TikTokの次はショッピング通販系か―全米で大躍進する中国系アプリ

TikTok、全米での月間アクティブ・ユーザー数は1.5億人を突破


米銀破綻で揺れている間に、TikTokの周受資・最高経営責任者(CEO)が3月23日、米下院エネルギー・商業委員会の公聴会に出席し集中砲火を浴びました。公聴会が5時間以上にわたって行われたといい、委員会から矢のごとく厳しい質問の矢が降りかかった様子が伺えます。


米下院外交委員会は3月1日、米大統領権限でTikTokの全面使用禁止を認める法案を可決済みです。TikTok包囲網が全米で狭まりつつあるのは、国家安全保障上の理由やデータ保護、子供への悪影響などが挙げられますが、中国系アプリが全米を席捲している点も見逃せません。


ところで、TikTokの人気は米国を含め世界でどれほど浸透しているのでしょうか?


TikTokは世界150カ国以上で利用可能で、月間アクティブ・ユーザー数は、同社によれば2021年9月に10億人の大台を突破しました。他SNSとの比較では、以下の通り。


 


TikTokによると、米国では2月に1.5億人を超えました。2018年1月の1,120万人から、わずか約5年で10倍に急伸し、その成長ぶりには目を見張ります。


2022年に最もダウンロードされたアプリのランキングをみても、昇竜の勢いがひしひしと伝わってきます。世界では6.72億回、米国でも9,900万回で、それぞれ堂々1位でした。


 


米国でのTikTokユーザーを年齢別でみると、やはり10~19歳が32.5%と最も高く、次いで20~29歳が29.5%でした。日本と同じく、TVなど既存メディアではなく、スマホで見られるアプリで情報収集している様子が見て取れます。TikTokが全面使用禁止になれば、若い世代が猛反発するに違いありません。



中国系ショッピング通販アプリ、テミュとシーインが大健闘


ところで、全米を席捲する中国系アプリはTikTokだけではありません。ショッピング通販アプリも、米国内で大躍進しているのです。


米国での2022年版、ショッピング通販で最もダウンロードされたトップ10は以下の通り。


チャート:シーインが堂々2位、中国系のテミュは8位で大健闘

 


堂々2位のシーインは、女性向けアパレル中心のアプリです。激安なだけでなく、購入者がレビューで着用した写真を掲載できるように工夫しており、買い手がイメージしやすいところが大きな特徴です。


8位のテミュは、超お買い得商品がショッピング総合サイト。テミュは米国マサチューセッツ州に本社を置きますが、ピンドゥオドゥオと同じくPDDホールディングスの子会社です。キャッチコピーが「億万長者のように買い物をしよう(Shop Like a Billionaire)」である通り、最大90%安と破格の中国製の商品が並びます。


シーインやテミュの大流行は、TikTokと切っても切り離せません。インフレに喘ぐ米国人、特に若い世代を中心に超お買い得な商品に飛びつき、それをTikTokでアップロードし閲覧者の購買意欲を煽るというエコシステムの上で成り立っているためです。こうした状況は、#temuhaulや #sheinhau、即ち「テミュ or シーインでのお買い上げ」と題したハッシュタグの普及にも表れています。


米国人の中国アプリエコシステムの没頭ぶりは、iOS上でのアプストアのランキングを見ると明白で、3月29日時点で1位がテミュ、2位がキャップカット(動画編集アプリ)、3位がTikTok、4位がシーイン、5位に漸くインスタグラムが入る程度で、トップ5を中国系アプリが席巻する状況です。


米政府の監視の目はTikTokに呑み降り注がれているようにみえますが、全米で爆発的に普及するショッピング通販アプリが対象となってもおかしくありません。シーインは新疆ウイグル地区で生産された綿製品に輸入規制を敷く米国政府の規制の網をかいくぐり(申告要件は800ドル、シーインの米国顧客はこの基準を下回るため対象外に)、本土に上陸している実情があります。テミュで販売される商品にも、同様に疑念が持たれ調査される場合も想定しておきたいところです。


バイデン政権や米議会がこうした状態を放置するのか、中国アプリの流行を支援するTikTokへの対応にその方向性が表れてくることでしょう。



ストリート・インサイツ

金融記者やシンクタンクのアナリストとしての経験を生かし、政治経済を軸に米国動向をウォッチ。NHKや日経CNBCなどの TV 番組に出演歴があるほか、複数のメディアでコラムを執筆中。

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