2025年10月20日、自民党と日本維新の会が連立政権樹立で合意しました。当面は閣僚を出さない「閣外協力」となりますが、日本の政治が大きく動く瞬間です。
維新の会は閣内協力を検討するにあたり、社会保険料改革・副首都構想・国会議員の定数削減に取り組むことを条件としています。このうち、社会保険料の削減に対して残りの2つはあまり注目されていない印象ですが、我々の生活にどのような影響があるのでしょうか。
副首都構想とは?
副首都構想は「東京以外にもう一つの首都機能を持つ都市を作ろう」とする政策です。行政面で東京のバックアップ機能を作ることで、万が一の災害により東京が甚大な被害を受けた際に代わりの運営機能を持つ都市が副首都を担います。
「大阪」を副首都にする政策ではないものの
副首都になると、以下のような特例措置の対象となります。
(副首都に与えられる権限)
〇国から税金を徴収する権限の一部を移譲
〇規制を緩和する特例措置
〇首都機能をバックアップするためのインフレ整備に要する予算
〇中央省庁や国会の一部を移転
〇指定された道府県は「都」と名乗ることができる
注目されているのは、これらの権限を持つ副首都として指名されるのには、「特別区」になることが義務付けられる点です。大阪府と大阪市を廃止して、東京23区のような特別区にする取り組みは、従来「大阪都構想」として提案され、二度(2015年・2020年)の住民投票の結果、否決が上回りました。
副首都構想は都構想と同じ日本維新の会が主導していることもあり、「都構想の名前を変えただけでは」という指摘があるのも事実です。副首都を大阪にすることを前提とした施策ではないものの、特別区の設置はハードルの高いものであり、事実上大阪を副首都にする=大阪都構想の実現ではないかという批判があります。
副首都構想のメリットとデメリット
現時点では維新の会が党施策として打ち出している段階のため、副首都構想と大阪都構想の違いは明確ではありません。両者の差が伝わっていないことも、副首都構想が都構想の焼き直しではないかという指摘の背景となっています。
日本維新の会による副首都構想(≒大阪都構想)のメリットとデメリット
(メリット)
〇災害時のバックアップ機能
〇東京一極集中の是正
〇経済活性化
(デメリット)
〇数兆円ともいわれる初期投資
〇既存の行政組織を簡略化することによる行政サービスの低下
〇限定的な経済効果
まずは高市新政権に副首都への取り組みがどこまで含まれるかによって、副首都構想の実現に向けた熱量の高さを我々は確認することになるでしょう。インフラの整備や経済活性化が具体的に見えてくるならば、あらたな投資対象が広がることにも繋がります。
筆者としては大阪は当然として、名古屋や福岡、札幌といった地方の中核都市、かつ市政と都道府県制が重複して存在している自治体に、分割して首都機能を移譲していく政策に期待したいところです。大阪のみの副首都設定と比較し、初期コストを削減(分散化)することと、経済効果を広範囲に広げることができます。
国会議員の定数削減
維新の会がもうひとつ注力している取り組みが「国会議員の定数削減」です。報道によれば、国会議員定数の1割を削減するという流れが固まりつつあるようです。2025年現在、衆議院は465名、参議院は248名の定数が公職選挙法で定められているため、両院合わせて約70名の削減に向けて動き出すことになります。
現在のように(実質)賃金の横ばい・減少が続く世の中では「自分たちも我慢しているのだから政治家も身を削れ」という世論のもとで定数削減は叫ばれやすいという背景があります。当然定数を削減すると給与にあたる歳費の削減に繋がる一方、特に地方部から選出される議員が少なくなり、政治の声を拾う地域格差が小さくなるというデメリットがあります。また選挙の当選可能性が低くなることで、「十分な地域組織を持たない」政党が力を失うという効果もあります。
大阪を中心とした関西圏に地盤を築く維新の会にとっては、ほかの政党が弱体化することにより自分たちの影響力を広げたいという思惑があるか否かが定数削減の裏にあるか、断定はできません。
国会議員の定数削減はあくまで立法府の話であるため、経済活性化と繋がるものではありません。また諸外国と比較して日本は国会議員の数がそもそも少ないという指摘があり、国会議員の新陳代謝を阻害する定数削減が本当に効果を有するのか、それとも単なるポピュリズムなのかという指摘は根強くあります。
こちらは実現の可否のうえで、自分たちの生活への影響を注視することになります。他国では韓国の世宗(特別自治)市やドイツのボンなどで副首都の展開が実施されましたが、初期費用の高さや行政官の移動コストなどが積み重なる一方、プラス面の効果は限定的にとどまったという指摘が強いようです。
とはいえ日本の政治において、あらたな風による転換点であることは変わりません。まずは期待感を持って見守りたいと思います。維新の会の連立政権参画により、大きな政治トピックとなった2つのテーマに注目です。