2024年から、NISA(少額投資非課税制度)が大きく変わります。改正点のうち、「成長投資枠」の中で購入できる公募株式投信について、具体的にどの銘柄が対象になるのか、気になっている人もいるでしょう。先日、第一弾として上場投資信託(ETF)・上場不動産投資信託(J-REIT)が91本、上場していない公募投資信託が941本、合計1,032本が公表されました。
新しいNISAは、現行の「つみたてNISA」と「一般NISA」のセット
現在、成人が利用できるNISAには、「つみたてNISA」と「一般NISA」があります。「つみたてNISA」は、公募株式投信・上場投資信託(ETF)の対象銘柄約230本のうち、自分で選んだ投信を最長20年間、積立投資ができる非課税口座です。「一般NISA」は、株式や公募株式投信を最長5年間非課税で運用する非課税口座です。
1人の投資家が同一年に選択できるのは、この2つのタイプのNISAのどちらか1つです。例えば、「投信積立で老後の生活資金を準備したい」と考え、つみたてNISAをしている人が株式を買う場合には、課税口座を使うしかありません。
2024年からの新しいNISAでは、ここが改正されます。新しいNISAは、現行の「つみたてNISA」と「一般NISA」がセットになった非課税口座です。現在の「つみたてNISA」とほぼ同様の「つみたて投資枠」と、「一般NISA」をリニューアルする「成長投資枠」の両方を、1人の投資家が同一年に使えるようになります。
新しいNISAの「成長投資枠」とは
ただし、「成長投資枠」は、現行の「一般NISA」と比べると、やや選択の幅が狭まります。大雑把に言えば、長期投資に適した運用方法でなければ「成長投資枠」の対象となりません。
この「成長投資枠」の対象が制限される点については、2022年末に公表された「令和5年度税制改正大綱」に、以下のように盛り込まれていました。
●上場株式等について、証券取引所から整理銘柄に指定されているものなどを除く
●一定のデリバティブ取引などで運用されているものを除く
●公募株式投資信託について、信託契約期間を定めていないか、20年以上としていること
●公募株式投資信託について、収益の分配は毎月でなく、かつ、決算期ごとに決定すると定められているものに限る
現行の「一般NISA」では、信託期間が20年に満たない公募株式投資信託や、毎月分配型なども利用できます。ですが、新しいNISAの「成長投資枠」では、対象外になる投信が多くあると推測されていました。
そもそも運用益を非課税にすることで、国民の投資による資産形成を促進するのがNISAです。短期売買は趣旨から外れます。長期間の資産形成に適した運用に制限するのは当然の措置といえるでしょう。
投資信託協会から、第一弾が公表
2023年6月21日に、一般社団法人 投資信託協会から、「成長投資枠」の要件を満たす公募株式投信が公表されました。
新しいNISAに先立ち、各運用会社が投信協会に「成長投資枠」の要件を満たす投信を届出、投信協会が取りまとめます。まずは、2024年1月4日時点で届出があった投信について、公表されました。ETF・J-REITが91本、上場していない公募投信が941本で、合計1,032本です。
対象の投信は、一般社団法人 投資信託協会のサイトから一覧表をダウンロードして、全銘柄を見ることができます(Excelファイル)。
投信協会が上記サイトで公表するリストの内容は、定期的に更新されます。2023年中は、7月以降もほぼ1カ月に1回程度の頻度で更新を予定しています。
941本のうち、40本が2023年に運用開始、2022年は54本
第一弾として公表された、941本の公募投信の一覧を眺めてみました。全てが追加型投信。年間の決算回数を見ると、年1回が666銘柄、年2回が196銘柄、四半期ごとが57銘柄、隔月が22銘柄となっています。現行の「つみたてNISA」の対象が162銘柄、非対象は779銘柄です。
気になったのは、運用開始の時期です。941本のうち、2023年設定の投信が40本あります。2022年に設定された投信は54本。2022年以降に設定され、運用実績を十分に積んでいるとは言い難い投信が、公表されたうちの1割を占めています。
要件としての「信託契約期間20年以上」というのは、運用開始から償還までの期間を指しています。運用開始から日が浅いことは問われていません。新しいというだけで悪いとは言えませんが、投資家としては、過去の運用実績も銘柄選びの重要なポイントです。おそらく、新しいNISAのスタートを見据えて、要件を満たす投信を投入してきたのでしょう。
2024年からのNISAを機に、投資未経験者の投信購入が今後増えることが予想されます。過去の経済環境下でどのような値動きがあったのか、例えばリーマン・ショックではどの程度下落したのか、アベノミクス相場ではどのような上昇を見せたのかなど、初心者でも投資判断ができるよう、十分な情報がそろっているほうが安心といえるでしょう。