サンタ・ラリーに沸く米株、12月FOMCが決定打に
10月末、S&P500が7月ザラ場高値の4,607から10%下落し調整相場入りしたのが、まるで嘘のようです。12月15日、ダウは2日連続で最高値を更新し、S&P500は2022年3月以降の抵抗線だった4,600を明確に上抜けました。クリスマスのイルミネーションで彩られるウォール街は、サンタ・ラリーに沸いております。
米株相場にとって、今年のサンタ・クロースは間違いなくパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長でしょう。12月12~13日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)は3回連続で据え置きを決定しただけでなく、四半期に一度公表する経済・金利見通しで2024年末のFF金利予想・中央値を4.625%とし、3回の利下げを示唆しました。
パウエルFRB議長自身、FOMC後の記者会見で「利上げサイクルのピークか、その近辺にある」、「(インフレ率が)2%になる前に、経済への負荷を緩和したい。政策が経済活動やインフレ率に影響を与えるには時間を要する」と発言。また、景気後退入りや失業率の上昇を待って利下げを行うかの質問に対して「データを総合的に見ていく。その中で労働データが重要であることは間違いない…リセッション入りや、そういう状況になれば、確かに政策判断に重くのしかかるだろう」と、ハト派的な見解を寄せていました。
以上の結果を踏まえ、ウォール街は2024年の米金融政策見通しを大幅に修正しています。
・ゴールドマンサックス→3月開始、5月、6月、以降は四半期に1回で計5回(従来は24年Q4に1回を予想)
・JPモルガン→6月開始、以降は毎回で計5回(従来は24年7月開始)
・バークレイズ→6月開始、以降は隔会合毎に実施で計3回(11月に24年1月の利上げ予想撤回→12月に1回)
リセッション入りするか否か、それが問題だ
パウエルFRB議長は、会見後に米国の景気後退入りについて「そう考える根拠は、ほとんどないと言えると思う」と発言した一方、「リセッション入りする可能性は常にある」とも付け加えました。
問題は、米株相場がサンタ・ラリーの勢いを2024年も維持できるかで、米景気減速や米景気後退への懸念で冷や水を浴びせられかねません。
1987年8月にFRB議長に就任したグリーンスパン氏が、現代の金融政策の礎を築いて以降の利下げサイクルを振り返ると、利下げイコール米株安とはなっていません。むしろ、景気後退を伴わない場合の利下げで、米株は上昇する傾向にあります。
例えば、1995年7月、1998年9月に開始し、それぞれ3回ずつ利下げを行った際、S&P500は月足で7月から上昇基調をたどり、1998年8月にLTCMショックでの下落を経て、2000年3月に1,552.87と最高値を更新するに至りました。
画像:1995年から2000年まで、S&P500は長期ラリー
その他、2019年7月から3回行われた「予防的」利下げでは、2020年2月に最高値を更新していました。つまり、ITバブル崩壊や金融危機、コロナ禍など未曽有の事態さえ発生しなければ、S&P500を含む米株相場は弱気相場入りを回避してきたと言えます。
チャート:1995年以降の利下げサイクルと景気後退
チャート:2000年以降の米利下げ局面とS&P500
米大統領選の年、S&P500は1929年以降で平均6.6%高
翻って足元、リーマン・ショックにつながるようなサブプライム問題などを抱えていません。人工知能(AI)ブームに沸く状況をめぐり、ITバブルとの類似性を指摘する声も聞かれますが、当時と違って高金利の状況下、AI企業が雨後の筍のように誕生しているわけでもありません。2024年のリスクには、米商業不動産や米地銀などの健全性の他、過剰貯蓄の取り崩しやクレジットカード延滞増加などの個人消費の減速は懸念材料ですが、金融危機に陥る前に、Fedが利下げを行い、流動性の危機が発生する場合、量的引き締め(QT)の終了など、対応余地があります。
2024年に未曽有の事態が発生しないとは言い切れません。また、米株相場は年末にかけ大幅高を演じただけに、年明け早々にある程度の調整が入るシナリオも視野に入ります。とはいえ、米大統領選は1929年以降、平均6.6%高というのも意識されます。過去の米株のパフォーマンスを踏まえ、2022年1月のザラ場高値4,818.62の突破を視野に入れているようです。