JR東日本の株価はなぜ上がらないのか?今後の動向について予測してみる

JR東日本はコロナ禍の影響を受けて2021年に業績は赤字に転落しましたが、外出自粛が解除された2023年には黒字化しました。しかし、知名度や事業規模とは裏腹に、なかなかコロナ流行前の株価水準に戻らないのが実情です。


本記事では、JR東日本の株価が上がらない原因や今後の動向について解説します。


JR東日本(9020)の基本情報

JR東日本は正式名称を「東日本旅客鉄道」といい、関東・東北地方全域と、新潟・山形・長野・静岡県の一部を営業区画とするJRグループ最大規模の企業です。こちらでは「事業概要」と「業績」に分けて、解説します。


事業概要

JR東日本は多岐にわたり事業展開しており、大きく分けて4つのセグメントに分けられます。


・運輸事業

・流通・サービス事業

・不動産・ホテル事業

・その他


 

画像引用元:マネックス証券


主力である運輸事業は鉄道・モノレール・バス運営サービスを提供する事業です。1日の利用者数が多い山手線を中心とした在来線や、東北新幹線・上越新幹線などが収益の柱です。


不動産・ホテル事業では駅近くの複合施設である「アトレ」や「ルミネ」などを展開。他にも「WATERS takeshiba」(東京)や「JR仙台イーストゲートビル」(宮城)などの新規解説によって収益を増やしています。


流通・サービス事業ではエキナカ商業施設「グランスタ東京」や「グラントウキョウタワー」「JR新宿ミライナタワー」などを展開しています。他にも、広告掲載により収益を上げていました。


上記運輸事業や駅ビル・ホテル以外の事業として、Suica利用の拡大や海外鉄道プロジェクトの進出によって全体の8.4%ほどの売上を出しています。


業績

JR東日本の業績は以下のグラフを参考にしてみてください。


 

画像引用元:マネックス証券


2019年までは売上高と営業利益は徐々に増加していました。しかし、2021年に入ると新型コロナウイルスによる外出自粛とリモートワーク推奨の社会情勢から、主力である運輸事業の業績が大幅に悪化し赤字に転落しています。


2022年以降は徐々に業績を戻してきており、2023年にはコロナ5類移行にともない外出制限が解除され、鉄道利用客が大幅に増えて黒字化。2024年から2025年にかけても増収・増益の見込みです。


JR東日本の株価はなぜ上がらないのか?

JR東日本の直近5年間における株価の推移は以下グラフのとおりです。(2024年3月末以前は株式分割後の株価を反映)


 

参照:Traging View


2018~2020年の株価は、3300~3700円前後で推移していました。2020年は新型コロナウイルスの流行による悪材料をもとに大幅に下落。2023年に業績が黒字化したあと徐々に上がり、2024年1月に株式分割のニュースを受けて3,000円まで上昇しましたが、その後は停滞を続けています。


株価が上がらない理由は、大きく分けて以下2つが予想されます。


・運輸事業の売上がコロナ前の水準を大きく超えないと予想されるから

・運輸以外の事業売上が思ったほど伸びていないから


運輸事業の売上がコロナ前の水準を大きく超えないと予想されるから

コロナ前の2019年と2024年3月期売上高について、決算資料を参考にすると以下の数字でした。


・2019年3月期:20,381億円

・2024年3月期:18,536億円

・2028年3月期:20,190億円(目標値)


外出自粛は解除されているものの、リモートワークを採用する企業は以前より増えているため、運輸事業の売上が戻るのは時間がかかると予想されます。


また訪日外国人客によるインバウンド需要も、以下画像のとおり運輸業に与える影響は少ない傾向です。


 

画像引用元:2024年月期決算および経営戦略 説明資料|JR東日本


したがって、内需を要因とした運輸事業の売上がコロナ前の水準を大きく超えるとは予想しづらく、株価の上昇材料とならなかったと判断します。


運輸以外の事業売上が思ったほど伸びていないから

運輸以外の売上高について、2019年と比較した結果は以下のとおりです。

不動産・ホテル事業はインバウンド需要も含めて業績は好調です。しかし、流通サービス事業はコロナ禍による影響で大きく売上を減らしたため、2019年の水準には戻っていません。


流通・サービス事業がコロナ前の水準に戻るかどうかは、海外展開を含めた事業戦略が重要になりそうです。



JR東日本の今後の株価はどうなる?

JR東日本の業績は回復傾向であり、インバウンド需要による不動産・ホテル事業の伸びと合わせてプラス材料といえます。


また、新型コロナウイルスによる外出自粛の期間で悪材料は出尽くした印象もあり、大きくマイナスに動くとは予想しにくいです。また国内で展開した鉄道運営や駅ビルの管理・運営ノウハウは、海外展開する際にも大きな武器となります。


今後は海外ビジネスを中心に事業拡大していけたら、大きな株価アップも期待できるかもしれません。


今後のJR東日本の動向に注目してみてください。


独立系ファイナンシャルプランナー

藤崎 竜也

「独立系ファイナンシャルプランナーとして執筆業を中心に活動中。2019年から教育資金や老後資金を蓄えるために投資を始める。実体験をもとに、専門用語をわかりやすく解説するのが得意。2級ファイナンシャル・プランニング技能士資格を取得し、現在は金融ジャンル(資産運用・投資・不動産・保険)をメインに執筆している。

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