1年で87%値上がり
2月の卵の卸売価格が過去最高値を更新し、統計を公表している1993年以降で最も高くなったとの報道が各メディアで盛んに報じられています。
「JA全農たまご」が公表している東京地区でのMサイズ1キロ当たりの平均価格は、2月に327円まで上昇し、前年同月の175円と比べて86.9%も値上がりしました。
例年では、クリスマスシーズンの12月をピークに卵の価格は値下がりする傾向があると言われていますが、今年は値下りどころか過去最高を更新するまで値上がりしているということですから、ただごとではありません。
JA全農たまごM基準価格(円・東京)
(当月の数値については1日から閲覧日までの平均値 JA全農発表数値よりDZHフィナンシャルリサーチ作成)
これほどまでに価格が上昇しているのは、大きく分けて2つの要因があります。一つはにわとりのえさとなる飼料価格の高騰です。ロシアによるウクライナ侵攻でとうもろこしなど価格が高騰。エネルギー価格も上昇で光熱費負担も増加しました。こうしたコスト増を価格に転嫁せざるを得なくなっています。
2つ目が鳥インフルエンザの感染拡大です。2月初旬時点で各都道府県が発表した殺処分数は1300万羽を超え、こちらも過去最大の処分数となっています。これにより出荷数が減少したことが価格の上昇につながりました。
食卓に上る機会の多い卵の価格上昇は家計にも大打撃ですが、影響はそれだけにとどまりません。外食企業においても、すでに卵を使用した一部メニューの提供を停止するなどの影響が出ています。
例えば、すかいらーくホールディングスが運営する「ガスト」では、2月にパンケーキなどの提供を中止。大戸屋ホールディングスが運営する「大戸屋」でもチキン南蛮の販売を休止しています。
卵価格の上昇が株価にも影響
企業の業績や株価にも影響が出ています。マヨネーズ国内最大手のキユーピーは、今年1月、今23.11期の営業益が前期比17%減少するとの見通しを発表し、株価が大幅に下落しました。減益の要因はマヨネーズの原料となる卵の価格高騰などです。
キユーピー日足チャート
また、業務用の卵焼きなど卵加工品を手がけるあじかんは、2月に今23.3期の営業損益予想を下方修正し、従来の黒字予想から赤字に転落する見通しだと発表しました。これを受けて株価も売りで反応し、足もとでは昨年来安値に接近する水準まで調整しています。
あじかん日足チャート
一方で、株価が上昇している銘柄もあります。採卵養鶏場大手のホクリヨウは、鶏卵価格の相場が想定を上回って推移しているとして、2月に今23.3期の業績予想を上方修正。加えて、期末配当予想も増額修正しました。鶏卵価格の上昇は直近だけのことではなく、ここ1年上昇基調が続いていましたから、同社の株価もそれを織り込んで上昇。上昇修正の発表後は一時材料出尽くし的に売られる場面もありましたが、それでも昨年安値から4割以上高い水準で推移しています。
ホクリヨウ日足チャート
鳥インフルの感染拡大はいまだ収まっているとは言えず、卵の価格高騰は今後もしばらくは続くとの見通しです。価格が落ち着いてくるためには生産量の回復が必要。それまでは家庭でも企業でも、さまざまな影響が長期化する可能性を想定しておくべきでしょう。