どうしたら良い? 信託銀行の特別口座にある「端株」

前回記事『あるはずの端株がない? 端株はどこにある?』では、信託銀行などの「特別口座」にある「端株」について説明しました。では、この端株を換金するにはどうしたら良いでしょうか。


今回は、この特別口座にある株式を換金する方法と、反対に買増しができる場合についても解説します。


特別口座の端株は現金化するか、買増して単元株にできる場合も


特別口座の端株は、現金化するほかに、買増しをして単元株にできる場合もあります。


まずは現金化。これには2つの方法があります。1つは、信託銀行などで手続きをする「買取請求」。もう1つは、証券会社の証券口座に移管をし、単元未満株として売却ができるケースです。ただし、後者の証券会社への移管は、証券会社が単元未満株の取扱いをしている必要があります。


次に買増しをする方法。これは、すべての銘柄がいつでもできるとは限りません。発行会社の判断で実施されいます。発行会社とは、その株式を発行している会社、つまり投資している銘柄の会社のことです。


では、1つひとつ説明していきましょう。


換金方法1:「買取請求」


まずは、基本となる手続きの「買取請求」です。


信託銀行などの特別口座にある端株は、証券取引所の通常の取引では売却できません。換金するには「買取請求」という制度を使います。端株として保有している株式を、発行会社に買取ってもらうのです。


ただし、発行会社に直接請求するのではなく、「株主名簿管理人」と呼ばれる、特別口座を管理している下記【表】の信託銀行などに書類を提出します。



これらのどこでも良いわけではなく、銘柄ごとに株主名簿管理人が決まっています。もし手元に株主配当金の支払通知などの封筒があれば、株主名簿管理人の連絡先が記載されていますので参照すると良いでしょう。


保有する端株の株主名簿管理人がわからない場合は、その上場会社のホームページから、「企業情報」「株主向け情報」「投資家情報」などのページに進み、「株式の手続」などと表示されている項目から調べられます。


担当している株主名簿管理人がわかったら、電話などで連絡をし、「特別口座の端株を現金化したい」と告げれば、下記のような手続方法を教えてくれます。


(1)「単元未満株式買取請求書・取次依頼書」という書類が株主に送られる

(2)「単元未満株式買取請求書・取次依頼書」に銘柄名や買取りを希望する株数、株主の住所・氏名・届出印、代金の受取り方法、等を記入し、マイナンバーや所定の本人確認書類を添えて返送する


代金の受取り方法は、「金融機関口座振込」か、「ゆうちょ銀行現金払」です。買取請求書に記入する欄がありますので、どちらかを選択します。買取価格は、書類が株主名簿管理人に届いた日の終値です。



「買取請求」の税金について


なお、買取請求によって得た利益は「譲渡所得」となり、申告分離課税の対象です。譲渡所得の計算は、「買取代金-取得費」ですが、古い端株などの場合は取得費が分からないケースもあるでしょう。


また、株式分割で得た端株の場合、取得費の計算が複雑です。親株を買った時の明細書が残されていれば、複雑であっても算出できますが、証券会社に当時の書類を請求するとなれば、その費用もかかります。最悪の場合、証券会社が手書きの帳簿から電子データに移行したり証券会社が合併したりして、顧客の古い明細が取り出せなくなっていることもあります。


譲渡所得で取得費が分からない場合は、売却代金(買取代金)の5%を「みなし取得費」とし、95%が利益とみなされます。証券会社で「特定口座・源泉徴収あり」を選択している人でも、信託銀行等の特別口座の買取請求については適用外です。


換金方法2:証券会社で単元未満株を売却


インターネット専業の証券会社などでは、単元株未満株の取引サービスを提供しています。証券会社によって「ミニ株」や「ワン株」「S株」「ポケ株」などの愛称をつけています。これらは各証券会社の独自サービスで、取扱いの有無や取引ルールなどは証券会社ごとに異なります。


このような単元未満株を取扱っている証券会社であれば、端株でも、特別口座の株式を移管できます。この手続きを「証券会社の口座への振替」と呼びます。取引証券会社や、これから取引をしたい証券会社で、特別口座の端株を証券会社に振替えられるかどうかを尋ねてみると良いでしょう。


通常、取扱可能な証券会社の場合は、単元未満株の買付・売却ができる証券会社ですので、振替後は単元未満株として売却可能です。上記の通り、証券会社の独自サービスですので、取引ルールは証券会社ごとに異なります。


また、特別口座から証券会社へは、一般口座への振替です。特定口座や少額投資非課税制度(NISA)の口座には入れられません。売却時の税金は、買取請求と同様、申告分離課税となります。


なお、証券会社のなかには、「特別口座の買取請求を代行する」という表現で、端株を取扱うケースもありますが、これは先に説明した換金方法1の買取請求を代行するということです。それならば、証券会社に振替をせずに信託銀行等に直接手続きをしたほうがスムーズかと思われます。


買増しをして単元株にするチャンスがあるかも?


発行会社の判断で、「買増請求」ができる場合もあります。端株の株主が、単元株に達するまでの株数を時価で買い増す制度です。


買い増しできるのは、発行会社が買増制度を採用している場合に限られます。期間限定で実施されることもあります。ただし、買増制度を実施している銘柄でも、決算日などの株主確定日の直前の一定期間には、取扱いを一時停止します。


買増請求の手続きは、買取請求と同様、まずは上記【表】の株主名簿管理人に電話で問い合わせましょう。すると「買増請求取次依頼書」が株主に送られてきます。必要事項を記入し、時価に準じて計算される「買増概算金」を納めて購入。単元株になったら証券会社に振替えると、通常の単元株と同じ取引ができる状態になります。


注意点は、保有する端株の銘柄が買増請求制度を実施しているかどうかです。まずは上記【表】の株主名簿管理人に問い合わせをしてみると良いでしょう。


まとめ


このように、特別口座に端株を持っている人が採れる方法は、一般的には下記の選択肢となります。


●「買取請求」で換金する

●取扱可能な証券会社に振替(その後は保有も、売却も可)

●「買増請求」で単位株にする(その後は証券会社に移管すると通常の取引が可能)


単元株を売却するには、電話一本またはネットで操作するだけですが、特別口座の手続は書類の提出等が必要で、手間や日数がかかります。終活の1つとして、古い端株をお持ちの方が処分しようと動いているのも分かるような気がします。次回は、特別口座に端株を置いたまま死亡した場合、相続人がどのような手続きをするかについて解説します。


ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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