ウォール街は、2024年も堅調なS&P500推移を予想
2023年は11月以降、辰年の2024年を先取りしたかのように、昇竜のような勢いで上昇しました。同年12月26日週までに、ダウをはじめS&P500、ナスダックは9週続伸を達成。年間ではダウが13.7%高、S&P500が24.2%高、ナスダック総合は43.4%高と2020年の43.6%高以来の大幅高を記録しました。2022年にナスダック総合が33.1%安、S&P500が19.4%安、ダウが8.8%安だったことを踏まえれば、前年の反動も大きかったのでしょう。
ウォール街は、2023年の始め、こうした大幅高を予想していませんでした。当時は、S&P500指数が3,725~4,200との見通しが大勢で、2023年末の終値4,769.83を概ね的中させたのは、ファンドストラットのトム・リー氏だけ。米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げもあって、いかに弱気だったかが分かります。
今年はどうかというと、ウォール街は比較的、強気派が大勢です。米金融・経済専門局CNBCが取り上げた14社のうち、2024年末見通しにつき前年末超えの予想は10社で、最も強気は2023年末の終値から9%高の5,200。2023年末見通しを的中させたファンドストラットも、同じ水準を予想しています。逆に、最も弱気はJ.P.モルガン・チェースで4,200と、2023年末の終値から12%安と、調整相場入りを見込んでいます。余談ながら、同社は2024年展望の表紙に空に舞う大量の熊を描き、話題になりました。
チャート:ウォール街の2024年末、S&P500見通し
Fedの利下げ開始は、危機発生時以外で米株高要因
J.P.モルガンの2024年末のS&P500見通しが調整相場入りを予想する一方で同社は6月からの利下げ開始、以降、年末まで連続5回の利下げを見込んでいます。ここが、他のウォール街の予想と対照的なポイントと言えるでしょう。2023年末の終値を的中させたファンドストラットのトム・リー氏は、Fedが積極的な利下げとインフレ率2%への回帰により、最も強気シナリオでは10%以上の上昇もありうると豪語します。面白いことに、トム・リー氏は元J.P.モルガンのチーフ米株ストラテジストを務めていました。
トム・リー氏を始め、一部のウォール街のストラテジストが利下げを追い風と考えるのには、理由があります。主な米株の指数は1974年以降、ITバブル崩壊やリーマン・ショックなど、未曽有の危機が発生しない限り、利下げ開始から1年後に上昇する傾向があるためです。特にナスダックとS&P500は、9勝2敗と大幅に勝ち越してきました。こうした実績を一因に、Fedの緩和策が米株相場を支える期待をウォール街にもたらしているのではないでしょうか。
チャート:米利下げ開始から1年後の、主な米株指数のリターン
2024年の米株相場、「1月効果」では不穏な影
ただし、今年は年始からS&P500が続落、ナスダックも3日続落するなど、幸先良いスタートを切ったと言えません。加えて、「1月効果」からも不穏な空気が漂います。
「1月効果」と言えば、1月の最初の5営業日、あるいは月間リターンが上昇すれば、年間リターンも上昇して終えるというものです。足元、S&P500は3営業日で2023年末から1.7%安とあって、年間リターンがマイナスに振れる可能性が出てきました。
1月効果を1950年以降でみると、1月の5営業日で上昇したのは47回、年間のリターンで上昇したのは39回で、上昇した場合の確率は83%と、非常に高いことで知られます。その一方で、2000年以降の24回をみると16勝8敗と、勝率は67%。そのうち利下げを開始した2001年、2007年、2019年を振り返ると、2001年(1月の5営業日:1.7%安、年間:13%安)と2019年(1月の5営業日:2.8%高、年間:29%高)はそれぞれ一致した半面、2007年(1月の5営業日:0.4%安、年間:3.5%高)のみ外れ、2勝1敗でした。
果たして今年、S&P500は「1月効果」を打ち破るのか、あるいは残り2営業日でカムバックを果たすのか。仮に、このまま5営業日がマイナスで終わったとしても、英語には「全てのルールに例外あり」とのことわざがあるだけに、強気派はこちらを信じるかもしれませんね。