「政権与党過半数割れ」をどのように読み取るべきか

2024年10月27日、衆議院議員選挙(総選挙)が実施されました。現政権の発足以来8日後の解散、26日後の投開票は戦後最短となります。総選挙という国民の信を問うことが優先すべきなのか、与野党で時間をかけた議論が優先なのかという天秤のなか、前者を選んだ現政権への信任性も問われる直接選挙となりました。


「政権与党過半数割れ」とはどのような状態か

20時、NHKの速報は「政権与党で過半数割れ微妙、自民党単独で過半数割れ確実」と報じました。一夜明けて、最終結果が判明しました。政権与党の大敗北といっても過言ではないでしょう。



数字上は、政権与党で過半数の233を確保していないと、政権維持ができません。よって今回の結果は、「政権与党で過半数割れ」という結論になります。


政治の世界でのパワーバランスは言及しないとして、この記事を読む投資家の方々には、結局これからの政策はどうなるのか?という疑問が生じていることと思います。まず、あらためて各種政策が進む前に、これから起こり得ることを列挙します。



これから政治の世界で起こること

今後、各種政策が協議される前に、以下の3つのうちのいずれかの展開が予測されています。


国民民主党・日本維新の会の与党接近

両党、もしくはいずれかが自公政権に加わると過半数を超えます。衆議院選挙後、首班指名を行う特別国会は30日以内に実施すると憲法に明記しており(54条)、遅くとも11月末までには国会における指名投票が行われます。今回の選挙結果ではいずれの党首も過半数に到達しないため、国民民主党や日本維新の会が賛成することによって、新政権の発足を迎えるという流れです。


そのとき、過半数実現のため協力をした政党は、今後の政策実現においてキャスティングボードを握ります。官房長官や主要大臣を輩出する可能性も考えられるでしょう。


ただ、あからさまに与党接近をすると、今回の選挙で政権与党が受けた逆風を一緒に受けることにも繋がりかねません。そこで閣外協力という名目で、政策ごとに協力する体制も考えられます。いわゆる「自民党系野党」のような立ち位置です。そうなると政権与党にとっては、これからの自民党系野党がかねてから掲げている政策は通りやすくなります。国民民主党・日本維新の会両党とも「現役世代への保障・投資強化」を掲げており、来年度以降は社会保障制度の見直しや就業状況の改善などが進むと考えられます。


「裏金議員」の復帰と自民党の内紛

そもそも政権維持や閣外協力に至らない可能性もあります。今回は裏金問題で糾弾を受けた一部の議員が自民党公認を得られない状況で選挙を迎えています。それでも選挙に勝ち抜いた候補者には、自民党復帰の道筋が残っています。個人ですが、同様にキャスティングボードを握る存在といえるでしょう。ただ、選挙が終わったからといって自民党復帰を促しては再び世論を刺激します。2025年に参議院選挙を控えていることもあり、各選挙区で協力体制を組んだうえで復帰への道筋、と見るのが自然な流れでしょうか。


ただ、これはあくまで自民党の現政権の思惑です。このままだと参議院選挙を戦えないとなれば、俗にいう「石破おろし」の流れが広がります。特別国会で改造内閣を承認してから、来年度の予算と並行して自民党内のパワーバランス構築が進んでいく可能性が高いです。



投資家はこの状況をどのように読み取るべきか

投開票日から一夜明けた10月28日(月)、日経平均は対全営業日で700円もの株高スタートとなりました。株式相場では刷新感への期待が前面に出ています。なお対外的に円は弱くなっており、1ドル153円と円安が進んでいます。


本記事でお伝えしたいずれの流れになっても、基本的に株式相場は肯定的に進んでいく可能性が高いです。特に「現役世代への重視」を掲げている政党の与党接近においては、経済活動の活発化に繋がることから歓迎気運の上昇が予想されます。これは閣外協力だったとしても、大筋は変わらないでしょう。


個人投資家としては関連のニュースが報じられるなかで、具体的にどの銘柄が恩恵を受けるか検討し、投資銘柄の選定に動いていくことになります。たとえば国民民主党は、社会保障制度の見直しによって「手取りを増やす」ことを掲げています。いま、現役世代に月1万円の手取りが増えたら、貯蓄に回すでしょうか。それとも消費活動として「これまで買えなかったもの」を購入するでしょうか。そこに銘柄選びのヒントが隠れています。


その銘柄を探求することが、まずは選挙後のこの相場を味方につける第一歩といえそうです。


独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

株式会社FP-MYS 代表取締役 1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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