塩漬け株とは?
買い値よりも市場価格が下落し、含み損を抱えながら長期間保有している株式のことをいいます。
明確な定義はありませんが、売却すると損失が確定するため、いつか買い値を上回るだろうと思い込んで保有を続け、気づいたら5年や10年といった時間が経過していた、というケースは珍しくありません。
ただ、含み損を抱えていても保有を続けていると有配株なら年に1回~2回の配当金が入ってくるし、株主優待の権利もあります。そのうちに含み損には目をつむり、毎年の配当や優待が楽しみ、という考え方に変わっていくケースもあるでしょう。
どうして塩漬けになってしまうか?
株価が買い値を下回ってしまい、下げることが決定的になると、多くの投資家は損失を確定しなければならないと覚悟します。
ところが、少し欲が出ることから株価が少し戻ったら売ろうと考えます。しかし、待っているうちにさらに下げてしまう。これを繰り返すうちに、損失の改善は見込めなくなり、一定の損失額以上になるとあまり損を気にしなくなります。
「売っても損失が同じなら、持っていることにしよう」、「長く持っていれば、いつか上がるだろう(本心ではすぐに戻って欲しいと思っている)」など、大方のケースではこのような心理的作用によって塩漬け株になってしまいます。
早く手放すのは「良い株」ではなく「悪い株」
一般的に人々は成績の良い株式を早く売却し、成績の悪い株を長く保有しすぎるといわれます。「利食いは早く、損切りは遅い」というやつです。
信用取引で複数銘柄の買い建玉があるケースを考えます。評価益が出ているA株を先に利益を確定させるために売却し、評価損が発生しているB株をそのままにした結果、A株で儲けた利益分以上に損失が拡大してしまった。
これは信用取引だけではありません。信用取引の買い建玉にはそれを反対売買によって決済する期限があるため、期限がくると必然的に損失を確定する判断に迫られます。いわゆる、諦めがつくわけですが、複数の現物のポートフォリオを保有している場合、評価損が大きくなっても持ち続けることができます。
その結果、1銘柄だけの損失拡大によって、ポートフォリオ全体のマイナスにつながることもよくある話なのです。
プロスペクト理論による説明
2002年にノーベル経済学賞を受賞した、有名なアメリカの心理学者、行動経済学者であるダニエル・カーネマン氏は、プロスペクト理論で人々が損切りできない理由を説明しています。例えば、以下の2つの質問があります。
1も2も、どちらを選択しても期待値における損得は変わりません。しかし、この2つの質問に対して、多くの人が両方とも(A)の選択肢を選ぶでしょう。
人は自分に有利な場面ではリスクを避け、自分に不利な場面ではリスクを好む特性、つまり「利食いは早く、損切りは遅い」といった合理的といえない判断をしてしまう性質があることを示唆しています。
こういった特性が塩漬け株を増やしていく理由といわれています。