まるで4年前と同じ光景を見ているようです。2024年1月に実施されたアイオワ州の共和党集会において、ドナルド・トランプ前大統領が51%の支持を集め他候補を切り離し、共和党の代表に一歩近づきました。このまま共和党の候補となった折も現職のバイデン大統領と対等の勝負をするのではと予測されています。
我々は来たる2024年11月の「ドナルド・トランプの再選」に向けて、どう備えるべきなのでしょうか。
トランプ政権が1期目にやり残したことは何か
現在、アメリカが直面する最重要課題が移民問題です。アイオワ州の勝利を報じるブルームバーグ紙によると、アイオワ州の共和党員のうち4割は最も対処すべき課題に移民問題を挙げ、次点の経済問題を大きく上回りました。メキシコの国境から遠く離れた五大湖周辺のアイオワ州で移民問題がここまでの争点となるのは国境に隣接する州ではなく、アメリカ全土の課題であることがわかります。今後、更に移民問題が生活課題となる州での予備選が進めば、より「トランプなら移民問題を解決する」という声が上がってくることでしょう。
外交施策においても、トランプ氏が再選された暁には、民主党政権により方針の変化している「アメリカ・ファースト」が再び加速することは間違いないでしょう。第1期就任時の安倍内閣とは相性が高かった印象がありますが、現政権とはどうでしょうか。
加えて前任の際には勃発していなかったロシアのウクライナ侵攻やイスラエルのガザ進軍に対する対応、中国やここ数年で政治的な存在感を増しているインド・グローバルサウス諸国に対しても、現民主党政権からは方針転換が予測されます。
実際にウクライナのゼレンスキー大統領はトランプ氏の初戦勝利を受け、大統領が変わるのなら対ロシア戦線は悪化するだろうと述べたとAFPも報じています。2024年の選挙が進めば進むほど、世界中でトランプが再選したらどうなる?が進んでいくことでしょう。
あくまで筆者の印象ですが、トランプ氏の外交は発言やパフォーマンスではとても威勢の良いことを言いながら、実際は水面下で緻密な交渉を進めていく印象があります。さまざまなキャリアを有している同氏ですが、根底はTVタレントではなく、ビジネスマンなのでしょう。
トランプ氏が再選する「まで」に上昇が見込まれる領域は
トランプ氏が再選したとして、どのような銘柄や事業領域の株が買われるのでしょうか。
まず注目すべきは同氏の支持基盤です。
中所得層・低所得層を対象とする銘柄
同氏の支持基盤は富裕層よりも中所得層、および低所得層といえます。所得層によりイデオロギーで求心するのか、政策で支持を集めるのかと考えると、これらの層を顧客とするサービスには注目が集まることでしょう。安価な自動車、石油やガソリン、地域に密着した鉄道網などのインフラなどが考えられます。それらの所得層を対象とした住宅ローンや、保険関連なども推移を見守りたいところです。
トランプ氏支持者の銘柄
また、いわゆるトランプ系銘柄と呼ばれる支持者の銘柄にも注目です。ピーター・ティールやイーロン・マスクなどのトランプ支持者が関わる銘柄も注目です。気をつけたいのは、2024年3月に訪れる多くの州大会である「スーパー・チューズデー」が株価のピークなのか、共和党の候補者としての決定時なのか、または大統領選本選挙時なのかという点です。アイオワ州の51%という圧倒的勝利を考えると、3月前にほかの候補者が撤退し、事実上共和党の候補者として確定する可能性があります。投資家はまず、そのあたりを高値のピークとして見ていくべきだと考えられます。
当面過激な動きは潜めるのではないか
一方で、民主党や無党派層はもとより、共和党支持者のなかにも一定のハレーションが多いのもトランプ氏の特徴です。トランプ大統領時に副大統領を務めたマイク・ペンス氏においても、次期大統領は「礼節を持った人物を望む」と表明し、暗にトランプ氏を批判しています。前回の政権時は、高官の離職率がこれまでで最も高かったとも報じられています。
またバイデン政権下で実施された2022年の中間選挙においても、トランプ氏の支持する候補者は敗北が相次ぎました。本人に対する訴訟の問題もあります。再来するトランプブームが高まれば高まるほど、ハレーションも比例して高まっていくことは間違いありません。
この背景から、仮に大統領に当選となっても、1期目よりは堅実な運営、および発言や行動に終始するのではないかという読みもあります。X(旧Twitter)は饒舌になることに間違いはありませんが。
ある意味1年間におよぶ政治ショーである大統領選において、どの段階がトランプ氏関連株が天井を迎えるタイミングになるのか。それを考えて投資の売買時期を判断していくべきだと考えます。