深セン証券取引所の主要銘柄(中編):「美的」と言ったら美容雑誌?・・・ではありません

前回、深セン証券取引所の主要銘柄(前編)では、深セン証券取引所メインボードの時価総額上位銘柄のうち、白酒の宜賓五糧液(000858)と電気自動車のBYD(002594)の2銘柄を紹介しました。深セン市場にはこのほかにも魅力的な企業がたくさん上場しています。今回はこのほかの主力銘柄を紹介していきます。



深セン市場の時価総額3位は白物家電大手の美的集団



深セン市場の時価総額3位は家電大手の美的集団(000333)です。冷蔵庫や洗濯機、エアコンなど白物家電の製造を手掛け、中国のハイアール(海爾)に次ぐ世界2位の家電メーカーとして知られています。

 

現在の大株主である何享健氏が1968年、町内会の住民23人を率いて創業したのが始まりです。創業の目的は住民の働き口の確保でした。当初はガラス瓶やプラスチック製の瓶蓋などを作っていましたが、鄧小平氏が主導した改革開放を転機として、1980年に扇風機の製造で家電事業に進出。その後、エアコンや冷蔵庫などに事業を拡大し、2016年には東芝の白物家電事業(東芝ライフスタイル)を買収しています。

 

日本で「美的」というと、「美容雑誌でしょ?」という返事が返ってきそうですが、「TOSHIBA」ブランドの白物家電事業は、実はこの美的集団の傘下で運営しているのです。「美的」というブランド名が直接出てこないため日本での知名度はほとんどありませんが、日本でも同社の製品が大活躍しているのです。

 

2017年には産業用ロボットの世界的大手である独クーカを買収し、日本が特に強いこの分野でも世界4強の一角を占めています。

 

時価総額5位は養豚最大手の牧原食品

 

(出所:牧原食品のホームページ

 

時価総額5位は河南省で養豚事業を手掛ける牧原食品(002714)です。河南省を拠点に飼料の生産から母豚への種付け、肉豚の飼育、そして豚肉の処理・加工までの川上事業を行っています。


河南農業大学で畜産学を学んだ秦英林会長が地元にUターンし、夫婦で立ち上げた会社で、今年でちょうど創業30周年。最初はわずか22頭の豚の飼育から始め、苦労の末に中国最大の養豚企業に育て上げました。

 

2021年の肉豚出荷頭数は4026万頭(ニッポンハムの約67倍)で、国内シェアは約6%となっています。養豚業界は小規模業者が乱立しているため、上位5社のシェアは合計でも13%しかありません。食の安全に対する基準が高まるなか、今後はM&Aによる小規模業者の買収が加速するかもしれません。

 

ちなみに、秦会長の息子の名前は「秦牧原」といい、会社名を息子の名前にもつけています。会社名に創業者の名前を冠するケースはたまに見かけますが、子供の名前と同じというケースはほとんど見かけません。会社に不祥事があれば子供に迷惑がかかり、また逆のケースもあり得ます。会社も子供も同じように大事に育てたいという決意の表れかもしれません。

 

 

時価総額6位は監視カメラ世界最大手の杭州海康威視数字技術



時価総額6位は監視カメラで世界最大手の杭州海康威視数字技術(002415)です。監視カメラの製造と人工知能(AI)を利用した画像分析システムに強みを持ち、a&sが発表している「世界セキュリティ企業上位50社」のランキングでダントツ1位の企業です。漢字社名だと読みにくいので、英語社名の「Hikvisoin(ハイクビジョン)」で覚えた方がいいかもしれません。


 

2001年に杭州で創業し、当初はアナログ製品を中心に製造していましたが、2010年ごろからネットワーク製品に力を入れ始め、現在はホームセキュリティー機器やロボット、サーマルイメージング、カーエレクトロニクス、ストレージなどへと製品の幅を広げています。

 

米国から制裁を受けているため、同社の名前は新聞にたびたび登場してきます。ネガティブな話題が多いのも事実ですが、世界シェアが示すように製品の技術力は折り紙つきです。実は日本でも代理店を通じて同社製品が販売されています。東京、大阪、金沢に同社製品を展示したショールームがありますので、興味のある方は覗いてみてはいかがでしょうか。


次回は深セン市場の主要銘柄の残りを紹介していきます。お楽しみに。


▼参考

深セン証券取引所の主要銘柄(前編):時価総額1位の会社は意外なギネス記録も

 

中国株情報部 部長兼編集長

池ヶ谷 典志

立命館大学卒業後、1997年に北京の首都経済貿易大学に留学。 北京では中国国有の大手新聞社などに勤務し、中国の政治、経済、社会記事などを幅広く執筆。 帰国後の2004年にT&Cトランスリンク(現DZHフィナンシャルリサーチ)入社。 現地での豊富な経験や人脈を生かして積極的に中国企業や政府機関などへの取材を行ない、中国企業の調査・分析を行なっている。

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