岸田総理大臣は10月23日の臨時国会で、所信表明演説を行いました。そのなかで「ライドシェア」の解禁を検討すると言及したことが株式市場で話題となっています。
ライドシェアとは、一般のドライバーが自家用車で乗客を有償で運ぶもので、海外では「Uber」や「DiDi」、「Lyft」など、さまざまなアプリを通じて。既に実施されています。
日本国内ではタクシー業界への影響などが懸念され、また同業界が通常の運転免許とは異なる2種免許などを必要とする産業でもあったことから、実用化には至っていません。免許がなくタクシーを運転する、いわゆる「白タク」行為が法律で禁止されていることもあり、導入には高いハードルがあると考えられてきました。
それが一転してライドシェア解禁の流れに傾いてきたのには、大きく2つの要因があります。一つは運転手不足です。コロナ禍の影響などもあり、タクシー業界では、運転手の数がコロナ前の2019年と比較して、およそ2割減少したとの指摘もあるほど、タクシー業界は深刻な人手不足となっています。
もう一つはインバウンドの増加です。コロナ禍からの回復に加え、足もとの円安基調もあり、海外から日本を訪れる海外客は増加基調。観光局が発表する直近の数値(2023年9月分)では、ほぼコロナ前の水準まで回復しています。こうした外国人客の観光のための足として、タクシー需要が増加しているのです。
タクシー業界からは、競合が増えることにもなりかねないことや、利用する際の安全性を優先するべき、といった理由から反対する声もあるようです。とは言え、特に地方の交通インフラは都市部に比べると脆弱であり、自動車でなければ移動が難しい場所も多いのが現状です。
タクシーそのものの台数も不足していることから、地域などを限定してライドシェアを解禁するほか、タクシー会社がライドシェアの利用者を仲介するなどして課題を解決しようとする案も出ており、ライドシェア解禁に向けて徐々に進んでいる印象があります。
こうした動きを受けて、直近の株式市場でもライドシェアに関連した企業の株が積極的に売買される場面がありました。
例えば、都内ハイヤー・タクシー大手4社の一角を占める大和自動車交通<9082.T>。同社は、ライドシェア解禁を見据え、デジタル化や国交省が進める実証実験などに参画しており、市場ではライドシェア関連として注目を集めました。株価は岸田首相が所信表明でライドシェア解禁に言及すると報道などで伝わった10月中旬ごろから、急動意。ストップ高まで上昇する場面もみられるなど、株式市場でも話題となりました。
大和自動車交通 日足チャート
同様にアディッシュ<7093.T>も出来高を伴って大きく上昇する場面がありました。同社は主業務は、学校向けネット監視やコンサル、SNS運用代行などを手がけていますが、子会社のアディッシュプラスが長距離ライドシェアサービス「notteco」を運営しています。子会社への業績期待から株価は短期間で急騰。その後、地合いの影響もあり直近では値を消していますが、ライドシェアの話題が盛り上がる際には、また買いを集めそうです。
アディッシュ 日足チャート
ライドシェアの制度自体が日本で本当に解禁されるかについては、いまだ不透明な部分も多いですが、今後も折に触れ、話題に上る機会が増える確率は高いと言えるでしょう。上記に挙げた2社以外にも、関連するサービスなどを手がける企業はまだまだあります。今から調査しておくことで、周りの投資家に先んじて動けるよう準備をしていくと成果につながるかもしれません。