2024年から少額投資非課税制度(NISA)の内容が新しくなり、資産形成や資産運用、投資などがより身近な存在になってきました。しかし一方で、年々、金融商品や金融サービスなどに関するトラブルが増加しています。初めて投資をする人が増えると思われる今後、ますますトラブルが拡大するのではないか、心配です。
金融サービスで困ったときのための相談窓口
金融庁では、「金融サービス利用者相談室」(相談室)を設け、金融サービス等の利用者から、電話・ウェブサイト・郵送等を通じて、質問や相談、意見等を受け付けています。目的は、金融サービスを利用する人の利便性の向上や、相談室に寄せられた情報を金融行政に活用するためです。
相談室のウェブサイトには、寄せられた相談等のうち、利用者に役立つと思われる相談事例やそれらに対する金融庁からのアドバイス等が掲載されています。みなさんも、資産形成や投資などを行うにあたって、一度ご覧になると良いと思います。また、相談室の利用方法や連絡手段なども掲載されていますので、もし質問や相談、意見などがあれば、利用すると良いでしょう。
●「金融サービス利用者相談室」(金融庁)
この相談室は、専門の相談員(金融サービス相談員)が対応します。金融サービス相談員は、問題点を整理するためのアドバイスをしていますが、トラブル解決に対して直接には関与せず、あっせんなどが必要であれば、その内容に関する業界団体の紛争解決機関等を紹介します。寄せられた相談等の内容や処理状況等については、金融庁の中で、検査・監督部門が行う金融モニタリング等の参考に活用されています。
2023年の相談室受付状況
相談室に寄せられた利用者からの相談項目や件数等は、四半期ごとに公表されています。2023年10月~12月の相談室受付状況によると、3カ月間の相談等の受付件数は13,346件で、1日当たり平均219件。そのうち、質問・相談が72%、意見・要望が25%でした。相談等の方法は、電話が72%、ウェブサイトが26%となっています。
相談等の分野は金融庁が管轄する分野の多岐にわたっています。1年分を集計してみました【グラフ1】。
「預金・融資等」の相談が約4割と圧倒的ですが、「預金・融資」は相談の要因が他の分野と傾向が違います。「行政に対する要望等」が最も多く、「一般的な照会・質問」や「態勢・手続に関するもの」が他の分野より多い点が特徴です。
「保険商品」や「投資商品等」、「暗号資産(仮想通貨)」は「個別取引・契約の結果に関するもの」の相談件数が多い傾向で、「貸金等」では「一般的な照会・質問に関するもの」が多くなっています。
投資商品等や暗号資産(仮想通貨)等の相談件数が増えている
時系列に見てみると、「投資商品等」と「暗号資産(仮想通貨)等」が増えていることが気がかりです。過去2年間に相談室に寄せられた相談件数の推移を【グラフ2】に示しました。
特に2023年の増え方が心配です。「暗号資産(仮想通貨)等」に関して、2023年1月~3月の期間は相談が少なくなっていますが、金融庁が公表している資料には、その要因については特に明記されていませんでした。残念ながら減少は続かず、次の2023年4月~6月にはそれ以前の水準に戻ってしまいました。
投資詐欺の相談も増えている
また同様に、詐欺的な投資勧誘に関する情報の受付件数も増加傾向です【グラフ3】。
【グラフ2】で見てきた「投資商品等」と「暗号資産(仮想通貨)等」が増えている時期と同じようなタイミングで増加しています。
投資詐欺に関しては、独立行政法人国民生活センターにも、さまざまな手口の相談が寄せられています(『儲け話に関するトラブルにご注意!』 )。
事例としては、金融庁に登録をしていない事業者からの勧誘のほか、仲間を介して儲け話を持ち掛けるケースなどが報告されています。次回は、よくある投資詐欺の手口や詐欺を防ぐための注意点について、詳しくご紹介することにしましょう。
【参考】「金融サービス利用者相談室」(金融庁)