米オープンAIの生成AI「ChatGPT(チャットGPT)」の登場から数年が経ちました。今ではアンソロピックの「Claude(クロード)」、グーグルの「Gemini(ジェミニ)」、コーディング向けAI「Cursor(カーソル)」、AI検索エンジン「Genspark(ジェンスパーク)」など、それぞれの強みを持ったAIが多種多様に存在します。
筆者も日々AIをうまく使いこなせるよう勉強中ですが、普及と進化の速さには驚きを隠せません。生成AIブームは一過性の話題にとどまらず、株式市場における息の長い投資テーマへと姿を変えました。注目したいのは、物色の対象が時間の経過とともに次々と移り変わり、そのすそ野が驚くほどの広がりを見せている点です。
そうなると、この流れの先で次に足りなくなるものは何なのか、これまでの軌跡を振り返りながら、AI投資の次の矛先を探ってみようと思います。
AI相場の変遷
AI開発にはGPUと呼ばれる画像処理半導体が向いているため、最初に盛り上がったのはエヌビディアでした。GPUを受託製造する台湾TSMCが生産能力増強の巨額投資を実施することで、真っ先に買われたのは半導体製造装置の関連銘柄です。キオクシアが今ほど盛り上がっていない時期、日本株をけん引していたのはアドバンテストやディスコ、東京エレクトロンなどでした。
AIの処理を行うのはデータセンターです。電力を運び信号を伝える電線・ケーブルメーカーにも光が当たり、実際にフジクラなどの業績は急拡大することとなりました。次に脚光を浴びたのがメモリーです。生成AIの学習・推論には大容量かつ広帯域のメモリーが欠かせず、サンディスク、マイクロン・テクノロジーキオクシア、サムスン、SKハイニックスなどのメモリー関連銘柄が相場を一段と押し上げたのは記憶に新しいところです。
さらに物色は、セラミックコンデンサ(MLCC)をはじめとする電子部品へと拡大していきます。高性能なAIサーバーには膨大な数の受動部品が搭載されるため、これまで地味な存在とされてきた部品メーカーにも力強い追い風が吹きました。
次に足りなくなるものは何か?
すそ野がここまで広がりましたが、次のボトルネックはどこへ移るのでしょうか。ここで鍵を握るのが、半導体や部品といった「製品」ではなく、それらを支える「物理的な資源」の制約です。何が足りなくなるかがあるのか考えてみると、例えば以下の3つが考えられます。
(1)シリコンウエハー
GPUやメモリーといった半導体の生産量を増やそうにも、その土台となるシリコンウエハーの供給が追いつかなければ意味がありません。とりわけ最先端ロジックや高性能メモリーで使われる300ミリメートルウエハーは、増産に多額の設備投資と長いリードタイムを要します。
また、増産投資はウエハーの需給緩和(価格下落)にもつながりますので、各社は今のところ大規模投資には踏み切っていません。需要拡大の局面では、ウエハーそのものが新たな需給逼迫の震源となる可能性があります。

(2)電力
AIデータセンターの消費電力は桁違いです。米調査会社によれば、世界のデータセンターが2026年に消費する電力量は565テラワットアワー(TWh 前年比26%増)になる見通しとのこと。規模感が分かりづらいですが、日本の消費電力量が年間1000 TWh程度です。日本が消費する電力量のおおよそ半分がAIデータセンターで消費されることになり、今後データセンター数が増えればさらに増加します。
このように電力を爆食いするAIデータセンターを維持するには発電量の増加が必須ですが、発電量を増やすと温室効果ガスの排出も招きます。世界的に原子力発電へ回帰しつつあるのも、AI需要と気候変動リスクに対応するためであることが大きいです。昨今の中東情勢悪化により、化石燃料に頼らないクリーンエネルギー(太陽光や洋上風力など)の注目度も再び高まりました。
一方、脱炭素とは言っても火力発電をなくすことは非現実的。CO2排出が少ない高効率技術の採用が進んでおり、今後も重要な発電手段になります。電気を無駄にしないための系統用蓄電池も注目されるテーマです。

(3)データセンター維持
大規模データセンターはサーバーを冷却するために膨大な量の水を消費する場合があります。マイクロソフトやグーグルといったハイパースケーラーはデータセンターにおける水の利用について細かく説明していますが、世界中のあらゆるデータセンターが同じとは限りません。
今後の気候変動次第では空冷で対応できず水を多用する可能性もあり、かつデータセンター数は今後減るよりも大幅に増える方向です。水資源や温暖化への警鐘が鳴らされているなか、どのようにデータセンターを冷却・維持するのか、地味かもしれませんが重要な投資テーマになるかもしれません。

次のテーマ探し
AI投資の本質は、爆発的に膨らむ需要に対して「何が供給のボトルネックになるか」を先回りして見極めることにあります。今でこそ勢いのある銘柄も、いずれは失速してほかの銘柄に注目が移る可能性が高いでしょう。次のボトルネックは何か、常に探し続けることがAI相場に乗り続けるために大切な姿勢と言えそうです。





