4月の食品値上げ2800品目超 6カ月ぶり値上げラッシュの要因

帝国データバンクは3月29日、主要食品メーカー195社の価格改定動向調査を発表しました。同調査によると、2024年4月は2806品目が値上げされることとなり、2023年10月以来6カ月ぶりに2000品目を超えたもようです。


前年同月である2023年4月の5404品目に比べると値上げの数自体は減ったものの、それだけ値上げがあった水準からさらに物価の上昇が続いているということでもあります。前述したようにここ6カ月ほどは2000品目を超える値上げはなく、ある種の「値上げ疲れ」ともいうべき状況が続いていました。それでも4月にこれだけの数の値上げが実施されたということは、原材料費や人件費、物流費の高騰を受け、価格に転嫁せざるえない状況になっているということでしょう。


値上げの品目数についての推移を見てもそれがわかります。同調査が開始された2022年7月からの数値を見ると、1カ月当たりの値上げ品目数の平均は2022年が4294品目。2023年2699品目。それに対し2024年は1377品目に留まっています。





値上げの品目数についての推移(帝国データバンク公表データをもとにDZHFR作成)


値上げラッシュ当初の2022年の数が特に多いのは自然なこととして、2023年も平均して毎月2700品目近い数の食品が値上げされていました。それに比べると足もとの値上げペースは鈍化しているとの印象も受けますが、値上げ率平均を見てみると2022年の14%、2023年の15%に対し、2024年はここまで19%と突出して高くなっています。


その要因については、2024年は前年の2023年に比べて人件費や物流費の増加、円安水準の長期化などが影響しているもようです。同調査によれば、既に実施されたものに加え、2024年7月までに予定されてる値上げの要因について「円安」と回答したものが29.4%、「人件費」が同24.4%となり、2023年同期を大幅に上回る水準となりました。


なかでも「人件費」では、最低賃金の上昇以外にベースアップなど賃上げ由来の要因も出始めています。連合が3月15日発表した2024年春闘の1次集計では、基本給を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給(定昇)を合わせた賃上げ率が平均で5.28%(前年同期比1.48pt上昇)となり、33年ぶりに5%を超えたことが話題となりました。こうした賃上げの流れが今後も継続すれば、食品だけでなくあらゆるものについて値上げの流れが加速していくことでしょう。


また、昨今ではオリーブオイルやカカオ豆などが、天候不順を要因とした不作により、価格が急騰する場面がみられています。原材料高による値上げは2024年に入りやや落ち着き、前年同期を下回る水準となっていましたが、今後は再び価格に転嫁せざるを得ない局面が訪れそうです。


今後の見通しについてですが、前述したように人件費や原材料価格の上昇などから、コスト増を吸収するための値上げが増えてくると予想します。加えて、「2024年問題」に関連した物流費の増加に伴う値上げも見落とせない要因となります。


とはいえ、毎月勤労統計では、いまだに名目賃金から物価変動の影響を差し引いて算出する実質賃金は22カ月連続でマイナスが続いています。家計の消費支出に占める食費の割合を示す「エンゲル係数」は2023年には27.8%に達し、約40年ぶりの高水準にまで上昇しているとの指摘もあり、消費者がどこまで値上げを受け入れられるかは不透明な部分が残ります。


値上げではなく内容量の削減などで対応するメーカーも少なくないほか、小売店も独自に割引などを実施するなど、客足を引き留めようとする努力を継続しているようです。賃金と物価の上昇の好循環を維持し、本当の意味でデフレ脱却がなるかについては、今後の企業と消費者、双方の意識や取り組みにかかっているでしょう。


日本株情報部 アナリスト

斎藤 裕昭

経済誌、株式情報誌の記者を経て2019年に入社。 幅広い企業への取材経験をもとに、個別株を中心としたニュース配信を担当。

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