11月FOMC、利上げ幅縮小と一段の金利引き上げを示唆
11月1~2日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、市場予想通りFF誘導金利目標を75bp引き上げ3.75~4.0%に設定しました。75bp利上げは、前回に続き4回連続。3月の25bp、5月の50bpを含め、6回連続の利上げとなります。
今回の声明文では、景況判断は変更せず。ただし、これまでの利上げ効果や時間差(ラグ)を伴って現れる引き締め効果の影響に関する文言を挟み、利上げ幅縮小の示唆を与えました。ハト派寄りかと思いきや、パウエルFRB議長は、記者会見で①利上げ継続が適切、②利上げ幅縮小が利下げ転換を意味しない、③経済指標を注視――との発言を繰り返しタカ派的な姿勢を強調。12月の50bp利上げの道を残しつつ、2023年も利上げ継続・金利高止まり、いわゆるhigher for longerの道筋を表明した格好です。
今回のFOMCで重要なポイントは、以下の通り。
・FOMC声明文では、利上げ幅縮小を示唆する文言を追加
・12月の利上げ幅は50bpに縮小する余地を残す
・パウエルFRB議長の記者会見は利上げ幅縮小の可能性を残すも全体的にタカ派寄り、利上げ幅縮小イコール利上げ停止ではないと釘を刺す
・パウエルFRB議長、9月FOMCの経済・金利見通しからFF金利見通しが上方修正される可能性を繰り返す
・パウエルFRB議長は9月の会見で言及した「今後数カ月にわたり、物価が2%に戻ることと整合的であることを示す有力な証拠を探すことになる」との発言を繰り返さず。利上げ幅縮小→利下げ転換との思惑を与えないよう配慮か
・足元のコアインフレ指標を押し上げる家賃について、新規家賃と米労働統計局の乖離について明確な言及せず。新規家賃を重視する姿勢をみせ、ハト派と判断されるリスクを回避する意図か
・金融動向を注視すると発言しつつ米株高に言及せず、米株高への不快感を示唆か
・4回連続の75bp利上げを受け、ソフトランディングの可能性が縮小したことに言及
・前回と違って、ドル高による輸出減少に言及せず(利上げ継続のサイン)
・今回、パウエルFRB議長が着用したネクタイは75bpを決定した6月と同じブルー、過去2回の紫と異なる
画像:パウエル議長のネクタイ
(出所:Twitter)
以上の結果を踏まえ、フォーチュン誌は「悪魔の取引(davil’s bargain)」と評価しています。パウエルFRB議長率いるFedが利上げ幅縮小を提供するも、金利は高水準で長期にわたって維持される”取引”を持ち込んだためです。結果を受け、米株市場はFOMC声明文公表後に上昇→パウエル発言で下落→結局505ドル安で引け。米利上げ継続示唆に反応し米10年債利回りも上昇、ドルもつれて上昇してクローズしました。
一方で、FF先物市場はご覧の通り12月FOMCでは引き続き50bp利上げが優勢も、新たに3月の25bp利上げを織り込み始めています。
(作成:My Big Apple NY)
パウエルFRB議長は、注目すべきは利上げ幅ではなく金利が高止まりする期間だと言及しました。少なくとも金融市場は、そのメッセージをしっかり受け止めたようです。
中間選挙で敗北なら、民主党陣営がFRBに政治圧力も
さて、中間選挙では下院でなく上院も共和党が多数派を奪回し“レッドウェーブ”が起こる可能性が取り沙汰されております。
仮にそうなった場合、民主党議員は2024年の米大統領選を見据え、黙っていないでしょう。
既に民主党議員は行動しており、10月25日付けにシェロッド・ブラウン米上院銀行委員会委員長、間髪入れずに11月FOMC開催当日の11月1日付けで民主党上下院議員11名が書簡を送付、統治目標の一つである「雇用の最大化」をおろそかにすべきでないと苦言を呈しています。
画像:FOMC後の民主党陣営のFed批判
パウエルFBR議長の「インフレは一時的」発言撤回は、21年11月に行われた再指名前のバイデン大統領との会談後に行われました。同議長は、2019年にトランプ大統領(当時)の圧力に屈し、利下げに転じたとの見方もあります。一方で、「雇用の最大化」がFedの義務であることも事実。果たして、「ドル高を懸念していない」とアイスクリームを楽しみながら言及したバイデン氏が民主党内のコールに合わせ利上げ中止要請へ“ピボット”するのか、Fed以外にもその姿勢が試されます。