みなさんはインターネットにおる動画配信と聞いて、まずどの企業のサービスを思い浮かべますか?
米大手配信事業者である「Netflix」は当然、名前が上がってくるでしょう。Amazonプライムサービスを申し込むと同時に加入することができるAmazonプライム・ビデオも人気があります。
野球やサッカーなどスポーツ観戦がお好きの方ならDAZNを申し込んでいる方も多いでしょうし、家族で楽しめるディズニープラスなども知名度が高いですよね。
これまで上げてきたサービスですが、海外発のサービスが多いです。ですが、知名度の高い配信事業者は海外企業ばかりなのかというと、そうではありません。実は国内で「Netflix」に次いで第2位のシェア(「動画配信(VOD)市場5年間予測(2023-2027年)レポート」GEM Partners調べ)を持つサービスがあります。USEN-NEXT HOLDINGS傘下の企業が運営している「U-NEXT」です。
2022年定額制動画配信サービス別国内市場シェア
(GEM調べをもとにDZHフィナンシャルリサーチ作成)
USEN-NEXT HOLDINGSは、株式市場では知名度の高い企業です。足もと業績は右肩上がりで成長を続けており、そのけん引役となっているU-NEXTも、有料会員数の伸びが続いている注目事業です。そのU-NEXTが2月17日、同じく動画配信サービス「Paravi(パラビ)」を運営するプラットフォーム・ジャパン(PPJ)と合併すると発表し、株式市場で話題となりました。
Paraviは同じ動画配信サービスといっても、主にテレビ局が出資し、放送番組の振り返り放送や、過去コンテンツの再放送などを中心に配信しているいわゆる放送系配信サービス事業者。NetflixやU-NEXTのような動画配信サービスとは毛色が異なります。放送系配信サービスはParaviのほか、フジテレビ系列のコンテンツを扱うFODや同じくNHK系のNHKオンデマンドなどがありましたが、それぞれ独自路線でサービスを展開しており、他の動画配信サービスと連携する動きは見られませんでした。
今回、その放送系サービスのParaviと「U-NEXT」が合併することで、国内配信事業者としては他の追随を許さない立ち位置を確保したと言えるかもしれません。
国内勢の再編進むか
こうした企業同士の合併は話が出てから即実現するものではありませんし、以前から長い準備や議論を経て形になったものだと思いますが、タイミング的には「GYAO!」の撤退を連想せずにはいられませんでした。
GYAO!のサービスが始まったのは2005年。実は同サービスを開設したのはUSENでした。その後、2009年にヤフーに売却されると、同社のもとで運営されてきましたが、動画配信市場の拡大に伴い、「Netflix」やAmazonプライム・ビデオなどが続々と日本市場に参入。生存競争も激しさを増すなかで、サービスを維持することが困難になったのだと考えられます。
国内動画配信事業の黎明期からサービスを継続してきた「GYAO!」でも撤退せざるを得ない。市場の拡大とは裏腹に、それだけ生き残りが厳しくなっていることは間違いないでしょう。
放送系配信事業者との合併という手段を選んだ「U-NEXT」の選択を機に、今後は国内配信事業者の再編が進むことのきっかけになるかもしれません。
とはいえ、単純に合併して規模が大きくなれば有利とは言い切れません。Paraviを運営するプラットフォーム・ジャパンの直近の業績である2022年3月期の売上高は約85億円。純損益は7.4億円の赤字です。USEN-NEXT HOLDINGSの業績に対する短期的な影響だけを見るならば、むしろマイナス。今後、両社の事業からシナジーを生み出し、業務の効率化を進めるなかで赤字の解消も進めていかなくてはなりません。
それでも、成長を続けているU-NEXTに、これまでにはなかったコンテンツが追加されることは利用者にとっては魅力的なこと。さらに、これまで加入していなかった層に働きかけることで、有料会員数のアップにつなげることも狙っているようです。同社の今後の取り組みと業績の行方に注目したいですね。