日々のニュースをチェックしよう(2) 企業の最新情報を知る

企業の最新ニュースをチェック


前週は日々のニュースで企業の株価が大きく変動することについてお伝えしました。その際、世界の経済動向など大きな出来事について取り上げましたが、一方で、企業の業績や、新商品、新技術などに関するニュースでも企業の株価は変動します。今回はそうした企業ごとの細かなニュースが株価に与える影響について、実例を挙げてご紹介してみたいと思います。



トヨタ自動車の週足チャート



1つ目はトヨタ自動車です。同社は昨2021年12月に、2030年までに30車種のバッテリーEV(BEV)を展開し、グローバル販売で年間350万台、レクサスブランドも同年までに、欧州、北米、中国でBEV100%をめざすと発表しました。それまでEVにはあまり積極的ではないとみられていた同社が、いよいよ本格的にEVに注力するとの方針を発表したことを株式市場は好感し、株価は一気に2割超上昇するなど、急激な上昇を見せました。トヨタほどの大きな規模の会社が、これだけ短期間で株価が急騰することは珍しく、2021年末から2022年初にかけて、同社株は株式市場で非常に大きな話題となりました。そのきっかけが1つのニュースだったというわけです。



塩野義製薬の日足チャート




2つ目は株価が下落してしまった事例として塩野義製薬を取り上げたいと思います。厚生労働省の薬食審・薬事分科会および医薬品第二部会の合同会議は7月20日、同社のの経口投与の新型コロナ治療薬候補「ゾコーバ錠」の緊急承認の可否を審議し、「継続審議」とすることを決定しました。同社の新型コロナ治療薬の可否については、かねてから注目されており、また期待されていました。株価を見てみると、コロナ治療薬への期待から足もと上昇していたことがわかります。しかし、承認には至らず、継続審議となったことで期待が剥落。一気に売られました。



日本電解の日足チャート




3つ目は直接的なニュースではなくとも株価に影響がある場合を紹介します。2022年の6月にパナソニックが米電気自動車大手テスラ向けに北米での新工場建設を検討していると報じられたことがありました。このときは、成長が続くEVメーカーのテスラ向けに、車載電池事業を拡大する方針を示したパナソニックにも今後の成長を期待した買いが入る場面がありました。ただ、同ニュースで当事者のパナソニック以上に買われる株式がありました。それが日本電解です。同社はパナソニックを主要取引先として、車載電池用の電解銅箔を取り扱っている専業メーカーです。車載向けは日米ともに高いシェアを誇っており、知る人ぞ知る企業と言えるかもしれません。パナソニックに車載電池向け部材を提供している会社ですから、パナソニックがテスラ向けに車載電池の生産を強化すれば、当然日本電解の部品も多く使うことになる。そのため、日本電解の業績にもプラスになると受け止められたわけです。グラフを見ると6月初旬に株価が急騰する場面があったことが確認できます。


株式市場では、こうした「連想ゲーム」のような動きから、1つのニュースを受けて複数の企業の株式に買いが波及することがままあります。そのまま「連想買い」と呼ばれたりもしますが、直接名前の出ている企業の外側にも影響が広がっていることを意識することで、売買のチャンスも増えていきます。ぜひ、意識して企業のニュースをチェックしてみましょう。


日本株情報部 アナリスト

斎藤 裕昭

経済誌、株式情報誌の記者を経て2019年に入社。 幅広い企業への取材経験をもとに、個別株を中心としたニュース配信を担当。

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