投資ビギナーのための「投資部門別売買状況」入門

株式市場のニュースで、「海外投資家が日本株を買い越した」または「売り越した」といった報道を見聞きすることはありませんか? これがなぜ話題になるのか、また、これらの結果、どのような投資判断に結びつくのか、投資を始めたばかりの方は疑問を抱くことと思います。今回の「投資ビギナーのための」入門シリーズでは、これらを理解するための「投資部門別売買状況」について、解説します。


「投資部門別売買状況」で需給を見る


株式市場は、株式のオークション会場です。株式を「買いたい」という需要側の投資家と、「売りたい」という供給側の投資家が出会い、折り合いのついたところで取引が成立。その瞬間の株価が「現在値」となります。


株価は、この需要と供給の力関係によって変動します。買注文が多ければ株価は上昇傾向になり、売注文が多ければ株価は下落傾向になります。そのため、どのような投資家が買いまたは売りの注文を出したかという情報が、投資判断の際に参考にされています。


この情報は、東京証券取引所によって、原則として毎週木曜日の取引終了後に「投資主体別売買状況」として公表されています。投資家を事業法人、金融機関、個人、海外投資家などの主体別に分けて、各投資主体が前週1週間にどれだけ株式を売ったのか買ったのかを集計したものです。


集計は個別銘柄ではなく市場全体で、東証のプライム、スタンダード、グロースのそれぞれについてと、名古屋証券取引所、さらにこれらを合計した「二市場」の売買分が集計されています。集計対象は資本金が30億円以上の証券会社から発注された取引です。集計単位は「金額」と「株数」があります。


「売り」と「買い」のそれぞれと、「買い」から「売り」を差し引いた「差し引き」も集計されています。売りが多いと「売り越し」でマイナスの値になり、買いが多ければ「買い越し」です。


日本経済新聞では、金曜日朝刊のマーケット欄に、東証が木曜日に公表した二市場の投資主体別売買代金の差引き額を掲載しています。大きな変化があったり、目立つ値になったりした場合には、記事にもなります。


2023年の株式売買代金差額(東証・名証合計、総合証券ベース)を投資部門別に見ると、個人投資家は2.92兆円の売り越し、海外投資家は3.12兆円の買い越しです。投資信託は1兆円の売り越し。投信は人気化しているものの、主に海外株式やバランス型の投信に資金が入る傾向で、じつは国内株式投信は売り越しです。目立つのは、金融機関による巨額の売り越し。信託銀行が継続的に売り越していたためです。年金基金などの利益確定売りやそれに伴うリバランスと見られているようです【グラフ1】。



海外投資家の売買動向が注目されるワケ


投資家は、株式の需給関係を見て、将来の株価の動きを予測しています。特に、海外投資家の売買状況は、多くの投資家から注目されます。みなさんも、マーケットニュースなどで「海外投資家が大幅に買い越したため、株価が上昇した」「海外投資家が大きく売り越したので株価は大幅下落」といった表現を見聞きしたことがあるでしょう。


では、各投資主体のうち、なぜ海外投資家の動向が注目されるのでしょうか。


東証の「投資主体別売買状況」では、毎週、投資主体別に売買シェアも集計・公表しています。これによると、海外投資家の売買は、東証・名証合計の6割を占めています。


一方、個人投資家の売買は、約2割。コロナ禍前は17%~18%でしたが、2021年からの3年間は取引が比較的多く、2023年は売り買いともに22%台となっています。それでも個人投資家の取引シェアは法人や金融機関よりも高く、海外投資家に次ぐ2番目です。とはいえ、海外投資家の約3分の1です。


市場へのインパクトが圧倒的なので、海外投資家が買い越せば株価は上がりやすくなり、売り越せば株価は下落しやすくなります。これが海外投資家の動向が注目される理由です。


直近10年間の海外投資家、個人投資家の動向


では、東証のWEBサイト上で確認できる、直近10年間の投資部門別売買状況から、海外投資家と個人投資家について、年単位の株式売買代金の差額を見てみましょう。【グラフ2】は、海外投資家部門です。



2022年までの海外投資家は、売り越すときには巨額で、買い越す年があったとしても1兆円に満たない規模でした。ところが2023年の買い越し額は、一気に増えて3.12兆円。最大シェアの勢力が、昨年の相場を押し上げた様子が伝わってきます。



翻って【グラフ3】は、長らく悲観的だった個人投資家部門です。「新型コロナウイルスの蔓延で、自粛生活を機に個人が投資に向かった」とよく言われていましたが、確かに2020年の売り越し額が減り、2022年までは買われています。ところが2023年は利益確定売りでしょうか。5月、6月、11月に大きく売り越し、年間で2.92兆円の売り越しとなりました。


「海外投資家が買えば個人投資家が売り、海外が売れば個人が買う」とよく言われます。さて、2024年の取引はどうなるでしょうか。


ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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