2024年10月28日からの最終週は、アメリカのハイテク株大手の集合体「マグ7」の四半期決算が集中していました。現状の事業収益の評価に加え、「AIへのコミットメントが投資家心理を刺激する」と見込まれています。
言い換えれば数字が良くとも、投資家に対して満足な将来設計図が提供できなければ、株価が急落する可能性すら考えられます。実際に数ヶ月前、マグ7のなかでも存在感を示すNVIDIA社は、好決算に加えた成長計画を提供できないとして、時間外で株価急落の目に遭いました。
マグ7とは?
マグ7とは「マグニフィセント7」の略称で、アメリカのハイテク株の企業群を指します。経済分野に専門性を有してなくても企業の名前は聞いたことがある、世界的に有名な企業群です。2024年8月、筆者は当メディアにて、マグ7の紹介をしました。もともとは2017年に公開されたアメリカの映画のタイトルで、主人公で7人の仲間を引き連れて敵を倒すところから、ハイテク株大手7社の総称に使われるようになりました。
企業群好きな株式相場の新勢力「マグニフィセント・セブン」とは
ハイテク株の企業群としては、GAFAという言葉を聞いたことがある人も多いと思います。マグ7とGAFAの構成企業を比較してみましょう。
(マグ7とGAFAの構成企業)
個人的にはMicrosoftがなぜGAFAに含まれていないのかは不明ですが、ちょうど同社が過渡期にあった時に流行ったのがGAFAであり、タイミングの問題であると考えられます。
とはいえ株式相場はマグ7に対し、いつでも好意的というわけではありません。2024年は生成AIの勃興期といわれ、春から夏にかけてハイテク株が大きく伸長しました。ただマグ7に関しては、厳しい評価を受け株価が下落することも多くありました。いずれも知名度の高いため、個別株を購入する投資家が多い印象です。また、インデックスを中心とした投資信託には、構成銘柄にマグ7を含めるファンドがとても多くあります。今回はどうだったのでしょうか。
2024年10月のマグ7決算ウィーク
それにしても、アメリカの体制を大きく揺るがす大統領選挙と、また金融関係者が固唾を飲んで見守る11月のFOMC(連邦公開市場委員会)の前週に、影響力の高いマグ7の四半期決算が並ぶとは、なかなか投資家泣かせなことをします。
さて、10月30日(水)に先陣を切って決算が発表されたALPHABET(Google)は、前年比15%増収となりました。翌31日(木)にはMicrosoftとメタ(Facebook)が発表します。伸び悩みの決算に株価は時間外で下落し、不安感を残す印象となりました。
続く11月1日(金)にはAmazonとAppleの出番です。Amazonは時間外で株価が上昇するも、Appleは中国の売上が苦戦し株価下落となりました。NVIDIAとteslaは既に四半期決算が発表されていたため、これでマグ7の決算が揃った格好になります。全体的な感想としては、伸び悩む企業に時間外での失望売りが活発化した印象です。
「マグ7で牽引し過ぎ」の市場感
今回のマグ7の牽引を見ると、いくつかの感想を持ちます。
まず、7社という少数の会社で、許容範囲以上に「株式相場への影響を持ち過ぎているのではないか」という点です。この7社は既にアメリカ国内の企業ではありません。Appleが中国で苦戦したように、さまざまな国で展開するグローバル企業です。グローバル企業は、それだけ戦争リスクや金利リスクを受け止めます。
もう一つは、投資家の期待です。本来個別株には「コンセンサスとサプライズ」があり、決算の内容と開示情報という原理原則で評価が決まってきました。ただ、先頃のNVIDIAから今回のマグ7の発表にかけて、決算はいいけれど投資家のパンチに欠けるという評価での時間外下落が多いように感じます。ハイテク株の業界評価とも、株式相場全体の評価とも違います。「マグ7というくらいだから投資家の想像以上にやってくれるのではないか」という淡い期待です。筆者がマグ7のIR担当者なら、あまりの無理難題に悲鳴を上げてしまうのではないでしょうか。それだけ、これらの企業は社会インフラとなり、各所で存在感を示しているということです。
なお、数年後には自動運転が本格的な展開の段階に入り、新興国を中心に自動車から運転手がいなくなる、と予測されています。その基軸技術は、やはりマグ7であるNVIDIAが担っているようです。期待値はこれで天井ではなく、まだ上がり続けることでしょう。時に悲観的な決算が届けられたとしても、我々は一喜一憂することなく、次の時代の主役として評価されているものに投資している、と自信を持って見守りたいものです。