「自動車から人型ロボットへ」:中国メーカー、新たな成長分野を開拓

中国の自動車メーカーが、人型ロボットを新たな成長事業に育てようとしています。電気自動車(EV)の販売競争が激しくなり、車の販売で得られる利益が減少するなか、自動車の開発で培った技術や生産能力を生かし、人型ロボットの開発に乗り出しています。


米テスラが人型ロボット「Optimus(オプティマス)」の量産を進めるなか、中国でもBYD(01211、002594)、小鵬集団(09868)、広州汽車集団(02238/601238)、重慶長安汽車(000625/200625)、奇瑞汽車(09973)など10社を超える自動車メーカーが参入を表明しています。人型ロボットが自動車に続く収益の柱に育つ可能性がある一方、普及に向けてはコスト削減や用途の拡大が課題となっています。


自動車大手が相次ぎ参入、量産を目指す

中国メーカーのなかで、開発を積極的に進めているのが小鵬集団です。同社は人型ロボット「IRON」を開発し、自動車、空飛ぶクルマ、ロボットの3分野で人工知能(AI)技術を共通して活用する構想を掲げています。何小鵬会長兼最高経営責任者(CEO)はすでにロボット事業を自ら直接統括すると表明し、量産と商業化に向けた重要な段階に入ったとの認識を示しました。


広州汽車集団は、子会社を通じて人型ロボット「GoMate Mini」を開発しています。車輪と脚を組み合わせた構造で、自動車工場や物流施設、公共サービスなどでの活用を想定しています。2026年に小規模な試験生産を始め、27年の量産を目指しています。


BYDもロボット分野への投資を拡大しています。複数のロボット企業に出資するほか、自社でも研究開発や製造を進めています。同社幹部は、ロボット事業の競争力を左右するのは製造能力、ソフトウエア開発能力、ハードウエア開発能力だと指摘しています。自動車とロボットは技術面で共通する部分が多く、自動車メーカーが持つ強みを生かせるとみています。


自動車の技術と量産能力が強みに

自動車メーカーが人型ロボットの開発で有利とされる理由は、両者の技術に共通点が多いことです。例えば、自動運転車はカメラやレーダーなどで周囲の状況を把握し、安全な走行ルートを判断して車を動かします。人型ロボットも、周囲の状況を認識し、次に何をするかを判断して、手足を動かす必要があります。このため、自動運転で培った画像認識やAIによる判断、動作制御などの技術をロボット開発に応用できます。


また、電気自動車のモーターや電池の管理、各部品を正確に制御する技術も、ロボットの動力や動作を制御するうえで役立ちます。自動車メーカーには、部品を大量に調達し、品質を保ちながら製品を大量生産してきた経験もあります。既存の工場や部品メーカーとの取引網を活用できれば、ロボットの製造コストを抑え、生産規模を拡大しやすくなります。


普及の壁はコスト、収益化には時間も

ただし、人型ロボットがすぐに大きな利益を生む事業になるとは限りません。現在の主な用途は工場や物流倉庫、研究機関などに限られています。将来的には、介護や家事の支援、子どもの見守りなど家庭向けの需要も期待されていますが、人間の代わりに安全かつ柔軟に作業できるようになるには、さらなる技術開発が必要です。


大きな課題の一つがコストです。ロボットが滑らかに動くための駆動装置や関節部品、物をつかむための精密な手などには、高価な部品が使われています。人型ロボットの製造コストは、一般的な産業用ロボットアームの3-5倍に達するとの見方もあります。現時点では研究・教育向けや試験導入が中心で、幅広い企業や家庭に普及する段階には至っていません。


それでも、自動車メーカーには自社工場などをロボットの実証実験に使える利点があります。実際にロボットを稼働させてデータを集め、問題点を改善し、再び試すという開発サイクルを回しやすいからです。こうした取り組みを通じて性能向上とコスト削減が進めば、人型ロボットの用途が広がる可能性があります。


今後の焦点は、技術力を高めるだけでなく、ロボットをどのような用途で使い、継続的に利益を上げるかという事業モデルを確立できるかどうかです。自動車産業で培った量産能力や部品調達網を武器に、中国メーカーが人型ロボット市場で存在感を高めるのか、今後の動向が注目されます。


中国株情報部 アナリスト

シ セイショウ

中国・上海出身。復旦大学を卒業後、外資系法律事務所で翻訳・通訳を担当。来日後は証券会社や情報ベンダーでの勤務を経て、2016年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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