確定拠出年金の制度が始まったのは2001年10月。20年以上の間には、何度も制度が見直されてきました。今年も大きな改正が施行され、より多くの人が確定拠出年金制度に加入できるよう、環境が整ってきています。筆者も、個人の家計相談などの現場で、iDeCo(個人型確定拠出年金)に興味を示す方が増えていると実感しています。
そこで、国民年金基金連合会などの公表資料から、3回にわたって「みんなどうしてる? 確定拠出年金」と題して、現状をご紹介しましょう。今回は、加入者についてです。
シリーズ 「みんなどうしてる? 確定拠出年金」
(上)加入者の状況(今回)
(中)掛け金はいくら払っている?
(下)どんな運用をしている?
確定拠出年金の加入者は、延べ1,021万人
国民年金基金連合会の発表によると、2022年3月末の確定拠出年金の加入者は、企業型が782万人で、個人型(イデコ=iDeCo)が239万人です。企業型を導入している職場は、3月末で42,669事業所、規約数で6,802規約となっています。
制度開始直後は、企業年金の運用が難しくなった企業が企業型確定拠出年金を導入し、加入者が広がりました。当時はまだiDeCoという愛称ではなかった個人型は、しばらくの間、加入者がなかなか増えませんでした。
iDeCo は、2017年1月に公務員や専業主婦(夫)、配偶者に扶養されるパートタイマーなどの第3号被保険者も加入できるようになりました。この時期から、iDeCoの加入者数が増えています【グラフ1】。
現在は企業型とiDeCoの両方に加入できる人もいます。企業型とiDeCoの延べ人数での加入者は、2022年3月時点で1,021万人に上っています。
運用指図者は、企業型が28万人でiDeCoが79万人。運用指図者とは、掛金の拠出をせずに、以前の拠出分を運用している人です。60歳などのリタイア年齢に達して拠出を終えた人や、国民年金の被保険者の資格を失った人などが該当します。受給者は企業型が9万人、iDeCoが3万人です。
2022年4月1日から、老齢給付金の受取開始時期が75歳までに拡大されました。これによって運用指図者が増えるかどうか、今後の動向に注目したいところです。
ではここからは、iDeCoについて詳しく見ていきましょう。
iDeCoの半数が、勤務先に企業年金がない人
老後の生活資金を準備するにあたっては、個人事業主やフリーランサー、企業型が導入されていない職場に勤めている人は、企業年金が導入されている会社員に比べ、より自助努力が必要となります。
【グラフ2】は、iDeCoの加入者269万人の加入区分別の内訳です。
第1号加入者は、国民年金保険制度の第1号被保険者。自営業などの人です。第2号加入者は、民間企業の従業員や公務員など。第3号加入者は専業主婦(夫)などです。
第4号加入者は、加入要件が見直されたことで新設された加入者区分です。2022年4月から、第1号加入者(自営業者等)および第3号加入者(専業主婦(夫)等)は、国民年金に任意加入すれば65歳未満までiDeCoに加入できるようになりました。また、20歳以上65歳未満の海外居住者もiDeCoに加入できるようになり、これらの立場の人たちが第4号加入者に区分されています。
【グラフ2】を見ると、企業年金制度のない職場に勤めている人が加入者の約半数を占めています。iDeCoは、中小企業などの従業員の老後の生活を支える重要な制度といえるでしょう。
iDeCo、女性の割合が高まる
国民年金基金連合会が公表した、運営管理機関連絡協議会「確定拠出年金統計資料(2022年3月末)」によると、男女別のiDeCoの加入者は、男性が58.4%で女性が41.6%です。男女比は年々縮まっています。専業主婦などの国民年金第3号被保険者がiDeCoに加入する前の年度末、2016年3月末のiDeCo加入者の男女比は、男性が71.2%、女性が28.8%でした。
2022年3月末時点の年齢層別では、19歳までが1%に満たない196人おり、20歳代が6.3%、30歳代が22.8%、40歳代が37.2%、50歳代が33.6%、60歳以上は923人で1%以下です。
【グラフ3】で、年齢層ごとにiDeCoの加入者の推移を示しました。
どの世代でも増加傾向です。20歳代から50歳代までの層では、年間20%以上の増加率が続いています。
筆者が20歳代や30歳代の頃は、老後のために資産形成をしようなどという考えは、全くありませんでした。将来を見据えて、早いうちからiDeCoを利用している今の若い世代には感心するばかりです。
次回は、『「みんなどうしてる? 確定拠出年金」(中)掛け金はいくら払っている?』をお届けします。