「おむすび」に見る平成が回帰の対象になる時代と投資

日本初の女性弁護士の人生を描いている令和6年前期のNHK朝ドラ「虎に翼」に続いて、同年9月から後期の物語として「おむすび」が放送されます。この話は平成を「ギャル」として過ごした女性主人公が成長し、栄養士となる物語です。主役を演じるのは、紅白歌合戦の司会を務める橋本環奈さんです。


さて、本記事の読者は平成どころか、昭和生まれの方も多いでしょう。筆者も1982年(昭和57年)生まれのため、平成世代ではありません。日常生活のなかで、少しずつ年上感を感じる機会も増えてきました。


現時点は令和6年、西暦で2024年は平成36年に該当します。なお、2024年を同様に昭和で計算すると、昭和99年です。ちょうど100年を目前にしたタイミングなのですね。昭和の治世下に生じたさまざまな出来事や流行語から何年経過したかを計算するのに、とても計算しやすい頃合いといえるでしょう。



「失われた30年の技術革新」をテーマに掲げた新プロジェクトX

「おむすび」と同様、2024年春に開始したNHKの番組に「新・プロジェクトX」があります。以前放送されていた同テーマの番組は、日本が高度経済成長を迎えていたもと、開発された様々なサービスを取り扱っていました。青函トンネルや黒部ダム、瀬戸大橋などが印象に残っているのも、日本がインフラ構築に邁進した時代背景を感じます。


一方ここまでの「新」では東京スカイツリーや限界集落、EV(電気自動車)といった、まさに平成を代表するテーマが並びます。


ここから考えさせられるのは、平成は既にリアルタイムではなく、少し昔という「回帰の対象」ではないのかという点です。個人投資家が投資先を決める際、前例の無いまったく新しいものに投資する場合もありますが、昔見たような景色や流行を改めて見直す場合もあります。


平成の「ギャル」

本記事で紹介したNHK朝ドラ「おむすび」の主人公は平成時代のギャルの設定です。ルーズソックスなどの流行に加え、主に都市部における消費購買力は大きな社会の牽引力となりました。大流行した1990年代に10代だった当事者は2024年現在40代から50代で、社会の中心的な役割を担うようになった方も多いです。


2021年頃から「平成レトロブーム」が到来し、ルーズソックスが再注目されています。インターネットで検索すると、現在進行形で商品を購入することもできます。朝ドラにこのテーマが起用されたのは、この再流行の背景があるのかもしれません。



平成と東京ドーム

昭和の時代に建築された建物は平成・令和を通して、時に伝統、また時に不動産価値の目減りした資産として扱われてきました。同様に平成から約40年とすると、これから平成のなかで建築された建造物も同様の評価になっていきます。鉄骨造(S造)の法定耐用年数は34年です。建築物としての寿命は別物ですが、経費算入ができなくなるタイミングで、建て替えという意思決定をされる機会もこれから多くなるでしょう。


代表的な建物があります。1988年(昭和63年)、まさに平成がはじまる前年に建築された東京文京区の「東京ドーム」は、しばらくして「これは東京ドーム〇個分」という比較に用いられるほど、平成を代表する建築物になりました。2024年、流通市場の移転した中央区の築地に全天候型のスタジアムを建設するという話が持ち上がっています。東京ドームの廃止に繋がることが決定したわけではありませんが、「昔は東京ドーム何個分と例えていた」と回帰される時代が到来するのかもしれません。なお、この例えを用いている大半の方が、東京ドームの建築面積を記憶していないという点も、とても印象的です。


社会維持やサステナビリティの起点

それまでの大量生産・大量消費の時代から、環境や持続可能性を前提としたサステナビリティの考え方が生まれたのも平成です。令和以後の社会は、これらの考え方がより当然のものとなっていくでしょう。NHKで扱われたEVも含め、平成に形成された社会がどのように再デザインされていくのか、注視したいものです。このテーマは回帰よりも、これから大きく推進された考え方の「起点」として平成の社会がありました。


次の「平成の回帰」に何が来るかを考え、先回り投資をしたい

そんななかでの投資行動としては、これから「平成の回帰」に何が来るかを考え、先回りして投資したいところです。今回取り上げた要素のほかにも、平成を代表するテーマはいくつもあります。ギャルのところでも取り上げましたが、当時学生だった人たちが社会に出て、今は立派な意思決定者です。そう考えると心なしか、CMで平成のあいだによく耳にした流行歌が再び取り上げられていることにも気が付きます。


「おむすび」や今後の「プロジェクトX」に取り上げられたテーマが、次の投資の主役として最右翼の存在なのかもしれません。


独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

株式会社FP-MYS 代表取締役 1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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