新NISAの影響は? 2023年度のiDeCo加入者状況
2023年までのNISA(少額投資非課税制度)は、非課税の期限があったため、「老後資金はiDeCo(イデコ=個人型確定拠出年金)、リタイア前に使うかもしれない資金はNISA」という棲み分けができていました。
そこへNISAの改正。2024年からは非課税期間が一生続くようになりました。NISAでも老後を見据えた資産形成ができるようになったわけです。
iDeCoの加入者は約328万人、約2割増
新しいNISAの概要が公表されて以後、金融業界は「NISA祭り」といった様相にで、iDeCoは影が薄くなってしまった感もありました。国民年金基金連合会(国基連)「2024年3月末のiDeCoの加入者等の概況」によると、2023年度に新しくiDeCoに加入した人数は、前年度の約8割である452,202人でした。
月別で見ると、2023年4月から2024年1月までは、新規加入者数が前年同月の約6割~9割弱と低迷していました。ところが2月、3月になると急増。2月は前年比11.7%増、3月は3.3%増となりました。「NISA祭り」の刺激を受けたのかどうか、iDeCoにも関心が寄せられたようです。
加入者全体の人数は、2024年3月末時点で3,284,971人。2023年3月末に比べて21.4%増えています。加入者区分による内訳は、【グラフ1】の通りです。
第1号加入者は、国民年金保険制度の第1号被保険者。自営業などの人です。第2号加入者は、民間企業の従業員や公務員など。第3号加入者は専業主婦(夫)や配偶者の扶養内で働いている人などです。第4号加入者は、海外居住や60歳以上65歳未満で国民年金に任意加入し、iDeCoに加入している人です。
【グラフ1】を見ると、企業年金制度のない職場に勤めている人が加入者の約半数を占めています。中小企業などの従業員にとって、老後の生活を支える重要な制度といえるでしょう。
会社員のiDeCo加入者が増加
次は、区分別にiDeCoの加入者数の推移を見てみましょう【グラフ2】。
2023年度に加入者数の増加率が最も高かったのは、第2号加入者のうち他の企業年金制度がある会社の従業員で、前年比22.7%増です。2022年10月の制度改正が増加を後押ししたと考えられます。それまでは、民間企業の従業員の中には、企業型確定拠出年金の規約の定めによってiDeCoに入れなかった人もいたのです。これらの人が、改正によりiDeCoに加入できるようになりました。ただし、企業型のマッチング拠出を行なっている人は、改正後もiDeCoに加入できません。
なお、2022年5月1日からは、iDeCoに加入できる年齢の要件が広がっています。それまでは企業型・個人型ともに、確定拠出年金に加入できるのは60歳未満の人でした。改正により、国民年金の第1号加入者(自営業者等)および第3号加入者(専業主婦(夫)等)は、国民年金に任意加入すれば、65歳未満までiDeCoに加入可能になったのです。海外居住者も、20歳以上65歳未満であればiDeCoに加入できるようになりました。これらの人たちは、前述した「第4号加入者」に区分されています。
今後は、2024年12月1日からの改正を控えています。他の企業年金制度がある会社の従業員と公務員のiDeCoの拠出限度額が増額されます。現在は月額1.2万円までですが、月額2万円までに引き上げられます。ただし、企業年金の掛金との合計5.5万円が上限です。
「リタイアしても引き出さずに運用中」という人は91万人
2024年3月末時点の運用指図者は、912,784人で9.7%増。運用指図者とは、掛金の拠出をせずに、以前の拠出分を運用している人です。リタイア年齢に達して拠出を終えた人や、国民年金の被保険者の資格を失った人などが該当します。
2022年4月1日から、老齢給付金の受取開始時期が75歳までに拡大されました。拠出を終えてから受け取り始めるまでの間、選択により、10年程度は年金資産を運用できます。今後も、高齢期の就業率の高まりとともに、運用指図者は増えることでしょう。
一方で、気になるのは自動移管者です。1,286,955人(うち4割強は資産がなく記録だけを管理している人)で8.8%増えました。自動移管者とは、企業型確定拠出年金の加入者でなくなってから半年以内に移換等の手続きをしなかった人です。企業型の資産や記録が、国民年金基金連合会に自動的に移換されています。
自動移管者の資産は、運用の指図ができずに現金で保管されています。それでも、管理手数料は毎月52円(税込)が引かれます。iDeCoや企業型に移す場合も手数料(税込1,100円)はかかりますが、その後の運用ができるので、iDeCoや再就職先の企業型確定拠出年金に移管することをお勧めします。
iDeCoの掛金平均額は、自営業2.8万円、会社員は1.1~1.7万円
最後に、iDeCoに加入している人が毎月救出している掛金の平均額をご紹介しましょう【表】。
個人事業主やフリーランサー(第1号加入者)、第2号加入者のうち企業年金の制度がない職場に勤めている人は、企業年金のある会社員に比べると、より自助努力が必要となります。そのため拠出限度額が高くなっており、加入者の平均額を見ても、他の区分より多くなっています。
企業型は事業主が掛金を拠出するのに対し、iDeCoでは加入者自身が拠出します。iDeCoの掛金は月々5,000円以上1,000円単位。毎月ではなく、年1回以上の加入者自身が決めた月に、まとめて拠出することもできます。また掛金額は、1年に1回、変更できます。状況に応じて、無理のない金額で老後の生活資金を準備できるようになっています。
iDeCoの運用資産は、60歳以降にならないと換金できません。そのため、現役時代に必要な生活資金は別に確保する必要があります。月々の掛金も、生活に支障がない、無理のない金額で拠出額を決めることが大切です。
【参考】