の安値155.23円や5月6日の155.04円、オプションが観測されている節目の155.00円を割れて、下値を探る展開も予想されます。155円割れにはストップロスの売り注文も観測されていますので、下抜けた場合は年初来安値152.10円までは下げ余地がありそうです。なお、仏ソシエテ・ジェネラルのチーフ為替ストラテジストは「円キャリートレードは、危険なものになっている。数年かけて140円まで円高が進む転換点になる可能性がある」と指摘しています。

 

 

 

【免責事項・注意事項】

 

本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

この連載の一覧
第143回 円キャリートレードの終焉?円高トレンドへの転換か!?
第142回 ウォーシュFRB議長「hike! hike! hike!」 *hike=ハイキングの方
第141回「FRBにも米財務省にも逆らいません」
第140回「ドル円、下押しは悉く拾われる」
第139回「投機筋の円売りポジション、2年ぶり高水準から急減」
第138回「FRBに喧嘩は売るな 15年ぶり協調介入か」
第137回「止まらない円安・ドル高 ドル円は39年8カ月ぶり高値」
ドル円、1週間の値幅は1円未満も・・・
第135回「不意打ち介入なら24時間スマホが手放せず」
第134回「ドル円、高値更新も値幅は極狭」
第133回「押し目待ちに押し目なし」
第132回「いよいよ来週は新議長のもとでのFOMCが開催」
第131回「米雇用統計上振れで株急落・ドル高 FRB利上げ観測」
第130回「介入効果!?ドル円はこう着状態に 値幅1円未満」
第129回「ドル円、介入あれば絶好の買い場!?」
第128回「今週も米イランヘッドライン相場」
第127回「ホルムズ海峡『開放』表明で原油急落・株高・円高」
第126回「投機筋の円売りポジション、2024年7月以来の水準に拡大」
第125回「“Headline Fatigue”から“Cautiously Optimistic”へ」
第124回「ドル円は160円突破 為替介入はあるか?」
第123回「中銀ウィーク通過 各国利上げ観測が高まる」
第122回「ドル円、160円目前 中東情勢の混乱は継続」
第121回「世界的株安・米原油2年半ぶり高値・有事のドル買い 中東緊迫」
第120回「円安は進みやすく、円高は進みにくい?」
第119回「日本の『トリプル高(株高・債券高・通貨高)』は続くのか」
第118回「日経平均先物、夜間取引で2000円高の急騰 自民圧勝期待で」
第117回「為替介入は『なし』、ドル円急落はレートチェック」
第116回「日米当局、レートチェック お上に逆らうな(為替介入)」
第115回「ドル円、衆院解散で160円突破か!?」
第114回「ドル円、1年ぶり高値 衆院解散を検討との報道」
第113回「ドル円、2026年上昇予想が増加」
第112回「ドル円、年初来高値158.87円が視野」
第111回「来週はいよいよ日銀金融政策決定会合」
第110回「米感謝祭ウィークで商いは低調 来週に期待」
第109回「ドル円、10カ月ぶり高値 利上げや介入への警戒高まる」
第108回「米利下げ確率、1カ月前の94.4%から45.8%まで低下」
第107回「高市トレード(円売り・株買い)継続」
第106回「終わってみればサナエノミクス」
第105回「VIX(恐怖指数)、半年ぶりの高水準を更新」
第104回「忘れた頃にやってくるトランプ砲、でもTACOか?」
第103回「米政府機関の一部閉鎖で投機筋ポジション発表されず」
第102回「ドル円、ついにレンジをブレイクか!?」
第101回「サナエノミクス!ジャパン・イズ・バック!に期待」
第100回「上サイド突破を期待しながらポジションを追加」
第99回「ドル円、結局1カ月前と同様の結果に」
第98回「ドル円、パウエル発言伝わると急落」
第97回「投機筋の円買いポジション、縮小が続く」
第96回「上サイド突破を期待しながらポジションを維持」
第95回「イベント満載の1週間 ドル円は上値重い展開」
第94回「夏休み前、傾いたポジションは整理される傾向に」
第93回「参院選後も円安の流れは変わらずか!?」
第91回「ポジションを切るかどうかの瀬戸際」
第90回「ドル円、来週以降は買い増しを検討」
第89回「投機筋の円ロングポジション、縮小が続く」
第88回「投機筋の円ロングポジション、縮小」
第87回「ドル円、140円割れを目指す展開か!?」
第86回「米国『トリプルA』格付け失う 来週は為替協議の思惑も」
第85回「投機筋の円買いポジション、やや拡大 過去最大を更新」
第84回「投資家心理は改善 恐怖指数=VIXは順調に低下」
第83回「注目は24日予定の日米財務相会談 為替について協議」
第82回「ドル円『1日の値幅は3円超』 売っても買ってもやられる相場」
第81回「虎の子だったはずのポジションが見事に粉砕」
第80回「円買いポジションの解消に伴う急速な円安・ドル高圧力」
第79回「投機筋の円買いポジション、いよいよ巻き戻しスタートか!?」
第78回「来るか!?行き過ぎた『ポジションの偏り』の反動」
第77回「投機筋の円買い過去最大 行き過ぎた『ポジションの偏り』」
第76回「投機筋の円買いが過去最大に 偏り警戒160円超えを指摘する声も」
第75回「投機筋の円買いポジション、再び6万枚超まで拡大」
第74回「投機筋の円買いポジション、5万4615枚に拡大」
第73回「ドル円、テクニカル的にも売りが出やすいか」
第72回「投機筋、ポジションはほぼフラットに」
第71回「28-29日のFOMC、利下げ見送りが濃厚」
第70回「日銀の追加利上げは織り込み済み」
第69回「ドル円は半年ぶり高値 ロングは維持したい」
第68回「やっぱり7月3日の高値161.95円突破を狙いたい」
第67回「ドル円、またまた160円台を目指していくのか」
第66回「日銀の年内利上げ観測後退 1月すらも怪しい」
第65回「感謝祭ウィーク週末のNY午後(日本の夜中2時)」
第64回「投機筋のユーロ売りポジション、再び5万枚に迫る」
第63回「クリスマスラリーに向けて仕込み時か!?その2」
第62回「クリスマスラリーに向けて仕込み時か!?」
第61回「投機筋、円買いポジションを大きく縮小」
第59回「投資の格言『損切りは早く、利は伸ばせ』」
第58回「円安予想で投機的ポジションを再び積み増し!?」
第57回「高市氏勝利を期待したポジションが含み損」
第56回「残暑厳しくも年末ラリーを期待する季節」
第55回「ドル円は年初来安値 歴史的な円安進行は終わり!?」
第54回「ブラックマンデーの再来!?!?(1カ月ぶり2度目)」
第53回「いろいろ底打ち? 日経平均は1カ月ぶり高値」
第52回「ドル円、二番底確認か?底割れか?」
第51回「投機筋のポジション、まさかの円ロングに」
第50回「株も為替もセリング・クライマックス」
第49回「植田総裁が突如タカ派路線、円高と株急落招く」
第48回「投機筋の円売りポジションが10.7万枚まで大幅に減少」
第47回「ヘッジファンドによる円売りポジションが急減」
第46回「ドル円、ピークアウトか 押し下げ介入?のサプライズ」
第45回「ドル円、またまた37年半ぶりの高値を更新」
第44回「ドル円、37年半ぶりの高値 当面は円安・ドル高基調か」
第43回「ドル円、34年ぶりの高値160円に接近 介入は困難か」
第42回「注目のFOMCを通過、今年の米利下げ予想1回に」
第41回「米雇用統計でFRBの年内利下げ観測が後退」
第40回「ドル円、介入規模は過去最大 ただ効果は1カ月」
第39回「ドル円、再び157円台に 介入は困難!?」
第38回「投機筋の円売りポジションが急減 介入受け」
第37回「政府・日銀、投機筋との攻防は長期化の可能性」
第35回「個人投資家の円買いvs投機筋の円売り」
第34回「介入期待もあってユーロ円のショートは維持」
第33回「久々のリスク・オフのムード 株安・原油急騰・円高」
第32回「ドル円、嵐の前の静けさか? 今週の値幅は1円未満」
第31回「中銀ウィークを無事通過!? ドル高・円安を期待」
第30回「ドル円ロングは維持、ストップは付かずに切り返す」
第29回「ドル円、上値重く 日銀の政策修正観測高まる」
第28回「【祝】日経平均株価、史上最高値 ドル円もそろそろ」
第27回「日経平均株価、史上最高値まであと少し」
第26回「ドル円、上値試すか 昨年11月の151円台も視野」
第25回「注目のFOMCタカ派寄りもドルは下落」
第24回「ドルと円、それぞれの買い要因が綱引き」
第23回「ドル円ショートは損切り 円安とドル高のダブルパンチで」
第22回「ドル円、1カ月ぶり146円台 追加でショート」
第21回「ドル円、年始の悪夢 1月3日のフラッシュクラッシュ」
第20回「ドル円、売りシグナル点灯 さらなる下落に期待」
第19回「ドル円、140円割れが視野に」
第18回「米債ロングは利食い FRB議長発言を前にポジションはなし」
第17回「米長期金利、2カ月ぶり低水準 上昇リスクにはなお注意」
第16回「米国債のロングポジション、含み益が拡大」
第15回「米国債のロングポジション、含み損から含み益に」
第14回「米10年債利回り、16年ぶりに『5%』を突破」
第13回「米国債、下落止まらず 利回りは2007年7月以来の高水準」
第12回「初めての米国債(CFD)買い、そろそろ底打ちかと思ったら・・・」
第11回「下手な難平(なんぴん)、素寒貧(すかんぴん)」
第10回「日経ロングはキープもリスク高い週末 米政府機関の閉鎖はほぼ確実に」
第9回「日経225ロング、含みゾーン(損)に突入!」
第8回「日経平均、レジスタンス突破でいよいよ3万4000円台乗せか!?」
第7回「日経平均、9連騰ならず テクニカル的には・・・」
第6回「日経平均をロング トレンドは友達(Trend is your friend)」
第5回「重要イベント通過もポジション取れず・・・相場は乱高下」
第4回「朝起きたらポジションが全てなくなっているという悲しみ」
第3回「ドル円、ストップロス水準に接近 祝日のため円安けん制発言も期待できず」
第2回「前週のドル円ショートはあえなくストップ 懲りずに再in」
第1回「ドル円、乱高下のあと何故か全戻し 戻りは叩く」

為替情報部 アナリスト

中村 知博

鹿児島出身。2007年国際金融情報サービス会社に入社。 外国為替取引会社・金融機関への24時間リアルタイム金融情報サービスの為替記者として従事。市場動向や見通しなどを解説する動画サービスの業務も経験。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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