日本銀行は2026年6月の金融政策決定会合で、実質的に政策金利として位置付けられる無担保コールレートを「0.75%程度」から「1.0%程度」へ引き上げました。1995年以来31年ぶりの水準とされています。
市場では日銀が9月にも追加の利上げに踏み切るとの観測が強まっています。背景には中東情勢やAI需要、為替相場といった物価を押し上げる要因への警戒があるとされ、植田総裁も記者会見で今後の会合でしっかり議論していくとの考えを示しました。
こうした環境を背景に長期金利の指標となる国内10年債利回りも3%台に到達。1996年9月以来の高水準であり、多くの現役世代が初めて目にする世界といえます。

※各年の利回り最高値と最低値 2026年は9月2日まで
長らく続いてきた低金利環境から、いわゆる「金利のある世界」への移行が進みつつあることで、企業の資金調達コストや家計の住宅ローン負担だけでなく、株式市場における投資家心理や資金の流れにも変化が生じつつあると見られています。こうした局面では、どの業種やスタイルの株式が選ばれやすいのか注目が集まります。
株式市場に与える影響
金利上昇は株式市場に複雑な影響を及ぼすとされています。一般的に、株式の理論価値は将来のキャッシュフローを一定の割引率で現在価値に引き直して算出されますが、金利が上がるとこの割引率も上昇し、株式全体の評価が下押しされやすくなるとされます。
ほかにも、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)といった株価指標は有名ですが、株式益利回りといった指標もあります。1株当たり純利益(EPS)を株価で割ったもので、この数値が高いほど割安、低いほど割高(PERとは逆)とみなされるものです。EPS100円で株価2000円とすれば株式益利回りは5%。このように算出します。
株式益利回りは長期金利と比較され、「株式益利回り-長期金利」の差がイールドスプレッドと呼ばれます。イールドスプレッドの差が大きければ株式の投資魅力が大きい(小さければ魅力小さい)という見方です。今は長期金利が3%なので、株式益利回り5%とすればイールドスプレッドは2%。株式のリスクを負って期待できるプレミアムは2%ということになります。

ものすごく簡単に言うと、安全資産とされる国債を買えば今なら3%の利回りがとれるのに、値動きが激しい株式を買って2%のプレミアムを狙う価値はあるのか?という疑問が生まれるのが、金利上昇時の株式に対する見方となります。配当利回りと長期金利を比べても同じことが言えますね。
選好されやすい銘柄
金利上昇局面で相対的に選好されやすいとされるのが、銀行や保険といった金融セクターです。銀行は貸出金利と預金金利の差(利ざや)が改善しやすく、保険会社は新規に運用する債券などの利回り向上が期待されることから、収益改善への思惑で買われやすい傾向があるといわれています。
実際、金利上昇局面では銀行株や保険株が値上がりする場面が見られたと報じられたこともあり、こうした業種は「金利上昇メリット」を受けやすいテーマ株として市場で意識されやすい傾向にあるようです。
株式のスタイル別に見ると、グロース株とバリュー株では受ける影響が異なるとされています。グロース株は将来の大きな利益成長を織り込んで株価が形成されているため、利益水準に対して株価が高くなりやすい傾向にあります。そうなると株式益利回りは低くなりますね。
これに対しバリュー株は、株価がすでに利益や資産に対して割安な水準にあり、株式益回りが相対的に高いことから、金利上昇時にもグロース株と比べて耐性があるとされます。

このため、金利上昇局面ではグロース株からバリュー株へ資金がシフトしやすいとの見方が一般的です。ただし、これはあくまで一般的な傾向として語られているものであり、実際の値動きは個別企業の業績や需給、市場心理などさまざまな要因に左右される点には注意が必要です。今現在がバリュー株の扱いだったとしても業績が著しく悪化すれば割安感は薄れるため、相応に株価が下落することとなります。
金利上昇局面の投資戦略
ここまで見てきたように、金利上昇局面では金融セクターやバリュー株が相対的に選好されやすく、グロース株はイールドスプレッド縮小の影響が大きく避けられやすい傾向にあります。
とは言っても、金利上昇局面であっても力強い業績成長を続けるグロース株は存在しますし、バリュー株であれば何でもよいというわけではありません。投資を検討する際は特定のスタイルや業種に偏るのではなく、これまで以上に銘柄や資産を分散させて臨む姿勢が一つの考え方として挙げられるでしょう。



