投資家が知っておきたい「心のクセ」とは?

「株を購入した企業の良い情報ばかりを集めてしまう」

「とりあえず売るのが面倒だから保有し続けたら含み損に」

「今売ったら後には引けないと思い、含み損の銘柄が増えていく」


上記のような行動により、損をしてしまう方は多いのではないでしょうか。


人間には、無意識に先入観や直感・これまでの経験で判断してしまう「心のクセ」が存在します。「心のクセ」のおもむくままに行動した結果、投資で非合理的な判断をして損をしてしまうことがあります。


今回は投資家が知っておきたい「心のクセ」6つと対処法について解説していきます。


無意識に先入観や経験・直感で判断してしまう「心のクセ」

行動経済学で、人間は先入観やこれまでの経験もしくは直感などで非合理的な選択をしてしまう「心のクセ」=「認知バイアス」があると言われています。お金や投資に関係するものを6つ見ていきましょう。


1.確証バイアス

自分の考えや判断が正しかったと立証するために、肯定するような情報ばかりを集めてしまうことです。例えば「あの銘柄を買って良かったのか」と迷いが生じた際に、購入した株式を発行した企業のプラスの情報ばかりを集め、満足してしまう行為などを指します。


2.現状維持バイアス

変化を恐れ「できるだけ現状を維持しよう」という心のクセです。資産運用をしたいと思っているものの、証券会社の口座を開設するのが面倒でとりあえずお金を預金に回しておくといった行動が当てはまります。


次に解説する「損失回避バイアス」が背景にあると言われています。


3.損失回避バイアス

一般的に、人間は利益を得た充足感より損失に対する苦痛を大きく感じると言われています。投資で10万円の利益を得た後に9万円の損失を出すと、差し引き1万円のプラスになりますが「せっかくの利益が水の泡だ」「9万円の損失がなければ」と損失を強く気にしてしまう心のクセです。


損失回避バイアスにより、損失を取り戻そうと高リスクの商品に手を出してしまう、損切りできずに含み損が増えてしまうなどの恐れがあります。


4.サンクコスト効果

サンクコストとは「埋没費用」という意味で、撤退しても回収できないコストのことです。既に投入したコストを諦められずに損切りできずに保有し続ける、下落局面でも資金を投入し続けるなどの行動に出てしまうことがあります。


5.ディスポジション効果

株価が上昇した銘柄を急いで売り、値下がりしている銘柄をなかなか損切りできないという損失回避の性向です。含み益のある株式を保有すると、株価下落のリスクや株価下落時の後悔を回避しようと投資家は早々に売却しようとする傾向にあります。


一方で、含み損の銘柄を保有すると失敗を受け入れないため手放せずに保有し続けるケースが多いと言われています。


6.メンタルアカウンティング

メンタルアカウンティングとは「心の会計」とも呼ばれる行為です。例えばギャンブルで得たお金と働いて給料として得たお金を同じ価値と思えずに、「ギャンブルで得たあぶく銭だからぱーっと使ってしまおう」といった行為が代表例です。


お金を使う時にも、娯楽費に高額なお金を出すことを躊躇う一方で生活必需品には高いお金を支払っても「やむを得ない」と感じる方は多いのではないでしょうか。


お金の使い道や入手方法により扱い方を変えて非合理的な行動をとってしまいます。


心のクセに振り回されないためには

上記のような「心のクセ」に振り回されずに、合理的な判断をするためには一体どうすれば良いのでしょうか?


まずは上記の心のクセを知り、「損切りしたくない」「損失を取り戻さなくては」と感じた時には「これは認知バイアスでは?」と自分の感情を客観視するよう心がけましょう。また、商品やサービスを購入するときには「損得ではなく、本当に現在の自分にとって必要なものか」という基準で検討することが重要と言えます。


投資に関してはまず自分の投資ルールを明確に決めることが重要です。


「○%の下落率で損切りする」「○%の含み益で売却する」など具体的なルールを決め、できるだけ破らないように行動しましょう。あらかじめ取引ツールに設定しておくことで、感情に左右されないトレードができる可能性が高くなるでしょう。


株や投資信託などを購入する際には、急いで判断せず時間をかけて情報を収集し不都合な情報にも目を通すことが重要です。


筆者にも上記の心のクセで損をしてしまった経験があり、自分の感情を客観的に判断することは難しいと感じています。「生活費のうち○○円までは好きに使って良い」「▲▲円は投機的な投資で少し遊びたい」など少し余裕をもたせ、心理的にも金銭的にも自分を追い込まないように心がけています。


まとめ

自分の考えを正しいと思うために都合の良い情報ばかりを集めてしまうなど、人間には非合理的な心のクセがあり投資の判断にも影響を及ぼすことがあります。心のクセを知り、投資で焦ってしまう時や急いでしまう場面では自分を客観視するよう心がけましょう。


ファイナンシャル・プランナー/ライター

田中 あさみ

大学在学中に2級FP技能士の資格を取得。会社員を経て独立し、金融・投資・相続・法律などの記事を執筆している。 自身でも米国株やETF・投資信託等を運用中。

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