昨今の株式市場はAIラリーが強まっており、半導体株など一部の銘柄に資金が集中しています。今年最も人気だった銘柄と言えば、おそらく満場一致でキオクシアホールディングスになると思います。
ソフトバンクグループやフジクラなども常に売買代金ランキングの上位にいます。この波に乗るしかないという状況のためか、数えられる程度の銘柄に多くの投資家が集まっているので他の銘柄に資金が回っていません。
このような解説はよく聞きますが、今回はデータを基にキオクシアなど人気銘柄の動向とTOPIX(東証プライム全体)の関係について調査してみることにします。
売買代金の比較
どの銘柄にどれだけ取引されているのは売買代金を見ればわかりますので、個別銘柄と売買代金とTOPIXの売買代金を見ていきましょう。今回取り上げる個別銘柄はキオクシアホールディングス、ソフトバンクグループ、フジクラ、古河電気工業、アドバンテストの5社です。

※売買代金の単位は兆円
上のグラフを見てわかるように、5社を合計した売買代金のシェアは4~5月に大きく増加していることがわかります。5社のシェアが急低下している場面もありますが、これは最も売買代金が大きいキオクシアがその日にストップ高買い気配となっているためです。
特別買い気配の状態では売買が行われず気配値のみが変わっているので、売買代金が増えません。このためシェアが急低下しました。ちなみに、キオクシア1社だけでみた売買代金シェアは以下のようになります。

今年に入って最も売買代金シェアが高かったのはなんと5月21日の29%でした。プライム市場で売買された株のうち、おおよそ3分の1がキオクシアに集中していたということになります。TOPIX自体の売買代金も増えてはいますが、キオクシアによる押し上げ効果が大きいと言えます。
AIラリーの恩恵を受けづらいTOPIX
このところニュースでは日経平均が史上最高値を更新したとよく流れていますが、個人投資家の中では「自分が持っている銘柄は全然上がっていない、むしろ下がっている」という事例が多く見受けられます。
現状では、急落リスクを覚悟で半導体株を買っている人が儲かっている状況です。非AI株は放置されており、むしろAIラリーに乗るための資金作りを口実に売られている可能性すらあります。
個人投資家といっても積極的に売買している人だけでなく、配当狙いの人、株主優待狙いの人など属性はさまざまです。配当利回りや株主優待が目的となると、必然的に非AI株で探すことになるので、今回のような自分の持っている銘柄は上がらない現象がより顕著になっていると言えるでしょう。
プライム市場全体を表すTOPIXも日経平均同様に上昇傾向にはありますが、日経平均の方が圧倒的に強い状況です。これは指数への影響度が大きい銘柄が異なるためで、TOPIXは時価総額重視、日経平均は株価重視であることが関わります。

※TOPIXは26年3月末時点 日経平均は26年5月26日時点
TOPIXは上位10社で22%程度のため、比較的幅広い銘柄の上下を反映します。一方で日経平均は上位10社で指数の値動きの半分を握るので、現状では特に1位~4位の影響が非常に大きいことがわかります。
ちなみに、今の日経平均ではキオクシアがストップ高になったとしても、ソフトバンクGやアドバンテストの数%高と同じ程度の影響しかありません。さらに、TOPIXに対するキオクシアのウエイトは0.24%(26年3月末時点)なので、単体の影響はほぼないに等しいと言えます。
キオクシアとTOPIXの比較
最後にキオクシアとTOPIXの値動きを比較してみます。

※終値ベースで25年12月末を1000として指数化 26年5月26日まで
このようにキオクシアが異次元の上昇率だったのでTOPIXがほぼ横ばいに見えますが、一応TOPIXも今年は15%ほど上昇しています。中東リスクがありつつも株高局面ではあったため、全体でならしてみればTOPIXも上昇しています。
なお、キオクシアとTOPIXの相関性を見ると以下のようになりました。

今年が始まって約5カ月間、割合に直すと同じ値動きは55%、別々の動きは45%と言う結果が出てきました。TOPIXとの相関性が高いほど同じ値動きとなる日が多くなるため、今回の検証ではキオクシアとTOPIXの相関性は高くないと言えます。
94営業日の間で上昇した日、下落した日をカウントすると以下のようになりました。

キオクシア、TOPIXともに上昇した回数と下落した回数に大きな差はありません。キオクシアが飛びぬけた値上がり率となったのは、ストップ高となるなど急騰を繰り返した結果と言えます。
キオクシアを含めて売買代金の多くを占めていた銘柄群の商いが落ち着けば、これまで資金流入に乏しかったところにも物色の矛先が向かう可能性があります。とはいっても、仮に人気銘柄が急落することとなれば、関係なさそうな株もつれ安することはよくあります。いずれTOPIX優位の相場が来るとは思いますが、それまでの間に一波乱あるかもしれないことはリスクとして押さえておきたいところです。





